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Esiw Kcolcre Tnuoc(旧題:感謝される男)  作者: 劇鼠らてこ
アインスの街のレグレス・ツァイト
16/33

暦2051年1月3日9:30~11:00

レグレス君はほぼ魔力切れを起こさない。

「さぁて……、この辺に立ってれば多分なんかあると思うんだが……。」


 時刻は9:30。依頼形式でくるか、遭遇形式で来るかの判断はその日の朝になって漸くわかる。今回は遭遇形式っぽいな。


 場所はグロッセツァイガの大運河。今日も変わらず水平方向の滝かと思う程の流速だ。視界の端には『ゴールデン フリヴォル マン』のド派手な看板。頭文字のG.F.M.が目に痛い。小屋に灯りはないので、まだ起きていないか、そもそもあそこに住んでいるわけではないかのどちらかだろう。


「おいおいおいおい! こんな急流渡ろうってんですかい! 流石に無理じゃねぇですかいね! 頭ァ!」


「ウハハハハ、為せば成る! 為そうと思えばなんとかなるさ! さ、野郎ども! いざゆかんツボルフの街!」


「こんな小舟で本気で行けると思ってるんだからすげーよな頭は……。それに付きあってる俺たちも大概だが。」



 ほら来た。ガラガラと不格好な台車に小舟――3人乗れたら十分なくらい――を乗せて引っ張ってくる3人組。チャラ男。子分口調の男。赤ら顔のおっさん。あ、おっさん酔ってたから顔赤かったわけじゃないのね。

 

「あー、ちょいとまってくれそこのあんちゃんら。もしかして、その小舟でいく気か? それはちと無謀ってもんがすぎると思うぞ。」


 一応呼び止める。ぶっちゃけ目の前で心中されるようなもんだからな。


「あぁん? なんでい、頭の決めたことに文句があるってのかぃ? それ相応の理由があるんだろうなぁ!」


「よせよ! だが、兄ちゃん。こいつの言うとおりだ! 俺は俺の道を行く! 誰とも知らねえあんたに指図される筋合いはねぇぞ!」


「やっぱ無謀だよなぁ……。どう見たって入水自殺以外のなんでもないだろコレ……。親切にも止めてくれるのはありがたいんだが、ウチの頭は止まらねえからなぁ……。どうか、安全を祈っててくれや、見知らぬ兄ちゃん。」


「おいおいペシミス! 何言ってんだ? 俺達3人に出来ない事なんかあるわけないだろ! それと! あんた誰だ兄ちゃん!」


 騒がしいなぁ……。ペシミスと呼ばれたおっさんは少しは話通じそうなもんだが、他2人はダメだな……。ギルドの一員としても、目の前の自殺を許すわけにはいかないんだよなぁ。


「おれはギルドの……、まぁ有体に言えばなんでも屋です。レグレスといいます。それで、ですね。一応ギルドってのは街人を護るためにありまして……。目の前での自殺を認めるわけにはいかねぇんですよ。目的はなにかあるんですか? わざわざこの時期に、大運河越えをする理由が。」


 自分でなんでも屋といってしまった……。こんなんだからなんでも屋って名前が広がるんだろうな……。でも本来の役割を話すのは面倒なんだ。


「ギルドォ!? ど、どうしやすか頭! 流石にギルドからの忠告を無視するのは不味いっすよ!」


「ふむ……。しょうがない、正直に目的を話そう。キュッフェ、ペシミス、それでいいよな。」


「最初から俺ァ乗り気じゃなかったんだ。ギルド員なら信用できるし、かまいませんよ。」


 ギルドの威光。実際、王族直下の仕事だからな。一般街人に対しては結構きく。冒険者は別だが。


「レグレス、と言ったな兄ちゃん。俺たちがこの時期に運河越えをしようと決意した理由。それはな……。酒だ。」


 なら仕方ない。


「か、頭ァ。それだけじゃ多分伝わらないと思いますぜ……。」


「おぅ、珍しくキュッフェと意見が合ったが、そんだけで伝わると思ってたら大間違いだぜオプティマス。」


 チャラ男の名前はオプティマスというらしい。


「いんや、この兄ちゃんには多分伝わってるぜ……。この兄ちゃん、俺と同類だ。」


 そうか、このチャラ男も、酒には拘りが……!


「あぁ……、わかるぜ、その気持ち。抑えきれなかったんだろう? 同類。」


 チャラ男、いやオプティマス。そんな小舟で行くことを許すことはできないが、このレグレス・ツァイトが最大限助力しよう!


「な、なんか友情が出来てるッス……。というかコレ行く流れっすよね! さっきは調子に乗ったけど、まだ死にたくないッスよ! なんとかしてくださいペシミス!」


「だから最初から俺ァ乗り気じゃなかったって何度言ったら……。あぁ、酒飲みの手合いはどうしてこうめんどくさいのばっかりなんだ……。」


 さて、助力するとは言ったものの、この大運河の前に俺は無力だ。だが、昨日の宴会でヒントは得ている。大規模な氷魔法という奴だ。

 正直氷の大規模呪文なんて一切覚えていないんだが、経験上多分何とかなる。


「あんちゃん、オプティマス、でいいのか? そんな小舟でいかなくとも、俺に任せてくれ。なんとかしてやるさ。」


「ん? おぉ! じゃあ俺もあんたのことレグレスって呼ぶぜ! で、なんとかって、そんなことできんのか?」


 任せろ。


★★★★


 改めて、グロッセツァイガの大運河の前に立つ。急流。水飛沫が体を濡らしていく。

 さぁて……、それっぽい呪文で何とかなることを祈ろうか!


「集え氷精!! 煌きと共に、我が前に道を造れ!!」

 

  頼む凍ってくれ! 魔力はどれだけもっていかれても本望だ!!



 直後。


 世界が、止まった。



☆☆☆☆


「ふん、あれがリヒトの友か……。中々純度の高い『願い』をする。それに気前も良い。人間の友の為という所も良いな。【時の愛し子】/『時を遡る旅人』……。僕の友にも、なってくれるだろうか。」


 グロッセツァイガの大運河の上空。冷たい雰囲気を纏う少年が浮いていた。肌の色は雪の様に白いが、目には儚さを感じさせない炎が宿っている。少年の視線の先には、近年類を見ない、純度の高い『願い』と、膨大な量の魔力に集まった氷精霊と、光の大精霊の加護にひかれて集まっていた他精霊達によって形成された運河……だったものが映っている。

 それは道だった。

 周囲は荒れ狂う波のまま停止しているのに、術者である青年の眼前だけ、すらりとした道が築かれている。

 青年は消費した魔力量に息を荒くしているものの、意識を失う様子は見受けられない。


「リヒトの加護によるブーストがあるとは言え……、まぁ流石は愛し子というわけか。未来から……、いや、この場合は過去か? 自分から引っ張ってきているのだろうな。無茶をする。」


 少年は青年を一瞥すると、そのまま空中で横になった。手を後頭部で組み、目を閉じようとして……。


「あらあら、うふふふふ。あの子の友になるのはいいけれど、私が一番最初ですからね? フリーレン。うふふ、譲りませんよ?」


 少年の眼前に白い乙女が出現する。


「リヒト……。近いって。あー、安心してくれ。リヒトが一番なのはわかっているから。ただ、もし同意があれば、僕も加護を与えるくらいはいいよな?」


 少年――フリーレンは窺うような仕草で問う。


「ふふ、ふふふふ。光の大精霊の友という肩書きが消えてしまうのは少しさびしいけれど……、レグレスが同意したならばいいわ。私とレグレスは対等の友。行動を縛るなんてできませんもの。ふふふ。」


 白い乙女――リヒトは恥じらう乙女のように頬を上気させながら答えた。


「一応忠告しておくけれど……。彼と友になりたいと思っているのは、僕だけじゃないからね? ダンケルハイトはどこにいるか知らないから聞いていないけれど、ドンナとエルデ。それにヴィントは興味津々だったよ。」


 フリーレンの忠告に、リヒトは一瞬だけ笑顔を消す。が、すぐにいつも通りのにこにこ顔に戻った。


「あらあら、ふふふふ。ダンケルハイトに会わせるのは嫌ですね……。エルデはダンケルハイトと仲がいいし、気を付けなくては。ドンナとヴィントは、まぁいいでしょう。ふふふ、フリーレン。有益な情報をありがとう。ふふふ、私はもういくわ。」


 言うが早いか、リヒトは空気に溶けるようにしてその姿を消した。残ったフリーレンは軽くため息を吐いて、


「ま、楽しそうで何より……。おやすみ。」


 今度こそ目を閉じた。


☆☆☆☆


「はぁっ、はぁっ、はぁっ。すぅ……、はぁぁぁぁあ……。うし。大分楽になった。」


 目の前に広がる光景の前に、呼吸を整える。俺の魔力保有量はそこまで高くなかったはずだが、魔力が尽きそうになった瞬間、どこからか供給される感覚を受けた。だからこそのこの光景なんだろうが、自分の与り知らぬところからの魔力供給は恐ろしいものがある。


「お、おい兄ちゃん……。これ……。すっげぇな……。あ、いや、大丈夫か? こんだけの大規模魔法使ったんだ、俺たちの為に命賭けたりされちゃあ寝覚めも悪い。もし体調悪いんなら、どっか、そうだ、うちで休んでいかないか?」


 オプティマスがひどく心配そうな目で問いかけてくる。やっぱこいついい奴だな。


「あぁ……。大丈夫だ。それよりも、早く渡っちまいな。そんな瞬時に溶けるとは思えないが、こうして流れをとめきっちまうこと自体が問題になりかねねぇ。酒、取りに行くんだろ? いい商売してきな。俺は宿に帰って休むから。」


「っ……。わかった! ありがとな兄ちゃん。酒呑みの同類として、絶対礼するから! さ、いくぞお前ら! 商売の時間だ!」


 呼吸は整えたが、やはり体が怠い。一気に魔力を使いすぎたな……。宿に帰って寝よう。


「おい、キュッフェ、固まっちまってどうした? 俺は魔法使えないからわからんが、そんなにすごいのか? 氷魔法ならお前も得意分野だろ?」


「い、いやいやいや、ありえねぇっす……。俺、一応氷魔法の上級呪文まで勉強してるっすけど。あんな詠唱呪文聞いたことねえし、何よりあんな規模の魔法起こすのにあんな少ないワードとか、色々ありえねぇっす。というか最初は気づかなかったけど、あのヒトの周囲、凄まじい量の精霊がいるっす……。もしかしたらあれ、俺たちが関わっていいレベルのヒトじゃないかもしれないっす……。」


 後ろの……キュッフェだっけ? が、ぶつぶつ何か呟いているが、正直眠気がやばい。挨拶もそこそこに、俺は宿へと帰った。



★★★★


フリーレンは右目が前髪に隠れた少年。肌色は白を通り越すか通り越さないかくらいの青っぽい白。瞳の色は真赤。あと低身長。

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