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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第五章 ウラヌールの町。
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竈の中の亀。

 またまたすみませんっ!


 領府には来たんですよ?


 ほんとです。信じて下さい。


 下の方にちょろっと……。



 あ、コトちゃん目線です。こそっと追加……。

♪♪♪


 そのお店はけして大きくはなくて、そんなに多くの品数があるようには見えなかった。でも、声を出してる店主さん? ヤクンドさんの明るく楽しげな様子に、少ない人だけど集まっている。


 そんな様子を見ながら、私たちが近づいていくと店主さんが気付いたみたいで、


「お? ロンロじゃねえか! 仕事の帰りか? っ! ファスタ様ですかい、そちらにおられるのは?」


 慌てて店の外に出てくるなり、跪こうとしたのをファスタくんが止めた。


「すみません店主さん、そんなことなさらずに。それよりも、こちらのお嬢様方になにか焼いてもらえますか?」


 跪くのをやめて、中途半端な姿勢で私たち親子を見やると、なぜだかそのままお尻をペタンと地面につけて、呆気にとられたお顔をした。まただね、こんな風にされるの。なんだかなあだ。


「こ、これは失礼を! へいかしこまり、こんなとびっきりのお嬢様方に腕を振るえるなんざ、料理人冥利に尽きまさあ! それで、なにがよろしいんで?」


 ん? なんかすごいおだて方。ママはいざ知らず、私なんてただの子供だよ? 店主さん、よく口が回るね。


 私たちはロンロさんに相手を任せる。


「そう言えばあ、よく肉が手に入るよな?」


「あ、ああ。仕入れは厳しいがそこはなんとかな。今なら野ウサギがお勧めで、他には……うお!」


 私たちは、旅の道中にウサギや鹿、猪なんかを捕らえては食料として食べてきた。中には保存用として、それと危険な獣なんかに襲われた時の生贄? 用として、ネズミやウサギなんかをカゴに入れて飼っていたんだ。


「こ、こりゃあ最近とんと見かけなくなった一角ウサギじゃねえか!」


 カゴの中の一羽を見て、ヤクンドさんが興奮している。


「え~と、このウサギさんが何か?」


「あ~お嬢様方はご存じないかもしれんが、このウサギは一角ウサギと言って、肉質や栄養価どれをとっても抜群の食材なんでさ!」


 へえ~、知らなかったよ。まあ、ウホイさんたちに聞いてもね。


「お嬢様、もし良かったらこの一角ウサギ、譲っちゃあくれませんか? もちろんお代はお支払いしますんで」


 私は、パパにコソッと相談をして了承をもらったのでヤクンドさんに向き直ってこう切り出した。


「あの、この一角ウサギ? さん、良かったら差し上げます。その代わり、ママに栄養価の高いところをもらえませんか? お願いです」


 ヤクンドさんがしばらく固まってしまってたけど、ぶんぶん頭を振って再起動した。


「いや、お嬢様それはならねえ。こちらも商売だ、この一角、買わしてもらって上手く調理さしてもらう。そんで、お代をいただいて美味しく食ってもらう。こうでなくっちゃな」


 確かにその通りだね。ヤクンドさんに悪いこと言っちゃった。反省しなきゃ。


「そしたらな、これが買取額だよ。この一羽だけじゃなく、他のもよかったら買い取るよ」


 私たちはお互いに確認し合って、捕まえていたのを売り払うことにした。だって、もう町の中にいるんだし、これからはお店屋さんで買ったり出来るんだから。


 渡されたお金は、私が今まで見たこともないものだった。


「全部で一万七千ルートだ。確かめてくれ」


 そう言って、私の手の上にお金をじゃらじゃらと置く。


 ?? 確かめろって言っても、わかんないよお!


「すみません、まだこっちに来てからそんなに経ってないから確かめろと言われても……」


 すこおしだけ泣きかけて、身体からちょろっ♪ と出たので、ママがさりげなく肩をぽんぽんしてくれた。危ない危ない。


「そうかそうか、いやこっちこそ申し訳なかったなあ」


 後でマイヤさんに詳しく教えてもらおう。頼りになるお姉ちゃん、みたいな人だから、きっと嫌がらないで教えてくれると思う。


 売ったウサギさんたちが、厨房の奥に運ばれていく。ありがとう。ちゃんとお礼を言わないとね。


 ママは、一角ウサギの一番柔らかくて、栄養価の高い部位を特製のたれを付けて焼いてもらって食べてみた。


 ママ、目が落っこちちゃうよ? そんなに美味しかったのね。


 ママが両手に持った串焼きを、美味しそうに頬ばっているのを横目に、私はある物に目が釘付けになる。


 竈に亀さんがいる? じい~っと見ていると、亀さんがこっちを見て小さな火を吐いた。


 か、可愛い~っ♡ なにこの子、超かわゆすなんだけどっ!


「あ、あの、この竈にいる可愛い亀さんはなあに?」


「ん? あ、火亀ひがめのことかな?」


 へえ~、火亀さんって言うんだ。美味しく焼いてくれてありがとね。私が頭を下げたら、火亀さんもぺこり。うん、決まり。


「パパ、宿屋さん始めたら火亀さん飼おうね♪」



 みんなで美味しく串焼きをいただき、ほくほくしながら領府の扉をくぐる。

 ちなみに、一角ウサギの串焼き一本あたり、ほんとは三百ルートなのに半分の値段にしてくれた。絶対また行くよ、常連さんになって火亀さんともっと仲良くなるんだ。



 領府の中に入り、待合室で待っているとファスタくんがマイヤさんと連れだってやってきた。


 マイヤさんは装いを、こちらの物に替えていた。

 黒っぽい袖無しのチュニック、中はロングのTシャツみたいな服を着ている。ウェストには、組紐みたいな帯が巻かれている。色は茜色? ちょっと黄色が入ってる感じ。下は、裾広がりのパンタロンみたいなパンツ。クリームがかったアイボリー。


 とても大人っぽい格好に見惚れていると、ファスタくんが咳払いして口を開いた。


「それでは、みなさんには長旅のところ本当に申し訳ないのですが、父上に会っていただき報告を聞かせてあげて欲しいのです。よろしいですか?」


 パパとママと私。三人で揃って立ち上がり、頷きあった。

 

 はい、みなさまお読みいただき、ありがとうございます(^_^)ノ。


 すみません。


 またまた脱線しちゃったです。


 でもでも、少し可愛くないですか?


 火亀さん♡


 次回は領主様との面会です。今度こそ間違いなし!



こそこそ……。

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