名前を付ける。
こんばんは!
ウホッホ族の集落でのお話です。
【追記】今回は、コトちゃん視点♡
♪♪♪
もう、なにがすこいって、ここまでのとんでも道中ね。
だってね、初めが何の間違いか全然違うところに転移されちゃって、転移したところは廃墟で誰もいなくて。置かれていた物をお借りして旅に出たら一週間経ってもススキやセイタカアワダチソウもどきばあっかり。お水も心許なくなって、みんなしょぼ~んってなって。
そんな時に出会ったのが、陽気で心優しいウホッホ族のみなさん♪
歌と踊りが大好きで、子供や女性に優しくて。なによりママみたいな、妊婦さんをとおっても尊敬していて。
あったかあな人たち。こんな人たちとこの世界で出会えた初めてのは、きっとなにかとおっても大切な、ふかあい意味があるんじゃないかな。
そう思って隠者のおじいさんを見ると、なぜだかウホッホ族のみなさんを懐かしそうなお顔で見ている。
ん? もしかしておじいさん、前にあったことあるのかな? カードさんなのにね。なんだか不思議。
ウホッホ族のボスさん……って言いにくいね、お名前とかあるのかなあ?
「あのう、ちょっとお聞きしたいんですけど、お名前とかあったら教えてもらえますか? 私はコトハって言います。こちらのパパがフミアキ、ママはサクヤです」
「ウホ? ウホ~イ、ウホ~イ?」
う~ん、わからないねえ。どうしよ。
「ねえ、あのね、もし良かったらあなたのこと、ウホイさんって読んでもいいかなあ。お名前あったほうが呼びやすいし。どうですか?」
私はそう言って、ボスさんの胸をちょこんと触った。私のほうはコトハって指差してね。
そうしたらボスさんが、なにやらふかあくう~むう~むしだして。
悪かったかなあ、勝手にお名前付けようとしちゃって。反省だね。
そう思ってしょぼ~んってしていると、私の頭を急にわしゃわしゃしだしたよっ? そんでにかあっ! って笑って、自分を指差しながら、
「ウホイ? ウホッ! ウホイ、ウホイ♡」
って喜んでくれてるみたい。いいんだね、ウホイさんって呼んで?
「ウホイさん」
「ウホッ」
「ウホイさんっ!」
「ウッホッ!」
「ウホイさ~ん♡」
むぎゅ~♡ ってされたよ。イタイイタイもっと優しくね。ふう。
私たちのこんなやり取りを、他のウホッホ族のみなさんとパパママがなまあたたかな目で見てた。
いやん、はずいっ!
それになんだかパパが、すこおし引きつった顔をしてる。あ、怒ってる?もしかして。ちょ~っとだけ遊びすぎたね。パパごめんなさい。
こうして、とってもとお~っても仲良しになった私たちと、ウホイさんたちとで彼らの集落? に向かって歩き出した。
ウホイさんとパパはすっかり仲良しさんになって、一番前の方を歩いている。私とママは、な、なんと荷車の上で毛布敷いてもらってお姫様状態♪
荷車を引っ張ってくれる人、周りを賑やかに取り囲む人、後ろから荷車を押しながら、私たちが落っこちないように見守ってくれる人。わらわら、わらわら。なんか、すごいね。ほんと。
ススキヶ原を(もうこれでいいよね)賑やかに進むと、開けた場所にぽつぽつとお家? かな、土で出来た建物が現れた。
そうかあ、あんまり岩とか石みたいなのがないから、土を水で練ったのかな? 幸い大きな川がすぐそばを流れていて、住みにくい感じはしない。
その集落の中心に、ひときわ大きな土壁のお家。その前に荷車を止めて、私とママをひょいって降ろしてくれる。ありがとね。
ウホイさんと、その後に続くようにパパが中に入る。私たちはその後だ。
中に入ると、土間にあったかそうな毛皮の敷物。その先に、クッション? のようなものにふかあく腰掛けたウホッホ族の女性がいた。
それがね、とおっても綺麗なの♪
他の男性陣とおんなじで毛むくじゃらさんなんだけど、お顔立ちや雰囲気がね、優しく慈愛に満ちてるって言うか、とにかくあったかあな微笑み。おもわず、ほう~♡ ってなっちゃった。
これなら、ウホッホ族のみなさん大好きで、あんな風にしたくなるわ。うん。私でも跪きたくなるね。
ウホイさんが前に近づき、その女性を優しく抱きしめた。
ん? なぜか跪かないや。あれえと思ってると、その女性がウホイさんの背中を優しくなでで、離れたその頬に手を当てた。
ああ~、そうなんだあ。
ウホイさん、奥さんいらっしゃったのね。そうかあ。別に残念なんて思ってないんだからねっ。
たぶん、ウホイさんがこの集落の族長さんなんだろう。その奥さんは、ママとおんなじで妊婦さんなんだ。だからとっても大事にされている。元から女性を大事にしている種族だからよけいにだね。
その奥さんが私たちを手招きしている。
パパが先に行って、さっきママにしたみたいに目の前で跪き、手を差し出した。奥さんはちょっとびっくりしていたけど、にっこりして手を握り返す。パパ、頑張れ!
日本人はとおってもシャイさん。パパもそうだから、手の甲にキスは難易度がめちゃ高いはず。はたしてそのジンクス、パパは破れるのか!
すごおい。もう奥さんの魅力のおかげ? 簡単にクリアしてるよ。
あ、ママが若干イラッってしてるかも。よしよし。
私とママは、おんなじ女性同士ってことで面倒なご挨拶はなし。でも、ママと奥さんはお互いのおなかをなでなでしてにっこりしてた。これで奥さんとも仲良しさんになったね。
今日はここでお泊りさせてもらえそうだね。良かったあ。だってね、お水の補給も出来るしなにか食料も手に入れられるかもしれない。
どうやらパパは、ウホイさんたちと一緒に狩りに行くことになったらしい。大丈夫かなあ、パパ。間違いなく狩りなんて大変なこと、やったことないよね。迷惑かけなきゃいいけど。心配。
私とママは、お世話になる代わりになにか出来ないか考えた。
やっぱりなにか料理して、おもてなししたいなあ。う~んう~んしてるとママが、
「そう言えばあ、ススキって食べられるのよねえ。イネ科だしね。セイタカアワダチソウも……みなさん天ぷらとかって食べるかしら?」
すこおし不安もあるけど、やってみようってことになって、さっそくススキとセイタカアワダチソウ(ってもどきだけどいいのかなあ?)を女性陣で刈り取る。普段、生えっぱなしで利用価値なんてなかったみたいで、みんな興味しんしんでいる。
刈り取られたススキの穂と、セイタカアワダチソウもどきの新芽と花。
さあ、、ママの料理の始まりだ!
♪ ススキと花芽を洗っちゃおう
きれいに洗って乾かして
天ぷら粉、水で衣を作ってくぐらせて
鍋いっぱいの油に火をつけて
ススキは茎持ちじゅわわじゅわわ
花芽はまとめてかき揚げに
これでかんたん天ぷらの出来上がり
お塩を振ってさあ召し上がれ
出来た天ぷらを、山盛り大皿に盛っていく。ついでに、セイタカアワダチソウもどきの花芽の残りをお湯で湯がいておひたしを作る。持ってきた調味料があるから、今回は大盤振る舞い♪
ちょうどパパたちも帰ってきて、鹿や野うさぎなんかが獲れたらしい。パパはおっかなびっくりだけど、みなさんに混じってお肉を捌いている。これらのお肉に、みんなのお家から持ってきた調味料を(胡椒? にんにく?)すり込んで火であぶって焼く。
集落の真ん中、広場のような場所で老若男女みんな集まってきた。これから大宴会になりそうだね。はたして天ぷらやおひたしは、喜んでもらえるんだろうか。
鹿肉や野うさぎのお肉はとても美味しかった♪ 久しぶりの干し肉じゃない新鮮なお肉! 井戸から汲んだ水も嬉しい。節約しないでいいんだもんね。
天ぷらも、思いのほか評判が良かった。私たちでも普通食べることのない食材なだけに、素晴らしく美味しいわけじゃない。それでも普段やらない調理方法や、おひたしなんて食べ方が気に入ったみたいで、お肉とともにあっという間になくなりそうだ。
パパはというと、なにやら飲み物を勧められている。たぶんお酒かな? 少し口をつけておっ! って顔をしてみんなと何のこだわりもなく回し飲みをしている。パパって、すごいね。完全に溶け込んでるよ。
食べて飲んでみんな気分も良くなったのか、真ん中に焚かれている火の周りで、私が歌うウホッホのうたを、手拍子やその辺の食器なんかをがんがん! やりながら大合唱、踊りまくっていた。
すんごおく楽しくって、あちこちから笑い声が聞こえてくるし、私やママの周りにはもの珍しいからか、子供たちやおじいさんおばあさんなんかも集まってきたよ。お互いの手を握り合ったり、抱き合ったり。とてもあったかあい、優しい接し方で幸せいっぱいになった。
火の勢いも弱くなり、みんなも踊り疲れたのか、三々五々それぞれのお家に帰っていく。
私たちは、ウホイさんのお家に泊めてもらうことになった。私とママは、奥さんとおんなじ敷物の上で茅をクッション代わりにして寝たんだ。お部屋はあったかくてママはすぐに寝ちゃった。ぐっすりさんだ。
パパはウホイさんとまだお酒を飲み交わしていた。言葉は通じないのに、心が繋がり合っているからかなんの支障もないみたい。
ああ、種族は違っても、ほんとに人と人の繋がりって素晴らしいなあって、心から思える一日だった。この出会いと、親切な思いやりに感謝しながら私も眠りについた。
おやすみなさい。
お読みいただき、かんしゃ~ですっ♪
この陽気で優しいウホッホ族は、当初まあ~ったく出てくることもない人たちでした。
なのになんだか今後も仲良くしていくような存在になっています。
ほんとおに登場人物たち、特に天国家三人は自由だなあ。作者驚きいっぱいです。
では次回、おそらく集落を出て山脈への旅に戻るはずです。
次回もお楽しみに! あんど ブクマヤ評価やご意見、ご感想もお待ちしております^^!




