丘の先には。
こんばんは。
山のトンネルから、丘沿いの旅は今までみたいに大変そうではないみたいです。
今回は、コトちゃん回ですよ~♪
♪♪♪
晴れ上がったお空はどこまでも広く、澄み渡っていた。遠くのほうに、ぽっかりぽかりと白い雲が浮かんでいる。その横には、沈まない小さな太陽も一緒になって浮かんでいる。ほんとに不思議な太陽だなあ。
山脈の向こう側、ススキが原の廃屋に『船運び』されてから、こんなにじっくりお空を見たのは初めての気がする。それだけ気持ちにゆとりがなかったんだね。いろんなことがあったし、いろんな出会いもあった。とおってもと~っても大事で大切な出会いがね。
早く町に着いて、家族で落ち着いて生活が出来るようになったら、いっぱいみんなと遊んだりお話をしたり。今からものすごお~く楽しみ♪
丘をいくつか越えていく。季節がまだ春先だからか、草花なんかはまだ花を咲かせていないみたい。でも、きっと咲いたらきれいなんだろおなあ。だってね、丘一面に草花の株が植わっているし、よおく見てみると、いろんな種類の草花に分かれている。
町からそんなに離れていないんだったら、みんなで揃ってピクニックなんてできたら最高だろうな! 必ずやろう。うん!
丘沿いの道を大きくカーブしていく。そういえば道があるってことは、往来があるってことだよね? でもまだ誰にも会ってないなあ。そんなに利用されない道なのかな。たまあにやってきて、お花を摘んだり農業したり?
そんなことを考えながら歩いていたらパパが、
「どうやらもうそろそろみたいだぞ、クリスタルが反応しているからな」
確かにコンパス代わりにしているクリスタルが、淡い光りを点滅させているのがわかる。いままでなかったから、たぶんそういうことなんだろうね。ありがと、教えてくれて。
カーブを曲がりきったら、眼下に町が見えた。
けして大きな町ではないけど、きちんと区画整理? された人工の町並み。
まだ遠目ではっきりとはわからないけど、町の真ん中あたりに高い塔……たぶん教会かなにかかな? 塔の一番上には鐘が吊り下げられていているみたい。
建て物はそんなに高いものはなくて、せいぜいが二、三階建てくらい。町の中の道は、幅が広いのと、細いのが碁盤の目のように配置されていている。あれは確か、歴史の授業でも出てきたっけ。平城京とか平安京みたいに、東一条通りとか、朱雀大路とか。なんか、かっこいい町並みで、住みやすそうだよ♪ わっくわくしてきたあ~っ!
「あらあ~♡ 可愛らしい町だこと。そうねえ、北海道に行ったときにおんなじような町並みを見たわねえ。札幌とか?」
ママもおんなじことを思っていたみたい。うんうん、かっこかわいいよ。私たちの住むことになる町はねっ!
丘を降りて町へ近づいていくと、こちらに向かってくる? 馬の上に人が乗った集団が砂塵を上げてくる。近づいてきてゆっくり停まった一団の中に、ちょっと前に分かれて先に行ったマイヤさんがいてくれた。
「コトハ! ご家族もご無事そうでなによりです。遠見からの知らせで、こちらにやってくるご一家らしき姿があるとのことで、こうして迎えに同道してきました」
馬からひらっと飛び降りて、私たちの方に笑顔で向かってくるマイヤさん。
「マイヤさあ~んっ♡」
飛びついてはぐっ! ってしちゃった。いいよね?
マイヤさんがびっくりしながらも、私のことを優しくいいこいいこしてくれた♪
体が離れてから、マイヤさんが一緒に迎えに来てくれた人たちを紹介してくれた。
「こちらにおいでくださったのはウラヌール地方領、領主閣下のご子息であるファスタ・ウラヌール様、ウラヌール地方領守護騎士隊の隊長、バルラ・ドレ・ナダー様、守護騎士隊の皆様方です」
「馬上から失礼。このたびは、『船運び』の際の不手際によりかような事態になってしまった。このことは領主である父も、痛く胸を痛めておられました。父に代わり、謝罪を受け入れてもらえるだろうか」
え~とファスタ・ウラヌールさま……っていわゆるこの町のトップの息子さんで、お貴族様! それにしても、私とおんなじくらいかな、しっかりしている男の子だなあ。銀髪? をなでつけて後ろに流し、細身の身体つきできりっとした眉毛が印象的。優しい感じよりも、クールかな。
パパが一歩、私たちの前に歩み出てこう返した。
「ご子息様、どうか頭をおあげください。謝罪は無用に願います。誰も悪くないし、今はしょうがないことだったと思っていますから。それよりも、こうして領主様のご子息がわざわざ足をお運びくださったことに感謝いたします」
パパ、すごおい。なんて難しい言い回しで堂々としゃべれるんだろう。私だったら絶対噛んでるよ、間違いなく。
前に手を組んで、敵意のない姿勢で語ったパパに対してファスタ様……は、少しだけびっくりした様子で馬上で身じろぎしたけど、返ってきた言葉はとても優しくて、年相応だなって感じがして好感が持てた。
「っ! これは……そうですね。誰も悪くなかった、その通りです。ありがとうございます、その言葉をいただけただけでも、父の気も晴れることと思います」
にこっとパパに笑いかけたその顔は、髪の色の銀色みたいに、輝いて見えた。
ん? マイヤさんが私のほうをじ~っとあたたかい目で見てる。
なんですか、いいじゃないの別に。私だって普通に女の子なんですからねっ。
はい、ありがとうございました!
町に中にはまだ入ってはいませんが、遠くから見た町の様子は家族みんな気に入ったみたいで良かったです。
出てきた坊ちゃん、ファスタ君は、イメージがあのファンタジーの悪い子役の顔を、もう少し柔らかくして、優しくした感じですね。銀髪おしっ♪
では次回は、町の中に入ってのお話になるはず。次回もお楽しみにどうぞ~!




