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悲惨なヒーローetc.   作者: ROM-t
【開幕 ヒーローはこの社会に必要か?】
3/12

第3話 【開幕 終】

 見事に空き巣を捕まえ、警察に引き渡した剛は本部に戻る途中である。


「今日は出動が多いな・・・そしてヒーローとして活動する人が俺しかいないって最悪のパターンだ・・・おまけに金までなくなって・・・厄日だなこりゃ」


 ふらふらと歩きながらため息をつく剛はあることに気付く。


「あ・・・ここってさっきの小学校じゃん・・・あの子たちは・・・いないかな」


 そう、ここは三時間前に石を投げられた小学校前であった。


「すみませ~ん! そこのヒーローさ~ん!」

「え?」


 ふと学校の中を見ると校門から一人の女性が走ってくる。

 長くて艶のある黒髪に白いスーツをまとった女性は息を切らしながら、剛の前まで来て止まった。


「私ですか?」

「はい! また来てくれてよかった! 少しお時間よろしいですか?」

「え・・・えぇ、大丈夫ですが・・・」

「ありがとうございます! こちらへどうぞ!」


 終始、彼女の勢いに押されていた剛は学校の中へと入っていった。


「あれ? 君たちはさっきの・・・」


 剛が入っていった教室には、先ほど剛に石を投げた三人の子供が座っていた。 

 聞けば、女性は三人の副担任で昼の一件を知り、謝罪しようとしていたという。

 教師は子供たちの横に立ち、剛に向き直ると深々と頭を下げた。

 すると子供たちも続いて頭を下げる。


「この子たちがヒーローさんにしたこと。本当に申し訳ございませんでした」

「いや、わかってくれてればいいんだよ・・・ヒーローじゃなかったら怪我をしたかもしれないからね! 他の人にはこんなことやっちゃだめだよ!」


 剛は子供たちに優しく諭すが、子供たちは上の空である。


「は~い・・・先生、謝ったから帰っていいですよね! 習い事があるのでさよなら!」


 子供たちは手のひらを返したように教室を飛び出していった。

 剛はあまりの切り替えの早さにぽかんとして固まってしまった。


「本当に申し訳ありません! もっとしっかり言っておくので!」


 教師はさらに頭を下げようとするが剛はそれを止める。


「まぁ、しょうがないですよ。正直、間違ってはいない気がします・・・」

「え?」

「税金泥棒って、自分でもそんな気がしてきますから・・・」


 剛は苦笑いしながらため息をつく。

 ヒーローの同僚たちでさえヒーローとしての誇りを持っている者は少ない現状。

 この現状を考えれば世間の言っていることは事実であるように聞こえていたのである。


「そんなことないですよ‼」

 

 いきなり張り上げられた声は教室に響いた。


「ヒーローはそんなひどいものじゃないです! もっと大切で誇りある役割なんです‼」

「せ、先生?」


 まるで自分の事を言われたように食い下がる教師に剛は驚いて目を丸くした。

 教師はハッと我に返ると少し深呼吸をし、姿勢を正した。

 

「あ、すいません。いきなり大きな声出してしまって・・・とにかく、もっと自信を持ってください。ヒーローは平和を守ることができる素敵な役割なんですから!」

「ありがとうございます・・・少し元気が出たかもしれません!」


 剛は久しぶりにヒーローであることを認められた気がして少し元気を取り戻したようだった。


「いえ、これからも頑張ってくださいね・・・えっと」

「あ、あぁ私は・・・名前教えちゃいけないんだった」


 剛はフルフェイスをポリポリ掻いた。

 キュルリリ キュルリリ

 またもやブザーが鳴る響く。


「出動ですか?」

「えぇ、おそらくね・・・それでは、私はこれで!」

「そうですよね。私は早川はやかわ 真利奈まりなです。頑張ってくださいね、ヒーローさん!」

「はい、では失礼します!」


 剛は教室の窓を飛び越えて出て行った。


「さて、もう少し頑張りますか!」

 

 剛は空を仰ぎ、気合を入れ直すと指示された現場へと走り出した。



~繁華街 パチンコ店前~


「ちくしょ~‼」


 パチンコ店から出てきた鍵縞が前のゴミ箱を蹴飛ばした。


「調子よかったのに急にダメになりやがって! せっかくの一万がパァだ! いったいどう生活しろっていうんだ! こん畜生‼」


 パチンコ店の前で座り込む鍵縞は空になった財布を見つめ、大きくため息を吐く。


「あぁ、ヒーローになってからろくな事ねぇな・・・」

「あの、すみません。鍵縞さんでよろしいですか?」

「あ?」


 ふと顔を上げると一人の男が立っていた。

 黒いコートに帽子と怪しいを絵に描いた様な男。


「あぁ、そうだが・・・借金の取り立てなら金はないぞ」


 鍵縞がそっぽを向くと、男は首を横に振り、笑顔を向けてきた。


「いえいえ、私は鍵縞さんに良い話を持ってきたんですよ」

「良い話?」


 男は鍵縞を先導し、夜の街へと消えていった。

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