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Esiw Kcolcre Tnuoc(旧題:感謝される男)  作者: 劇鼠らてこ
フュンフの街のレグレス・ツァイト
20/33

暦1000年3月7日19:00~23:59

ちなみにこの竜は雌。

「ぜぇ……ぜぇ……、この黒トカゲ、どんだけタフなんだよ……。」

「黒トカゲじゃなくて金トカゲじゃね?」


 正直どっちでもいい。

 襲撃から半日過ぎてなお殺意を滾らせている竜。対して、こちらの消耗は激しかった。

 空腹で。


「レグレスー! 俺、一旦メシ喰ってきていいかー!? 半刻で帰ってくるからよー!」

「空腹もそうだが……喉の渇きが耐えられないな……。一度休憩にしよう。」

「お前空腹で頭おかしくなってんじゃねぇか? 竜の眼前だぞ? その眼鏡は飾りか?」

「この竜……瘴気まみれだけど……くえねーかな……。」


 やめとけ。


「グルルガガァァァアアァァアアア!」


 元気なこって……。

 いつからか、竜は街の方へ興味を無くしたようで、執拗に俺たちを狙い続けていた。


「お前ら! もしかしたらこいつはもう、街の方へ行かないかもしれん! 半刻だ! 半刻ひきつけておくからとっとと食って帰ってこい!!」


 それ以上は保たん。


「ヒャッホウ! レグレスありがとうよ!」

「ありがたいが……、レグレス・ツァイト! 君はどうするんだ!?」

「メシ……メシ……。」


 斧使いの目が死んでいる。

 

「俺は一日くらいなら飲まず食わずで活動できる! それより、空腹なんかで死なれた方が迷惑だ! とっとと行ってこい!」


 俺の言葉に、3人は一目散に街の方へ駆けていく。

 ん? 3人?


「リーダー! あんたも腹へってんだろ!? 行ってこいよ!」


 一人残ったリーダーに声をかける。


「俺はリーダーだぞ! 盾部隊やお前残して一人メシ喰ってくるなんぞ出来るか! オラァ!」


 こちらへ叫び返しながらリーダーは竜に斬りつける。

 だが、あからさまに最初より威力が低い。


「俺達盾部隊を理由にするなよ! この程度、凌ぎきってみせる! ぶっちゃけそんなヒョロヒョロ戦ってられる方が邪魔だ!」


 盾部隊隊長がリーダーに叫ぶ。全くだ。


「グルゥァァアアアアアアアア!」


 リーダーに斬りつけられた右足を薙ぐような攻撃。丁度いい!


「喰らえ! リーダー! 低空飛行ドロップキック!!」


 全速ダッシュからのドロップキックで吹き飛ばされかけていたリーダーを蹴り飛ばす。

 手加減はほとんどしていない。


「どわぁああああ!? な、なにしやがるレグレス! うぉ!? なんだお前ら! 担ぐんじゃねぇ! 離せ!」


 吹っ飛んだリーダーを盾部隊の2人が担ぐ。いいぞ、そのままもってけ。


「たらふく食ってから帰ってこい! 頼りにしてんだからよ!」


 残ったメンバーは俺と盾部隊隊長、盾部隊隊員2人。内一人は投擲ジジイを運んだ後、帰ってきた奴だ。

 この4人で、半刻乗り切ればいいだけ。半日保ったんだ、あと半刻程度どうということはない。


「レグレス・ツァイト! さっきは啖呵を切ったがこちらも大分ギリギリだ! 街側への防御に徹させてもらう! 代わりと言ってはなんだが、これを使え!」


 盾部隊隊長の叫びと共に飛来してきたのはロングソード。投擲ジジイが使っていた物と同じ、量産品だ。だが――。


「ありがてぇ! これでアタマ以外にも攻撃できる!」


 ショートソードを一旦鞘にしまう。

 重心、とりまわし、握り方等、全てが違うが、まぁ戦闘中に慣れればいいだろう。


「さぁクソトカゲ! 第二ラウンドだ!」


★☆☆★


「くっそ、クッソォ、レグレスめ……これで死んだら許さんぞ……!」


 顔を般若の如く歪ませながら、高速で手を動かして食べ物を口に運んでいる男が1人。


「ここまで果実水を美味しいと思ったことがあっただろうか。いやない。」


 果実水を飲んでは注ぎ、飲んでは注ぎを繰り返す眼鏡が一人。


「投擲ジジイうごけねーのか? もう冒険者やめた方がいいんじゃね?」


 横椅子に寝転がっている老人の腰を突きながら肉を食べる軽薄な男が1人。


「うめぇ……マジうめぇ……。」


 大粒の涙を流しながら誰よりも早い速度で口を動かす男が1人。


「水、携帯食料、各種ポーションもったな? 再度確認とってからいくぞ。」

「おう!」

 

 早々に食事を済ませ、戦場に帰る様に準備を始める男が2人。


「なぁお前ら! 精鋭部隊だ、だのなんだの言っておいて腹ァ減って帰ってきましたー、なんてのたまってる奴らに、この街を任せられると思うか?」

「じゃあお前がいってこいよ。止めはしねーからよ。」

「お、おれ一人でか!? ウグッ、持病の腹痛が……! 精鋭部隊……、後は、頼んだぞ……!」

「口だけとはまさにこいつの事。」


 文句は言うくせに何もしない男たちが数名。


「いやー、今日もギルドは大賑わいですねー! 繁盛繁盛です!」

「一応この街の危機なんだけどなぁ……。なんでボクがこんな所に派遣されちゃったのかなぁ……。やだなぁ……いきなり瘴気のブレスとかがギルドに直撃したりしたら嫌だなぁ……。この宴会もどきの夕食会経費で落ちるかなぁ……。」


 どこまでも軽い受付嬢が1人と、どこまでも暗いギルドマスターが1人。


 時刻は23:00になろうとしていた。


★☆☆★


 3本ある指の内、外側の爪の付け根を斬りつける。鮮血。

 振り払われる足を屈むことでやり過ごし、踝に一閃。硬ってぇ。そろそろ変え時だな。


「隊長! 新しい剣頼む!」


 足元から離脱して、剣を真上に放り投げ位置を知らせる。飛来するロングソード。

 どうやら、投擲ジジイを運んだ若い隊員が、投擲ジジイはもう戦場に戻れないだろうと判断し、量産品ロングソードを全部かっぱらって来たらしい。賢明な判断だ。


 飛来してきたロングソードを空中で掴みつつ、頭上から落ちてきた剣の柄を竜に向かって蹴りとばす。ちっ、刺さりはしないか。


「レグレス! 先程南門から集団が出てきたのが見えた! あと少し持ちこたえてくれ!」


 それはいい知らせだ!

 右腕で引っ掻くような攻撃を、身体を捩ってよける。避け様に指に一閃。

 先程からチマチマ指に攻撃しているのは、俺を中心に狙わせるためだ。そんなことをしなくても俺を狙ってきているようだが。

 まぁ、その功あってか、盾部隊の消耗は大分緩和している。


「レグレエエエエエエエス! 戻ったぞおおおおお!」


 おぉ、帰ってきたな。

 声の方を向くと、そこには般若がいた。

 親の仇でも見るような目で俺を見ている。


「本当にほぼ1人で戦っていたとは……。レグレス・ツァイト。彼が最強と呼ばれるのも無理はないかもしれない。」

「リーダー! まずは礼だろ? そんなカッカすんなって!」

「レグレスー! 助かったぞー! ほら、リーダーも!」


「ウグ、グヌヌヌヌ、チッ、助かったぞレグレス……。」


「あぁ、気にすんな! その分動いて返せ!」


「応!」


 槍使い、長剣使い、斧使い、そしてリーダーがそれぞれ攻撃を開始する。

 盾部隊の帰ってきた2人は、他の隊員、隊長に携帯食料と水を渡しているようだ。


「レグレス! ウチの奴らが持ってきた携帯食料はいるか!?」


 おぉ、俺の分まであるのか。


「あぁ、頼む! そっちへ行くから――。」


 リーダー達が帰ってきた安堵から、大分油断していたらしい。


「グルァアァアアアアアアア!」


 すぐそこまで迫っていた竜の突進に、今の今まで気が付かないとは。


「うげっ!? ちっくしょ!」


 左右へ避けている時間はない。上か。跳躍!


「レグレス! 危ねぇ!」


 誰の声かはわからない。が、何が起きたかはわかった。

 竜が勢いよく顎を上げたのだ。空中にいる俺を打ち上げやがった。

 凄まじい勢いで飛ばされる。


 大きな月が北東方向に見える。


「月……? マズい! 時間!」


 腕時計に魔力を込めて光らせる。針が示す時間は23:59。

 長針が1つ、動いた。


「意識、が……!」


 眠気なんてものじゃない。一瞬にして意識を刈り取ってくる感覚。抵抗できない。


「クソッ!」


 悪態をついて、俺は目を閉じた。


★★★★


盾部隊隊長:38歳。ルビエ・シルド。

盾部隊副長(隊長と一緒に残った人);36歳。サフィエ:シルド。

盾部隊隊員(リーダー担いでった人):29歳。メラルダ:シルド。

盾部隊隊員(リーダー担いでった人):28歳:ガネタス:シルド。

盾部隊隊員(ジジイ担いでった若者):21歳:ディアマン:シルド。


シルドは屋号みたいなもん。

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