校庭にて
あれからどれくらい頑張ったのかはわからないけど、とにかく校庭についた。
校庭では、たくさんの生徒が居るのはあたり前だが、他にも消防隊、自衛隊などの人たちもいる。それぞれが個別の仕事をしていた。
「まさかこんな事になっていたなんて」
「おいおいマジかよ。なんでこんな事になってるんだよ」
原さんと伸二はそれぞれ思ったことを口にしていた。
「あたり前だろおう。あんだけ大きかったんだからさ」
さらりと答える。
「そんなこと言ったって、こんなになってるとは思わなかった……」
悲しさを感じた。
周りを観察すると、そう言えるのも無理はない。
校庭のいたる所にブルーシートがひかれており、いろんな人が寝かされている。そこから左に移動すると、簡易トイレと自衛隊が作ったらしいお風呂まがいのものまである。その奥には何やらわからない大きなシートで囲まれたエリアがある。そこにはさっきから手首に黒いタブを貼られた人と、運ばれてくる人が入って行ってる。
「とにかくここは安全だな。それより今は日が落ちて暗い。どこか休める場所を探そう」
辺りを見回し、一本の木がある場所に移動した。
「これで後は、ゆっくり待つだけかな」
そう言った。
「……何でよ。何でそんなに落ち着いているの? おかしいじゃない! もしかしたら、クラスの人も、家族も、みんなみんないなくなってるかもしれないんだよ! なのにどうして一樹は平気なの? おかしいよ。人じゃない。そんなこと言えるなんて」
原さんは湿った声で言ってきた。
「そんなこと考えてなかったな。まぁ大丈夫なんじゃないか。みんなは無事、そう思わなきゃな。平気とかそんなのどうでもいいし。おかしいのか」
そう返事した。
実際、そう考えていた。こんな所で下手に考えるより、自分にできる事をしたいと思った。いつかはこんな日が来るんじゃないかそんな風にも考えていた。
家族の事、クラスメイトは心配じゃないわけじゃない。心配はしている。けど、今はそんな事を考えてはいけない気がした。今この時でも、助けを求めている人がいる。けど、自分には何もできない。いくら科学や理科、周期表など覚えたり、できたりしても何にも役に立たなかった。
悔しかった。何もできない自分自身が。そのとき思ったのだ。あぁやっぱり、授業で出来ても実際には何もできないんだなと。
原さんは黙ったまま俯いていた。すする音が聞こえる。多分泣いているのだろう。
今でも周りの音は聞こえてくる。
「急患通ります!」「まだなんですか! うちの子は」「タッグが赤い人からこちらへ」
そんな声が聞こえるのと同時に、何回か爆発音もした。
「校舎裏で爆発を確認」「中に人は?」「表から3人出てきました」
「早く消せ! これ以上はまずい」
そんな声も聞こえてくる。
「ほら、持ってきたぜ」
そう言われた方を見ると伸二がいた。
今まで静かだと思ったら食べ物をもらいに行ってたらしい。
「なんて言ってもらったんだ?」
「いいや~その、あっちに担任がいてさ。無事だって伝えたらくれた」
学校の非常食だろう。こんなものまであることにびっくりだ。
「ほら原もくえよ。これが最初で最後かもしれないぜ」
原は答えなかった。さっきのがまだ残っているらしい。
「そっとしといてやってくれ。それ、お盆だろう。返しに行けよ。何かと使うはずだし」
伸二は黙って返しに行った。
「そのなんだ……大丈夫だと思うぞ。無責任かもしれないけど、それしか言えないな。他にも言いたい事あるけど、うまく言えない」
原さんに声をかける。
返事が来ないのが当たり前と思ってた。さっきあんなこと言ってしまったからだ。
けど、違った。
「どうしてかな。一樹がすごく立派に見えるよ。いつもはふざけていて、伸二とバカやって。先生に怒られて、テストも理科以外全然だめ……。運動もできないし、かといってこうゆう時は一番初めにいろいろ気が付く……」
僕は、思いっきり腕を滑らした。