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ウラヌールの宿屋さん ~移住先は異世界でした~  作者: 木漏れ日亭
第一部 第二章 町で、宿屋さんを営みませんか?
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お引っ越し。

 ども~!


 前置きはなしでどうぞご覧くださいなっ!


 【追記】一応しておきますね、コトちゃん回です♪

♪♪♪


 私たち家族は、とってもとおっても濃い三年間を過ごした町を後にして、新天地に赴くための場所にやってきた。


 ハロワの葉山さん、本名ってなんだだっけ? え~と、確かマヤル・ハヤームさん? ハヤームさんでいいや。

 そのハヤームさんからもらった紹介状(求人票とは別にもらったんだって)に書いてあった場所は、都内でたくさん電車が乗り入れている駅から、ちょっと歩いたところにあった。



 駅を降りてガード下をくぐり、すんごおい人の波に逆らって歩く。人ごみってやだね。せかせかしてるし、なんだか息苦しくなってくるし。私はまだ小さいから(身長が……)よけいなんだ。


 周りにはチケット屋さんの看板がいっぱい並んでいる。チケット屋さんてなんだ? よくわからないや。


 すこし歩くと、可愛らしいお店が立ち並ぶ階段状の通りが見えてきた。この中に、引っ越し(異世界転異っていうのかな?)のための施設があるの? なんか想像できないね。


 たぶんここだけど。


 私たちはその指定された場所、喫茶店? 小物屋? 旅行代理店? とつっこみどころ満載のお店の前で立ち止まる。


「ここで間違いないんだよなあ」


「うん、はや~まさ、ハヤームさんの紹介状とカードさんたちの言うとおりならここだよ?」


 パパにそう答えたけど、カードさんたちは本来パパの占い道具さんなんだよ?なんで私になついてる訳?


 今まさに、私に熱い視線を向けてくる(ここに座りなさいって膝の上さして笑ってるよ、むりだからっ!)『ソードのキング』さんとか、逆さまになりながらにっこり微笑んでる(これは元々だっけ?)『吊るされた男』さんとか。なんでぶらぶら揺れてるのか……、遊んでほしいの? そうなのねっ? っていうか、逆さま笑顔こわい。ごめんね。


 というようなカードさんたちが、ここだよ間違ってないよと仰っている気がする。そういえば、しゃべるカードさんて、今のところ隠者のおじいさんくらい? う~む、その違いがわからないなあ。あ、でも会話はしてないや。今度試してみようかな。あ、ポーチさんはまた別だよね。今はもうお友達みたいなもんだし。

 そのポーチさんはというと、パパの腰辺りのサイドポーチの中で(ややこしいね)気持ちよお~くお休みしてるんじゃないかな。


 

 とりあえず荷物を持ったまんま突っ立ってる訳にもいかないから、私たちはお店の扉を開けた。


 カランコロンカラン♪


 扉の上のほうについていた、ベルが音を立てた。奥の方から、はいはいはあ~い! と元気そうな声が聞こえてくる。けっこう高い声、女の子かなあ。


「いらっしゃいませ~、ようこそ『船運ふなはこび』の店へ!」


 ん? どっから声がするんだろ。どちらにいますかあ~?


 辺りをきょろきょろしていると、正面のカウンターの向こう側でなにやら二つ、ぴょこぴょこってしてる。頭かな、黒いのと茶色(?)の。


 私はカウンターに近づいていって、おそるおそる向こう側をう~んって背伸びをして覗き込んだ。



 カウンターの向こう側には、二頭? のふわっふわの毛並みに大きなたれ耳、とてもひとなつっこそうなお顔の、う~ん、なんだっけ……。

 そう、コッカー・スパニエルのわんちゃんだ!そのわんちゃんがこっちを見て舌をぺろんって出していた。


 うぉ~ん、か、可愛いでないの♡ もう愛くるしいったらないよお、くぅ~ん。


 その愛くるしいわんちゃん(あ、失礼だね、店員さん。)、両手をカウンターの上のほうに伸ばして、一生懸命こっちを見ようとしてくれてる。もうママなんかは、ふるんふるん状態(単におなかすいてるだけかな?)、パパは、とおってもふぁんたじー! な展開にびっくりしている。


「あ、あの、お店の方ですか?」


 そう私が問いかけると、二頭(二人?)のうちの、つやっつやまっ黒さんが口を開いた。男の子かな、なんかクールっぽい。


「そうですよお、お客さん。今日はなにをお運びで?」


 くるんってお目々でこっちを向いてしゃべった。か、可愛い。もう一人は栗毛? 淡い色合いでまたまた可愛い。栗毛さんの方がなんだかまあるっこくて、最初の声の子かな?


「え~っと、この紹介状を……って『船運び』? 船はもってないんですけど?」


 船を運ぶって、どんなお仕事なの?


 うんしょ、うんしょ、ふう。船お持ちしましたあっ! って、むりでしょこんなにちっちゃくて、ぷりちぃな二人で?


「ああ~、確かにここは『船運びの店』ですけど、なんでもお運びしますよお。そうじゃなきゃあこんな街中で営業してませんよお」


 なんか世知辛いこと仰ってる? でもまあ、確かに船しか運ばないならこんな街の真ん中じゃなくて、港なんかにあるのが当たり前かあ。ん? じゃあなんで『船運び』? やっぱそこに行き着いちゃうよ。


 疑問に思ったから聞いてみたら、逆に??? ってなっちゃった。もしかしたらチェーン店かなんかで、お店の名前だからってあんまり気にしてないのかもね。


 そこで紹介状を手渡すことにした。カウンター越しで渡すのも大変なので、こっちに回ってきてもらう。?

 このカウンターって……普段はどうやって営業してるんだろ? 疑問だ。むむ。


「ああ、ハヤームさんのご紹介ですね。おおっ、人運びもありですねえ。料金はと、請求後払いですね。運び先は……ウラヌール地方領と。了解ですよお」


 パパからハヤームさんのお話の内容を聞いてはいたけど、改めて聞くとウラヌールって不思議な町のお名前だね。なんだか占いは売らないよ~みたいなってダジャレ言っちゃった。てへっ♪


「あれ、おっかしいなあ。この書面には使い手はご主人? だけになってるけど、お嬢さん? も『力』持ってますよねえ、感じるし」


 ん?なんか首を傾げてう~んう~んってなってる。なんか問題あるのかなあ。


「ご主人は占い師さんでいいのかなあ? カードを通して『力』を使う。お嬢さんは?」


「へっ、私ですか? 私は……そのう、わからないです。カードさんやポーチさんとお話し? できるようになってからだから。そんな力があるって言われても……」


 ほんとに私って、その『繋がる力』っていうのがあるのか。自分ではあんまりわからないんだ。ただ言葉が好きで、文字が好きで、歌が好きってだけで。


 困っている私を見て、栗毛色の店員さんがとことこっと真っ黒店員さんの方に近づいて、


「まあいいじゃない、ファルノ。力使いが一人増えたって、料金は向こうさん持ちなんだからさ!」


 そう言って、可愛らしい毛むくじゃらの右の手でファルノさん? の肩をぽにゅってした。


「う~ん、まあ別にパルノがそう言うんなら構わないけどさあ。でも変な道に繋がっちゃうとまずいかなあって思ってさ。不確定な要素は少しでも減らさないと、今はあれがあれなだけにさ」


 なんかいわくありげな会話。どういうことだろう。パパもママもすこおし不安げだ。


「そういうことで、了解しましたあ。これから『船運び』しますから、みなさんこっちに来てくださいな」


 どういうことかわからないけど、なんとかなりそうだね。

 ってやっぱり船運び?


 別のお部屋に付いていくと、そこには石でできた舞台みたいなものがあった。その石は、淡く光っているようで、いよいよこれから不思議な力で異世界に旅立つんだなあって実感がわいてきたよ。


 その石の舞台に立つように言われて、私たちは荷物と一緒に移動した。

 

 よっちゃん、行ってくるよ。しばらく会えないけど、向こうに着いたらお手紙書くからね、必ず!いつかはよっちゃんを、私たちの宿屋さんに呼んであげたいなあ。そう私が心に決めていると、パルノさんの方がなにやら取り出してこう言った。


「ではではみなさん、用意は良いですかっ? よければご主人、みちをひらく鍵を目の前に出してくださいなっ」


 パパは腰のポーチの中からポーチさんを取り出して(なんか緊張してる? 点滅してるような……)、その中から隠者のおじいさんと(あ、今日はまじめにお仕事してくれそう。安心した。)、もう一枚カードを取り出して二枚を目の前に突き出した。



 その途端、視界がぐんにゃりしてぐるぐる回りだした。

 う~、けっこう気持ち悪くなる感じ。パパは平気そうだけど、ママは、あ、これはヤバそう。口とおなかを手で押さえて崩れ落ちそうになった。



 それをパパと私であわてて支えたところで、私たちは真っ白な光の中に吸い込まれていった。

 お読みいただきまして、感謝~♪


なんだかファンタジーっぽくなってきたぞ?

ってこの作品、純然たるハイファンタジーですからあ!


では次回もお楽しみに^^! あ、ブクマや評価、ご感想などもよろしくお願いします。作者、泣いて踊っちゃいます。ほんとだよ♩♪♫

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