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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第三章 町までの長旅。
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優しい人たち。

 ヾ(´ω`=´ω`)ノおはようございます。


 今度は、ママからの目線です。

♡♡♡


 ふう。


 やっぱりだいぶ堪えるわねえ、歩き続けるっていうのもね。


 さっきコトちゃんが、手頃な長さの杖になりそうな木の枝を見つけてきてくれて。すごおく歩きやすくなったの。とおっても嬉しい。さっきなんて、パパに一休みしようって声かけて、今は毛布を敷いたところに座らせてくれて。


 この一週間あまり、パパはずっと緊張して気持ちを張って辺りを見回しながら、私たちに危険が及ばないようにしてくれていたの。そんなパパに、私が妊娠しているなんて知られたら。


 喜ぶどころか、おそらくこうして旅に出ることなく、日本でやりたくもない仕事を急いで見つけて、がむしゃらに働いて家計を支えようとしちゃうんだろう。私にはそれがはっきり判ってたから、言わなかったの。


 だってね、私が初めてパパと出会った頃からちい~っとも変わらないんだもの。パパの、人のために、周りのために、ってして自分を二の次に考えてしまうところがね。


 そこが良いところであり、悪いところでもあるんだよ。そばにいればいるほど、好きになればなるほど、私は切なくなる。


 もっと自由に、もっとのんびりとできるのなら。私が、私たちがそうしてあげられるのならば。だから、こうして一緒に先の見えない旅になっても、私は嬉しいんだ。それだからこそ、迷惑をかけたくないって思うの。



 私がつらつら考え事をしているうちに、なにか大変なことになってるわ。どうしましょう?

 パパの指示でコトちゃんが、ポーチさんから一枚カードを取り出した。ポーチさんが、警戒するような感じで色合いを変えているのがわかる。


 出てきたカードは、迷うことなく隠者のおじいさんだった。


 取り出された初めこそ、コトちゃんをみて喜びいっぱいだったおじいさんが、周囲の様子がおかしいのに気づいて、気を引き締めたようなお顔になる。


「おじいさん、おじいさん。お願いっ、あの近づいてくるのにどうしたら良いのか教えて!」


 そうコトちゃんが息せき切って尋ねると、おじいさんがその方向に目をやってからなにか伝えているみたい。私には、その声が聞こえてはこない。きっと、コトちゃんやパパにだけ聞こえる、特別な魔法なんだろうな。すこおしだけうらやましい。


 おじいさんのアドバイスが的確だったみたいで、武器を捨てたパパに、襲いかかるような気配は感じられなかった。私がほっと安心したその時。なにやら不思議なことが起こり始めたの。



 目の前のお猿さん? のうち、一番大きくて強そうなのが両手を開いてひらひらしだす。どうも、パパの真似をしているみたいだわ。そうしたらパパがなにやら思いついたのか、コトちゃんから聞いた言葉通りに踊り出したの!


 コトちゃんが即興で歌うノリの良い詩に、軽妙に踊りながら合いの手を入れていくのがもう、面白くておかしくって。コトちゃんも楽しくなってきたのか、歌声が愉しげな色をつけて周りの空気を変える。


 もうこうなったら怖いものなしね、狂喜乱舞のお猿さんたちと、パパ、コトちゃんが仲良く歌い、ホイホイ言いながら踊っている。私もその空気に当てられたのか、心から楽しくて、嬉しくなったわ。パパがさっきまでの緊張感と焦りに凝り固まった顔から、心底明るいものに変わっているのがなににもまして嬉しかった。


 それにしても、パパの物怖じしないあの優しさや、コトちゃんのあの不思議なあったかあな魔法は本当にすごいと思う。この二人が、私の素晴らしい家族よ! って自慢したくなる気持ち、きっと分かってくれると思うの。



 そんな風に、自分の家族を頼もしく思っていたら、またまた不思議な光景を目にすることなったの。


 大きいボス猿さんがコトちゃんの方に近づいていって、なんと片膝立てて跪いたの!

 まるでその光景は、おとぎの国の騎士が、姫君に体する儀礼のようで。おまけに手を差し出したのを、コトちゃんが優しく、優雅に握り返したのっ!


 もうびっくりするやら、ドキドキするやら、大変だあ♪♬♩♯♭


 ふう。落ち着いて、私。


 え、今度は私?

 なんだかさっきのコトちゃんに対するよりも、もっともお~っと丁寧に、静かに、なんて言うのかしら、そう、礼節をもってなお敬愛の情を示すような。手の甲にキスまでされちゃったの~うわあ~♩♯♭♬♪♡♪



 そこで私は悟ったの。


 この大きな身体をした人たちは、けしてただのお猿さんじゃなくて、とても感情豊かで優しい、女性を大切にする人たちなんだって。

 

 そして、特に母性に対して深い尊敬? 愛情のようなものを感じているのね。だから種族も違う私に、こんなに最上級の礼を尽くしてくれている。


 報わなければ。そう思った私は、なぜか彼の頭をなでていたの。優しく、母が子を慈しむように。



 ~~っ! はずかしはずかし~~!


 でも彼はとても嬉しかったようで、とお~っても満足げに下がり、後ろに席を譲ったの。


 ずららら~って彼らが、


 やってやって?

 なでてなでて、お母さんっ♡


 ってなってたの。


 うしっ!私 がお母さんお母さんしてあげる。みんな順番よ?



 こうしてとても仲良く、親密になれた私たちに、なにやらさっきのボスらしい彼が、指である方向を指しながら一緒に行こうって感じの身振り手振りし始めたの。


 その方向は、私たちが行こうとする方からあんまり離れていないみたいなので、パパもコトちゃんもうんうん頷いている。


 こうして私たちは、この人たちの招待を受けて彼らの集落に赴くことになった。

 お読みいただき、感謝っす~!


こうして違う目線で同じ話を書くのは、大変でもあり、また楽しいものです。


次回は、ウホッホ族の集落でのお話です♪

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