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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第三章 町までの長旅。
33/104

湖のほとりで。

 クマさん家族とのお話の続きです。


【追記】コトちゃん回。よろしくどうぞ~!

♪♪♪


 コルドレさんのお話に、私はなにかが引っかかるような気がした。


 なんだろう? もやもやってするよお。お名前のこと? 話せること? う~ん。なんかいろんなこと含まれてるみたいでむずい。十二歳の私にはむむ。って感じ。残念だ。


「どうしてコルドレさんたちはこちらに? あ、さっきの変なのに巻き込まれませんでしたか?」


 そういえば、さっきの変なの……ゾーンって名前だっけ、隠者のおじいさんが言ってたの。あれはかなり危険な感じがする。気持ち悪い臭いや、あのいやらしいしゃべり方とかよりも、もっとふかあいところで忌避感? みたいなものを強く覚える。

 そんなことをつらつら考えてると、コルドレさんが答えてくれた。


「すんでいたとこ、おいだされた。それでみずうみ、そばにやってきて。でもまたおいだされた。あれ、いやだ。しつこい、きもちわるいくさい」


 うわあ、完全に被害者さんだったよ。なんなの、あのゾーンって。ほんとおにいやあなの。ぷんぷんだ。


「コルドレさん、元のお家はどこなんですか?」


「もとのいえ、あのおおきいやまのそば。ふかみどり、あまざさのもり。いきたいけど、いけない。フィルフィリ、まだちいさい」


 私たちが向かう先だ。だったら、え~と旅は道連れだっけ? 一緒に行くのはだめかなあ。


「ねえパパ、ウホイさん。コルドレさんたちも一緒に来てもらうのってだめかな? 方角はおんなじ方だし」


 ん? なんだかパパが呆然としている。どうしたのかな、私の顔をそんなにまじまじ見て。はずいよっ!


「お? おう、いいんじゃないか、それ。旅は道連れ、世は情けってな。こうやって出会ったのも何かの縁……って、コト、お前自分がしてることわかってる?」


「?」


「今までウホイさんやこちらのえ~と、コルドレさんのしゃべってること父さんわかんなかったんだぜ? それがコトが話し始めたとたん……あ~、まあいいや。とにかく一緒に行こう。いいか、コルドレさん?」


 なんかパパがふるふるしてる。おなかは、すいてなさそうだね。うん。


 私がなんかしたわけじゃないと思うよ、パパ。

 忘れちゃあいけない。ここは異世界。ふぁんたじ~の世界なんだよ? なんだってありなんだよ、きっと。ねえ?



 そんな話をしていた時、ふいに私のスカートがつんつんって引っ張られる。そっちに目をやると、ちっちゃい(といっても私よりすこおしね)フィルフィリちゃんが、身体に不釣合いなくらいおっきいツメでつんつんしながら私を見上げていたんだ。


 ほああ~っ! なんてらぶりぃ~なのっ、きゅ~とさんなのっ? 黒いまんまるおめめが、うるってしてて、私を見上げてる。


 くるって私はフィルフィリちゃんのほうに向き直って、そのおっきなツメのあるふわもこのおててをにぎにぎしながら尋ねた。


「なあに、フィルフィリ、ちゃん? 一緒に行くのいや?」


 ぶんぶん頭を振って、違うって強調する。そんな仕草もちょ~可愛い♡


「ううん、ち、ちがう、の。えと、フィルフィリね、その……?」


「ふんあっ! ごめんなさい、興奮しちゃって。え~と、私の名前は言葉。コトハって言いにくかったら、コトちゃんって言ってくれてもいいんだぞ~っ♪」


 いかんいかん~! 鼻息荒くなっちゃった。自重しなきゃ。うんうん。


「えと、こ、コトちゃん。コトちゃん♡ ありがと、いっしょ。うれしいな!」


 むっぎゅう~~っ! したのは言うまでもない。うん。



 その夜。色が戻り、ちいさいお日さまに照らされた湖のほとりで、みんなで夕食を食べた。献立は、ママが作った近くで採れたお野菜? とリンゴンベリーの実のソース仕立てのスープと、パパとウホイさんとコルドレさんが獲った鳥さんの丸焼き。飲み物は、リンゴンベリーのジュース(だっていっぱい採ったから、いっぱい保存してあるんだ)と男の人はウホイさんたちが持ってきたお酒だった。みんな、飲みすぎはだめだからねっ。


 食べ終わって、火の番を男の人たちが順番でしてくれる。いつも感謝してるんだ。ほんとありがとね。

 私たち女の人は、火のそばで毛布に包まって寝る。フィルフィリちゃんが、私のそばにくっついてきてくれた。なんだかお姉さんになったみたいでくすぐったい。ちょっと早いけど、お姉さん気分っていいなあ。良いお姉さんになるぞ! って思いながら、フィルフィリちゃんのふわもこのあったかさもあってか、その夜はぐっすり眠ることが出来た。


 ここ違う世界で、右も左もわからない中で、こうやって知り合ったばかりの違う種族の人たちと仲良くなって。


 ほんと不思議だなあ。でもなんだかしっくりくる。



 よっちゃん、大好きなよっちゃん。


 私、ここに来れてよかったよ。いろいろ大変なこともあるけど、早く慣れて町に着いて、パパとママと宿屋さんを始められるようにするね。そうしたら、きっとよっちゃんと会える。その前にお手紙書かなきゃね。


 待っててね、よっちゃん。

 いつもご覧いただき、ありがとうございます!


 これで第三章はおしまいかな。区切りよくないですが、宿屋さんへの道が思いのほか険しいので先に進めさせていただこうと考えています。


 でもなあ。コトちゃんたち自由だからなあ。む~ん。


 ではでは次回もお楽しみに!

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