長旅の予感。
転移する時の違和感が的中、コトたち家族はトラブルに巻き込まれてしまいます。
ではご覧くださいませ~♩
【追記】コトちゃん回。よろしくどうぞ~!
♪♪♪
なんにもないね。
それしか思い浮かばないよ、みたまんま。
私たちが飛ばされた?転移用の祭壇みたいなのがあるお店、というか廃屋から出て辺りを見渡して、まず思ったのがそんなことだった。
だってね、ほんとおっになんにもないんだよ? びいっくりするくらいなんにも。あ、ぼうぼうになんか生えてるね、すすきや黄色っぽい花? をつけた高い草みたいなのとかは。
あ、あれだ、セイタカアワダチソウみたい。なんだか日本のその辺にある風景とかわんないね。それがあたり一面、どこまでも続いてるだけで。ある意味、こわいね。やだなあ。
どうやら一番早く気持ちが復活したらしいパパは、廃屋の裏の方なんかを見に行ってるみたい。私とママは顔をお互い向けて、どうしよう? って小首を傾げる。
あ、ママのお顔がふるんっ? ってなった! これは大変だ、なにか食べ物が必要だ。
とりあえず私は、ママが朝作ってくれてたお弁当を一つ、でえ~っかい肩掛けカバンの中から出してママに手渡した。
ママは怪訝そうな顔になって、
「コトちゃん、ありがとね。でも、今食べちゃうと後で困るかも。いざって時のために、とっておいた方がいいわ」
って言ったんだけど、私にはどうしたらいいのか判断できないよ。どうしたらいいんだろ。
ママの身体のことを優先するか、それともママの言うとおりにしたほうがいいのか、わからなくておろおろしていると、パパが戻ってきた。
「パパ、ママね、おなかすいてるみたいなの。どうしよう、お弁当食べちゃうと後で困るかもってママが」
「お、お~、そうかあ。弁当は日持ちしないから、食べても良いよ? 後で二人にも手伝ってもらいたいことがあるから、先に食事にしちゃおうか」
そう言ってくれたから、ママも安心したのか輝かしいばかりのふるんっ状態だ。どんなだ?
廃屋の中のテーブルと椅子を外に運び出して、布でホコリを払ってからお弁当を並べていく。ホコリっぽい中で食事する気にはなれなかったんだもん。それに景色が見える分、いくらかは気も晴れる。気がするよ。うん、そう思おう。
お弁当の中身は、ご飯とおかずが二段に分かれているから盛りだくさんだ。やっほい♪
甘めの玉子焼き、タコさんウィンナーに食べやすい大きさに切ってある豚のしょうが焼き。ブロッコリーにプチトマトの色合いがちょうど良いね。別のタッパーには、白菜とキュウリの浅漬けがいっぱい入ってるのと、フルーツが入ってるのとがあった。
飲み物は最低限の分だけにしておく。だって、いつ補充できるかわからないからね。
みんなでゆっくり味わうように食べる。
そう言えば、パパがなにやら手伝ってほしいって言ってたね。
「食べた後、なにすればいの?」
「うん、さっき裏に回ったら住居らしい建物があってね。そこから使えそうな物を借用してこうかと考えてるんだ。その運び出しと、後、食糧の補充だな」
たとえ朽ち果ててるって言っても他の人のお家だもんね、借用って言うのがパパらしい。うん。
おなかがふくれて、気持ちもゆったりになれた私たちは、住居跡に回る。
さっきのお店? 祭壇のある建物から比べると小ぶりなお家。中に入ると、ホコリがそんなに積もってなくて息苦しさも感じられない。まだ出て行ってから、そんなに経ってないみたいだね。どこに行っちゃったんだろ?
ママは台所で使えそうな物や、食糧なんかを探す係。あんまり無理しないでね、お願いだからね。
私はパパと物置というか、納屋みたいなところへ行く。中には農機具みたいな物や、鎌や鉈があって、まだほとんど錆びていないみたい。
「お! これはめっけもんだ、コト、良い物が見つかったぞお」
なんかパパがはしゃいでる?腰に下げてるサイドポーチがぐわんぐわんしてる。あ~あ、中でポーチさん目を回してなきゃいいけど。
見つかった車? 荷物を乗っけられるおっきな木製の車輪がついてるやつ。え~と荷車ね、確か。
荷車の木製の車輪には、補強用? なのか薄っぺらい鉄みたいなのが巻いてある。うん、頑丈頑丈。
これがあれば、重い荷物を抱えていかなくていいね! ありがとう、このお家の人。後で必ず返しに来るからね。私は自分のバッグの中からノートを取り出して、一枚ちぎってお礼の手紙を書いた。ありがとうございます。お借りしますってね。
ママは、料理道具で使えそうな物を選り分けていた。他には、何種類かの香辛料? とか。台所の暗い場所に何個かの甕とかがあって、その中には油?みたいなものやお漬け物だよね、葉物がちょっとだけすっぱめの匂いを出してた。食べられそうかな、止めといた方が良いかな?
ちゃれんじゃーさんだね、パパ。 あの顔は大丈夫そうだね。うん。
他にいくつかの干した肉の塊なんかもあったので、なんの肉か詮索しないで持っていくことにする。
「この辺の物はみんな持っていこう。荷車が残ってたのはほんとラッキーだったなあ」
ほんとにそう思う。でもなんでこんな便利なものも置いて、居なくなっちゃったんだろう。いくらなんでもあのホコリっぽさからすると、昨日の今日のレベルじゃないよね。そんなんだったら私たちはただの泥棒になっちゃう。
疑問を抱えながら、必要な物を積み込んでいく。
一番奥に油やお漬け物の甕をうんしょっと持ち上げて置き、なるべく重い大きいものを奥から詰めていく。こうすると、重心が後ろにならないから持ち運びやすいんだって。それでも私には、持ち手の部分を下げることもできないけどね。
手前の方には、持ってきた衣類やお家の中にあった比較的ホコリっぽくない、毛布みたいなものも積んだ。だいぶ古いけど、ないよりはあった方がいいよね。
他に必要な物は……あった薪だよ薪!
どう考えてもこの旅は(ほんとは町に直接着いてたはずなのにね。しょぼ~んだ。)長くなりそうだし、夜は寒いかもしれない。それに獣? やもしかしたらモンスター! なんかもいるかもしれない。なにせここは、もう日本じゃあないんだ。異世界。ふう。
パパに薪が必要だと言ったら、ポンって手を打った。あ、これは考えてなかったな。危ない危ない。
お家の中には、あんまり薪が置かれていなかった。出て行ったのが冬とかじゃなかったのかもしれないね。納屋の方にもわずかしかなかったので、ある分だけ持っていくことにしたけど、このお家、けっこうすっからか~んになっちゃった。ごめんなさい。ありがたく使わせていただきます。
方向を教えてくれたクリスタルを、小さめの缶に水を張ってその上に浮かべる。即席のコンパスの出来上がり!
食べ物が心許ないのと、どれだけ歩いて行かなきゃならないのか、不安はいっぱいある。おまけにあっちのファルノ、パルノさんたちの言ってたきな臭い感じのお話。案の定と言っていいかわからないけど、私たちはこうしてトラブルに巻き込まれているし。
先行き不安だなあ。
でも。
くよくよしててもしょうがないよね、前向き前向き!明るくいかなきゃ♪
荷車をパパがひっぱり、私が後ろから押していく。ママは気を付けて横を歩く。なにか杖になりそうな枝でもあったらなあ。道々探してみよう。
宿屋開業までの長くなるだろう旅。お空は雲一つない、青く澄みわたっっていた。
お日様は……大きいのと小さいのの二つがばらばらにお空に浮かんでいた。不思議な光景だった。
いつもお読みいただき、誠に感謝!
どうやらウラヌールの町には、目の前の山脈を越えていかなければならないようです。
コトハや家族の運命やいかに!
げほんげっほん。。
では次回もどうぞよろしくお付き合いくださいです~(^O^)/