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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第五章 ウラヌールの町。
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【閑話】♪ のペンダント。

 第一部の終わり、章最後に、よっちゃんから。

 コトちゃん!


 コトちゃんっ!



 どこにいるの? いまなにしてるの? 無事だよね、なんでもないよね、ただ着くのが遅れてるだけだよね?


 ほんのちょっとでいいから、お返事が欲しいの……。

 ほんのわずかなことでも、なにかわかればいいのに……。



 『船運び』屋さんに行ってから、十日くらいが経ったかな。毎日泣いて、泣いて、目がまっかっかになっちゃって。このままウサギの目になっちゃうのかなと思っていたところに、前にあった不思議なことよりも、もっと重要なことが起こったの。


 それは、コトちゃんがなにかすごい力を使ったんじゃないかってこと。そう私は直感した。心がそう感じたんだから間違いない。


 私は急いで胸元から♪ のペンダントを取り出した。学校から帰って、お夕飯にはまだ早い時間。

 ペンダントは、震えるように淡く黄色に点滅していた。



 コトちゃん、コトちゃん! 私はここだよ、ここにいるよ!

 大丈夫、大丈夫だよ! 一緒にいるからね、ずっと一緒だから!



 強く、ひたすら強く念じながらペンダントを握る力をもっと、もっとって強めた。♪ のとがった部分で手の平を傷つけちゃったのか、握った手の隙間から赤い筋が道を作る。



 痛くなんかない、痛くないよ! コトちゃんが、コトちゃんが!

 大丈夫、大丈夫だよ! 私はここだよ、ここでコトちゃんを応援してるよ!



 黄色の淡い光が、点滅していた状態から強く輝きだした。その光はあったかくて、清らかだった。

 やがて光は黄色から白、そして無色のほんとにとても強い光に変わった。


 しばらくして、♪ はいつもの黄色い水晶、シトリンのペンダントに戻っていった。



 コトちゃんに何があったのかはわからない。

 それでも私は、コトちゃんが無事でいてくれることを確信した。前回に光った時よりも、もっと自信に満ちた感じの光り方だったから、きっとコトちゃんの中で何か大きく変わったことがあったんだって思えたの。


 とりあえずは一安心。今までのもやもやがなくなって、逆に強い使命感? みたいなものが私に芽生えたの。


 私がコトちゃんとの繋がりを、強く強く意識していればきっとそれは、コトちゃんのことを守ってくれる。コトちゃんがこの♪ を作ってくれたように、思いは形になる。言葉は力になる。


 私もきっと強くなれる。見た目は変わらないけど、大切な親友を心の繋がりで守ることができる。自信みたいなものが私を強くするはず。


 学校に行くのも、授業を受けるのも、クラスメイトと話すのももう怖くないし、コトちゃんの安否を心配するあまり、目をウサギみたいに赤くすることもなくなると思う。


 だってコトちゃんは無事で、一緒にいた時よりも絶対輝いているだろうから。



 今日は日曜日。昨日の今日で、


 『船運び』屋さんから待ちに待った連絡が来たの!


 その連絡は栗毛色の店員さん、女の子の方――パルノさんからだった。のんびり屋さんの男の子、ファルノさんじゃなくって良かった。話が進まないからね。


「ごめんね、連絡が遅くなっちゃって! さっそくなんだけど、アマクニさん一家は無事、ウラヌールの町に着いたよ! あ、ごめん、無事にじゃないね。大変だったんだって~」


「着いたって連絡がきたんですか? それはいつなんですか?」


 私は受話器の横においてあるメモに、書き込みをしながら尋ねた。


「うん、昨日のお昼くらいに町に着いて、いろいろあったみたいなんだけど、とり急いでヨシアさんにだけは連絡を取りたいってコトハさんからでさ。詳しくはお手紙にまとめとくって。今度時間あったらお店に来て! けっこうお手紙の数があるみたいだから、おっきめの袋がいるかもね」


 コトちゃんのことだから、いろんな体験や冒険、思いもつかないことなんかがたくさんありすぎて、お手紙もいっぱいになっちゃったんだろう。どうしよう、私はあんまりお話したいことがないよ。学校のことなんか書いたって面白くもなんともないだろうし。そうだ! 小学校の詩作クラブのお話を書こう。メンバーとは、コトちゃん親衛隊繋がりで連絡を取り合ってるから、きっとコトちゃんも知りたいと思う。

 それから、♪ のペンダントのこと! これは絶対に外せないね。


 できるだけ早くお店に行きたいなあ。今日、午後からでも大丈夫かな? 急いでお手紙書いて。電車代はまだお小遣いの残りがあったはず。よし、思い立ったが吉日? お手紙書いちゃおう、そうしよう!


 あわてて受話器を置いて部屋に行こうとしたら、朝ごはん食べなさい! って怒られっちゃった。そうだね、浮かれすぎちゃってた。まずご飯食べて、お手紙を書いたらママに今日行っていいか確認して。それから『船運び』屋さんに電話して。


 んはあ~、今日はとっても忙しくなりそう!

 いつもお読みいただき、ありがとうございます。


 第二部に入る前に、登場人物や背景なんかについて整理しておければなあと思います。

 次回投稿でお出しできると思います。


 皆様にも、できれば評価やご感想、ご意見などよろしくお願いいたします。作品の向上や改善に繋げてまいりますので!

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