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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第一章 運のないパパ。
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パパの受難。

コトちゃんが、不運なパパの話を聞いています。

♪♪♪


「いやあ、参った参った。勤めてる会社、無くなるってさ。来月から父さん、暇んなっちゃうなあ」


 えっ、そんなのんきなこと言ってて大丈夫? パパ……。


 小学校卒業を来月に控えていた私は、四十になってもなんだか子供っぽいところがあるパパ、天国あまくに 文章ふみあきの言葉にすごおく不安を感じたの。


 私のママは咲耶さくやって言うんだけど、


「それじゃあ、この機会にママの田舎にでも引っ越す? もう知ってる人もあんまりいないけど、自然は豊富よ? のんびりしたいわあ~」


 おおらかな性格のためか、あんまり深く物事を考えないタイプ。やれやれ……。


「まあ、こうなったら仕方ないよな。また仕事探しに、ハロワ通うしかないなあ。あ、葉山さんまだいるかなあ、あの人だったら俺のことよく知ってるから、力になってくれると思うんだ」


 またまたのんきなことを言ってる……。ハロワ? 職安の担当者に顔覚えられてる時点でどうなの? って話なのに、なじみの場所になっちゃってるのはさすがに娘として、疑問に思ってしまうのは間違ってないと思う。



 私天国あまくに 言葉ことはは、埼玉県某市の私鉄沿線沿いにある社宅に、家族三人で住んでいるごく普通の小学六年生。

 すこおし他の子と違ってるかなあと思うのは、好奇心がありすぎるってところかな。いろんなことに疑問を感じては、自分でやってみたり調べたりしないと気が済まない性格なんだ。


 校舎の裏庭にでっかい蛇がいたって聞いて駆けつけては、なんだ、アオダイショウかあっ♪ て捕まえて、職員室に持っていったら先生たちに拒否られた。とか、占い師のおばちゃんに、横でそんなに張り付いて見られていたら商売にならないっ! って嫌がられたり。

 大体が、余計なことに首を突っ込んでしまう感じ。自重しよう。すこおしね。


 もひとつ変わっている? のは本が大好きってことかな。同じく本好きのパパと一緒になって、狭い社宅の一室をほぼ本部屋にしてしまっているくらい。

 ジャンルはバリエーションに富んでいて、辞書・百科辞典に始まって吉川英治文学全集に英米仏独露の各国古典文学、SFにファンタジー、ミステリーからホラーに純文学も。初版本も文庫もラノベも漫画も大好き。

 そんな中には、自然科学や天文学にオカルト関係や占い本なんかも入っている。いわゆる乱読家ってやつ?


 蔵書の数?

 私が小学三年生まで住んでいた一戸建ての時には、パパの話だと三万冊を超えてたみたい。今はせいぜいが一万冊に届かない感じになっちゃったけどね。


 それでも、友達のよっちゃんからするとじゅうぶん異常なくらい多すぎるって。図書館でもできるんじゃない? って嬉しいことを言ってくれた。思わず抱きついちゃったのは言うまでもない。


「パパ、会社が無くなるってどういうことなの? ついこないだパパが担当している分工場のライン数多くするって、パートさん採用したばっかりじゃなかった?」


 私やママが納得いかないのも当然だよね。だって、パパが分工場の主任さんになってから、会社の事業である女性物のスカートやパンツの縫製の質は向上し、返品も少なくなったって部長さんが言ってたばかりだ。

 こないだ入った新しいパートさんの歓迎会で(家族同伴OKだったから、私も行ったんだ)、部長さんから直々に、パパが褒められていたのを覚えている。



「ん~、なんか社長さんがさあ、株で大損したらしくって。名古屋の本社だけ残して、あとは事業縮小で計画倒産させるからって。笑えないよねえ、ほんと」


 目が点のママ。


 私は、これまでパパが仕事で苦労してきた話を思い出して、またかと暗い気持ちになった。


「会社無くなるんなら、ここにも住めなくなっちゃうね。仕事探しだけじゃなく、住むお家も探さないと……」


「あ~、そうだよなあ。倒産解雇は一ヵ月後だから、それまでに住む所、探さないといけないかなあ。やっぱコトはよく分かってるなあ、ねえママ」


 どうしても、パパからは今のこの状況に対する危機感を感じられない。ある意味、大物感が漂ってるとも……言えないか。



 登下校の道で、登校班のみんなを待っているとよっちゃんがやってきた。


「コトちゃん、おっはよ~! 今日も朝からおめめ細いねえ。また本読みすぎ?」


 よっちゃん……。朝からへこむこと言わないでほしい。しょぼ~んだよ。

 そりゃあね、よっちゃんは良いよ? パッチリおめめに長いまつげ。髪の毛はさらさらで、軽くウェーブがかかってる。ゆるふわな外見と、のんびりとしたしゃべり方はお姫様みたいだ。

 かくいう私は、よっちゃんの言うとおりに目が細い。一重で切れ長といえば聞こえは良いけど、本好きなせいかじーっと目をすがめて物を見る癖がある。別に睨んでるわけじゃないからね。


「ちょっとね、眠れなかったからかな。お家ですこおし面倒なことがあったんだ」


 ふ~ん、ってよっちゃんが小首を傾げた。まだあんまり詳しく話せないのが辛いところ、もやもやした気持ちのまんま、学年の下の子たちを待って登校する。


 学校に着いて、授業の合間にどうしたら良いか考えていた。

 授業は真剣に聞いてるよ? 私は、お家に勉強を持ち込まない主義なのだ。予習復習も、宿題もすべて授業時間内で済ましてしまう。私の数少ない取り柄の一つだ。


 考えていたのは、のほほんとしたパパに任せていたら、一家路頭に迷ってしまうかもしれないていうこと。

 かといって、私がハロワに一緒に付いていくわけにもいかない。む~ん。


 ママは、こういったことはあんまり得意じゃないんだ。

 娘の私から見ても、安定と安心できる家庭を望んでいるように思う。でもそれなら、なんでママはパパと一緒になったんだろう。娘ながら本当に不思議だ。


 だって、安定とは程遠い人生をパパは送ってきているからだ。なんだかなあ。



 パパと私は、本好きという共通の趣味もあってか、よく話をする。

 政治のこと、戦争のこと、星空や生命の起源に私の初恋の話題まで。いろんなことに興味を持つのは、絶対パパ譲りだ。


 そんなパパだからか、してきた仕事もいろいろあるみたい。


 私が知ってるだけでも、製造業に販売、営業に配送に清掃業に更には占い師まで!どんな人生送ったらこうも転職しなくちゃならないのかってくらい不思議さんだ。


「人に雇われるより、お店でも開いた方が良いんじゃないのかな……」


 ある意味バイタリティーに溢れるパパには、それが一番しっくりくる気がする。


 本と、人と物に囲まれて、賑やかで楽しい毎日。う~ん、これって私の夢?理想の生活!

 読んでいただき、あっりがとうございます!


 この作品は、あくまでもファンタジーです。そのはずです。

 しかし、まだ数話はこんな調子ですm(__)m。


 次回は、 ハロワに行く。です。ちょい役で出てくる人物が、けっこう後々……。


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