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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第三章 町までの長旅。
24/104

初めての出会い。

 ウラヌールまでの道のり。けっこう遠そうですね。


 それではどうぞ~(^^♪


【追記】パパ回です。書きやすいのはなぜっ?

◇◇◇


 おそらく、この旅は相当過酷なものになるに違いない。今までがそうだったからな。


 なにか大事なものを手に入れようとする時、大事な人を守ろうとする時。そういった人生の岐路に立つような場面では必ず、思いもよらない困難にぶち当たるんだ。


 これは、俺に限ったことじゃなくみんなおんなじだってのはある。間違ってない。

 それでも、俺にとってはある意味呪縛めいた真実のような、そんなやっかいな決まり事みたいになってるんだ。


 咲耶やコトに対して、いつも申し訳ない気持ちが先にたつのが腹立たしいよ。もっとこう、胸襟を開く?みたいな、作られた関わり合い方じゃなく、自然体で接せられるように。そうなれるように努力しないといけない。



 転移? の失敗で、俺たちがどれだけ目的地から離れてしまっているのか、判断が付かないのはまずい。そう思ってカードに伺いを立てたけど明確な答が返って来ることはなかった。たぶん、あの山々の連なりのせいだと思う。ある種の電波障害みたいなもんかもな。


 隠者のじいさんも途方に暮れてるからなのか、ランタンをあっちこっちに向けては、う~むう~むと首を傾げている。たましょぼ~んとしているのが、なんだかね。カード全体がそんな感じだから余計にいたたまれない。

 

 コトに預けてみるか?


 あ~、やめとこう。コトが可愛そうだ。



 廃屋を出てから一週間? が経ったと思う。なんで思うかなんてあやふやなのか?


 それは、あの二つの太陽のせいだ。


 大きい方は、地球のものと大して変わらないみたいだ。東西南北があるかわからないけど、必ず一方向から昇っては、反対側に沈む。高さがあまりないから、今は春先か秋口といったところかな。季節があればだけれどね。


 大きい方の日の出入りを、一日のサイクルとしてみると七日が経つ計算だ(一日が二十四時間かはもう判断がつかないや。)けど、あの小さな方は沈まないで、いつもおんなじように位置が変わらない。

 

 月かな? とも思ったが、大きい方が沈んでも明るいので、たぶん白色矮星かなにかだろう。連星とかじゃあなく、近くにある恒星が見えていると。でも、なんでいつもおんなじような場所に見えるのかはさっぱりだ。完璧に暗くならないのも、ぐっすり眠ることができない原因になっている。なかなか疲れが取れないんだ。



 景色は今のところ変わらずに、ススキやセイタカアワダチソウのようなのがあちこちを埋め尽くしている。廃屋を出てから、民家一つ見つからない。

 この辺りは元々は、耕作地か何かで放置されてしまったのかもしれない。それでススキやセイタカアワダチソウのようなのが群生してるのかなあ。


「パパ、少し休もうよ。ママが辛そうだから」


 ずっと考え事をしながら歩いていたせいか、コトの言葉にハッとした。しっかりしろ俺! お前が咲耶やコトを気遣わないでどうする?


「ああ、ごめんな気がつかなくて。うん、あそこの岩場で休もう」


 少し開けた場所に、ちょうど休憩しやすい岩場があったので、荷車を日陰に置く。コトが毛布を地面に敷いて、咲耶を座らせているのをん?と不思議に感じた。


 コトって、あんなに世話焼きだったかなあ。元々目端が利き、頭の良い優しい可愛いマジ天使だけどね。

 それにしてもなんか、甲斐甲斐しくしてるのをみると、ああ、もう子供子供じゃあないんだなあって思う。それにしても、咲耶は大丈夫かな、だいぶ疲れが溜まってきてるのかもしれない。

 そりゃあそうだよなあ。この一週間、ずっと野宿で俺でさえこんな状態なのに、女子供にはなおさらだろう。


 近くに水場か何かないかなあ。水分補給もかなり節約してるから、ここら辺でなんとか手に入れることが出来ればいいんだが。



 そう願いながら行く先の山すそを見やると、何やらわらわらとこっちにやってくるものが。


 俺は二人に隠れるよう指示をして、なにか武器になるものを探して、廃屋から借用してきた鉈を手にする。


「コト、隠者のじいさんからなにか聞き出せるかやってみてくれ」


 そう言いながら、コトにポーチごと手渡す。コトも慣れた様子で、ポーチから隠者のカードを取り出して語りかけ始めた。


「おじいさん、おじいさん。お願いっ、あの近づいてくるのにどうしたら良いのか教えて!」


 コトの口から、言葉が色をつけて流れ出た。緊張かせっぱ詰まってだからか、色合いがやや赤みを帯びている。しかも詩や歌にしないでだ。ここが異世界だからか、『力』が強くなっているのかもしれない。


 近づいてくるものがなんなのか、はっきりと見えるようになって俺たちは戦慄した。



 それは、とてつもなくでかい図体の、異常なほど腕の筋肉が盛り上がった猿、いやチンパンジーのような生き物の群れだった。



 その群れを率いるように一際大きい個体が(おそらくリーダーかボスだろう)、警戒心からか低く唸り声をあげながら俺の持っている鉈を睨みつけていた。

 気を抜いちゃいけない。緊迫した空気が流れる中、コトが声を張り上げた。


「パパ、今すぐ武器を捨ててっ! 武器持ってると攻撃されちゃうの!」


 そうコトが叫んだが、おいそれとこれを投げ捨てるのは……でもコトの言うことだ。あまり躊躇している時間はなさそうだから言われたとおりにしてみよう。それで襲われたら仕方ない。その時は身を挺して、などと考えながら武器にしていた鉈を横にほおり投げた。


「ウホ~イ ウホッ?」


 お? なんだか安堵した感じの声出たぞ。よし、乗っかってみよう。


「ごめんな、襲ってくるんじゃないかと思ったんだよ。この通り戦う意思はないよ?」


 俺はそう言って、両手を軽く開いてひらひらしながら頭を下げた。目線はボス猿からは外さずに。するとそのボス猿は何を思ったのか、


「ウホ? ウッホホ~♪」


 と言いながら俺がやったように両手を開いてひらひらさせた。踊ったとでも思ったのかな? なんか楽しそうだぞ、このボス。


 そこにコトから追加のアドバイスが聞こえてきた。コトもなんだか楽しそうだぞ?


「パパ、この人たちはね、ウホッホ猿さんって言って武器持って攻撃して来たり、警戒されると怒っちゃうんだって。歌とか踊りがとおっても大好きなんだよ!」


 そりゃあ、なんとも陽気な奴らだ。見た目はなんなんだ? ってつっこみたくなるが置いとこう。それよりも、


「じゃあコト、お願いできるか? なにか陽気になる詩、歌ってくれ!」


「えっ? う、うん、わかった。任せて!」


 そう言ってコトはすこおし前に出てきて、にっこり笑い顔しながら歌って踊りだした。よおし、俺も協力してやろう。



♪ ウホッホのうた


 おれたちは (ウホッ!)


 たのしけりゃ(ホホイ!)


 それでいい (ウホッ!)


 それがいい (ホホ~イ!)



 おれたちは (ウホッ!)


 おもしろきゃ(ホホイ!)


 それでいい (ウホッ!)


 それがいい (ホホ~イ!)



 おれたちは (ウホッ!)


 うたえれば (ホホイ!)


 それでいい (ウホッ!)


 それがいい (ホホ~イ!)

 


 コトは歌いながら両手をひらひら、くるくる回って踊る。


 俺はコトの歌に合わせて、手拍子と合いの手を入れる。


 ウホッホ猿たちは、初めこそびっくりして固まっていたがコトの歌と踊り、俺の合いの手にのってきたのか、もう大はしゃぎで踊りだした。合いの手の時には、全員ノリノリでジャンプジャンプだ。


 うおお~、なんだかすんごおく楽しいぞ! これまでの気落ちしてた時とは大違いで、心から楽しくて嬉しくなってきた。ウホッホ猿たちとコトと一緒になって、気が済むまでぐるぐる輪になって歌い踊った♪


 この間、咲耶は楽しそうに手拍子を打ちながら岩に腰かけていた。その顔は、疲れは残っているもののとても晴れやかなものだった。それだけでも俺はなにより嬉しい。



 俺たちは互いに肩をたたきあったり(イタイイタイ加減しろおい)、腹を抱えて笑いあったりした。


 さっきのボス猿がどどんとコトに近づいていき、目線を合わせるように膝をついて手を差し出した。


 コトは? って顔をしたが、差し出された手をにこ♡ っと最上級のスマイルでもって握った。俺はすこおしイラっときた。すこおしだけだ。ふん。


 そうしたらそのボス猿は何を思ったのか、コトに恭しくお辞儀をした。


 そのお辞儀はけして粗野な感じではなく、とても洗練されたまるで貴族が姫君にするような、そんな尊敬と親愛を込めたものだった。次々とその他のサルも続く。


 咲耶もまあっ♡ って嬉しそうだ。


 今度は咲耶の方に向かって、より深い尊敬を表すように視線を下げながら近づいていき、おんなじように膝をついて手を差し出した。

 咲耶もコトがするよりも更に深い笑顔で(なんだろう、この笑顔には見覚えがあるぞ)、その手を握り返した。そうすると今度はボス猿がおずおずと咲耶の手の甲に静かにチュッてした。俺はかなりイラっ!てきた。おい、俺の女房だぞ?


 でも咲耶は違った。びっくりはしたが、それよりもキスされた手と反対の手で、そのボス猿の頭を静かになでなでしたんだ。ものすごおく嬉しそうに満足げな猿。いや、あれはもう俺らとおんなじだわ。うん。


 他の連中もおんなじように、咲耶から母親の愛情をもらって満面の笑顔。


 あのでかい図体の彼らが、さっきまでとは違ってとても理知的で、素晴らしい精神性を持った種族なんだとよおく判った。



 この世界に来て、初めての出会いがこんなにあったかなものであることに、俺は感謝した。

 お読みいただき、感謝です~^^!


異世界での初めての出会いが、ウホッホ♪ 楽しいものになって、作者安堵しました。


しかしこの作品、作者の処女作になりますが、主人公たちに完全に任せるスタイルをとってしまったせいでものすごおおく大変でございます。


だってね、予期していない展開、登場すら思ってもいなかったサブキャラの目立ちよう。もうどうなるのか作者、楽しみで仕方ありませんなあ~(他人事)。


ま、心配はしておりません。彼らは彼らなりに、この世界をせいいっぱい楽しんでいくことでしょう。

心配なのは、作者の腕でございます。きちんとお伝えできるかなあ。


応援のお声や、ご意見ご感想、ブクマや評価がなによりのぱわ~になります。

どうかこれからも、コトちゃんをはじめ、作者も含めてよろしくお付き合いくださいねっ♪

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