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〜異世界進学〜勇者家業を継ぎたくないので竜でも育てます。  作者: 麒麟
第3章〜育成科2年 (孤島実習編)
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3-5 真夜中の密会






 あの悪夢のような襲撃から10日あまり・・・

 なんとか逃げのびた56期生の隠れ家となっていたそこは、文明の跡が色濃く残る不思議な場所だった。


 礼拝堂の他にも、岩山を削って造られた、小さな生活スペースのような場所がいくつか。

 はるか昔、ここで人間が生活していたのは明らかだった。



「そっか・・・じゃあ行方不明になっていたのは俺とイリスだけだったんだな。」


「ああ、本当に心配したんだぞ。まあ一番大変だったのは俺だけどな・・・」


「ー?」



「フィアナ嬢ご乱心。お前を探しに行くって聞かなくてな、止めるの大変だったんだぞ。同じ班の俺の気にもなれっつーの。まあ、無事でよかったけどよ。」



 久しぶりに再会した俺の親友は、右腕を首に吊るし、何とも痛々しい姿で俺の前に現れた。

 他にも怪我人はたくさん。なんとか動ける者だけで役割分担をし、ここまで生き残っていたらしい。





 「それにしても、よくこんな場所を見つけられたね。」


 それも含め、俺は56期生のたくましさというか、底力というか・・・窮地での団結力のようなものに正直とても驚いていた。



「あー、この場所を見つけたのは、お前んとこのあのキザな編入生だぜ。初日の襲撃で混乱していた俺達を、ここまで先導してくれたんだよ。」


「へえ・・・あいつが・・」


「それにティオスさん、夜になるといつもどこかへ行ってしまうんですよ。危険だからやめた方がいいって僕も言ってるんですけど。」



 ・・・間違いない。ティオスは黒だな。


 俺はそれを確信した。




 俺はカフに乗り込み、奴を探すべく岩山付近をあても無く飛びまわった。


 グール達のうめき声が微かに聞こえる・・・これは数日前に知ったことだが、奴らには「共食い」習性がある。

 まあ奴らの数と餌の量とを考えればあり得ない話でもないが、考えただけで吐き気がするな。



「・・・・・ん?・・・・どうしたカフ。」



 夜風を受け気持ち良く飛んでいたカフが、急に速度を落とし頭上を気にし始めた。

 そしてその視線の先にあったのは、まるでカフの飛行ラインを真似るように飛ぶ、同じく白いドラゴン。


「・・・・・いた。」


 向こうももちろん俺に気が付いている。

 竜の背中からひょっこりと現れたそのハニーフェイスは、まるで俺達を挑発するように不敵な笑みを浮かべていた。


「やろう・・・上等だよ。」


 俺は体勢を低くし、カフの背中に出っ張った肩甲骨をしっかりと掴んだ。

 そして次の瞬間、カフは体を大きく捻り、空を垂直に跳ね上がる。


 同時にティオスと光竜も上昇し始め、俺たちはまるで打ち上げられた花火のように上空へと吸い込まれていった。

 そしてぐんぐんスピードを上げ俺がティオスの横に並んだとき、ちょうど分厚い雲の壁を抜け、広大な雲海が俺たちの目の前に広がった。




「これは驚いた、高いのは結構平気かい?」


「怖いに決まってるだろ。震えが止まらないよ。」



 月明かりに照らされ、小麦色にうねる雲の平原。それはもう美しいなんて言葉で片付けられるものではなかった。

 これから野郎と暗い話をしなければならないのが非常に悔やまれる・・・



「僕を追いかけて来たということは、何か聞きたい事があるんだろう?」


 ティオスはすべてを見透かしたような目でそう言い放った。



「ああそうだ。お前も逃げるのをやめたということは、全部白状する気になったんだろう。」


「・・・・やだなあ、白状だなんて。それじゃあまるで僕が悪者みたいじゃないか。」



 ・・・・確かに。この言い方はあまり良くなかったな。こいつにはみんなを隠れ家まで導いたという事実がある。




 ティオスは雲面ぎりぎりの所を水平に飛行し、俺とカフの横にぴったりと寄せて来た。

 

「君はもう気付いてるみたいだから短刀直入に言うよ。」


「ー?」



「僕はイスタリア王国竜騎士団副団長のティオス。ここへは君達の命を守る事と、ある極秘任務を遂行するために来た。」





「・・・・・・は?」



 ・・・・副団長?極秘任務?


 ちょっとぶっ飛びすぎていて、異世界歴わずか一年ちょっとの俺には分かりません。



 俺はティオスと二人で岩山のてっぺんに降り立つまでの間、混乱した頭の中を整理をするのにたっぷりと時間を要した。





 *****







 皆が息を潜める礼拝堂の、さらに上空・・・かなり冷たい風に襲われるその無防備な場所に、俺たちはいた。

 いくら翼型のグールでも、きっとこの場所までは飛んで来ない。ここはこの島で一番安全な場所だ。




「・・・・まあ、大体話は分かった。お前はかの名高い竜騎士団の副団長様で、さらに俺達をこんな所に連れてきたのも、その竜騎士団内部の人間・・・という事でいいんだな?」


「概ね相違ない。話が早くて助かるよ。」



 なんとかその事実を受け入れ平静を取り戻しつつあった俺は、ここでいくつかの矛盾点を指摘する。


「でもティオス、何でだ?お前は副団長なんだろう。だったらこんなふざけた計画は最初から阻止して、こんな企てをした奴らも捕まえてくれればよかったんだ。そうすれば、俺達だってこんな目に・・・」



「うーん、そうだね。それには色々と深い事情があるんだけど・・・今回のこの計画、最初は確かにあるひとつのチームが企てたものだけど、今は騎士団全体の意向として動いている。」


「ー!?」


「だから僕は止められないし、もちろん止める立場でもない・・・分かってくれるかい?僕は団長の下にいる副官の一人だけど、まだ他にも数人副官は存在するうえ、僕は今年任命されたばかりのまだひよっ子さ。発言力は大して持っていないんだ。」



 ・・・何だそれは。じゃあ俺達はすでに騎士団から見放された存在か?

 しかし目的は何だ。騎士団側は俺たちをこんな場所に連れてきて、一体何をしようとしているんだ。



「ハルくん、今うちの国が戦争中なのは知っているよね?」


「ああ・・・授業で少しだけ習った。確か隣海国のガナルと冷戦中だろ。東の要塞都市・・・・ん?そういえばこの島、」


「そう、この島は今ちょうど、ガナルとの国境近海に存在している。我が国はここに騎士団支部を建設し、この戦争をもっと優位に進めようとしているのさ。」



「ちょ・・・ちょっと待て!だったらお前達で勝手にやってくれよ、俺たちはまだ学生だ。戦争なんてそんな!」


 そう言うと、ティオスはまるで俺が取り乱すのを分かっていたかのように淡々と応えた。



「僕も同じ考えだ。だけど騎士団も今は深刻な人手不足でね、副官会議でこんな無茶な案件が通ったのもそのせいさ・・・・騎士団はこの島をガナル国側に取られないよう、君たちを旗替わりに置いたんだ。支部を造るにはまだまだ問題が山積みだからね。」



「・・・・・・そんな。」



 俺たちを一体何だと思ってるんだ!と声を勇めて叫びたいが、その怒りをぶつける相手はこいつであってこいつではない・・・


 ああ・・・アリサの言っていたとおりになってしまった。俺たちは利用されたんだ。それも、生徒のほとんどが尊敬してやまないあの竜騎士団によって・・・




「なら・・・俺たちはこれからどうすればいい。このままここで、大人しくグール達の餌になるのを待ってればいいのかよ・・・90日も。」


「・・・いや、そうはならないさ。そのために僕がここに来たんだからね。」


「ー?」



「さっき極秘任務だって言ったろう?僕の仕事は君たちを守る事と、もうひとつはこの島に隠れている「親グール」の捜索だ。奴を見つければ、少なくともグールの増殖を防ぐ事はできる。」



「・・・親グール?」


 嫌な予感しかしない響きだな。女王蜂みたいな感じか。



「この島のグール達を統治している存在さ。僕も何度かこの島に探しに来たんだけど、他のグール達に邪魔されるうえ、奴はなかなか姿を現さない。」



「・・・なら、もしそいつを倒すことさえできれば、まだ俺たちにも希望はあるんだな。」


「うん、あるよ。」



 よかった・・・・目的も無いまま3ヶ月もただ生き延びるのは無理だ。

 


「だけど想定外だったのは、思ったよりこの島のグール達が増えすぎていた事だ。このままじゃ親探しどころじゃない。僕が前にエル大陸付近でこの島に上陸したときは、もっと少なかったんだ。」



「・・・・・・・。」




 いつの間にか、ティオスはいつものおふざけ半分の顔ではなく、真剣な表情を浮かべていた。

 そして英傑な竜騎士さながらの凛々しい瞳を俺に向け、何故かふっと微笑みかけてきた。



「でもね、僕の中でもうひとつ想定外だった事がある・・・ハルくん、君の存在だよ。」


「・・・・俺?」



「君は戦闘においては、間違いなく副団長である僕と同等以上の力を持っている。それに君は頭もキレる。僕はそれを今日確信したよ。嬉しい誤算だってね。」



「褒めすぎだ。俺はただの学生だし、少なくとも今はそうありたいと思ってる。だから・・・闘うのは同期のみんなを守るためだ。」



 俺の本心だった。



「・・・・それは、僕に力を貸してくれるという事でいいのかな?」

「・・・・ああ。今回だけだ。」



 そう言うと、ティオスは胸に手を当て深々と頭を下げてきた。何も言わず。

 こういう仕草を見ていると、こいつが騎士団の幹部だという事実もなんとなくだが納得できる。



「ありがとう。あ、それと、僕の事はみんなには黙っておいておくれよ。止むを得ず力を借りる事が出てきたら、そのとき僕が話す。それまでは僕達二人で親を探そう。」



「ああ、分かってるよ。そんな事にならなきゃいいけどな。」


 少なくともイリスのように気の小さい子には、この事実すら知られたくない。騎士団に憧れを抱いているユージンなんかも同じだ。できれば黙っていたい。



「うん・・・だけど君同様、あの黒竜使いの子にはいずれ協力してもらう事になると思う。」


「・・・は?危ない事させるつもりじゃないだろうな。」



「もちろん。君を含め、56期生の命は僕が全力で守るよ。大事な大事な未来の竜騎士のたまご達だからね。」


「・・・・ふん。この事実を知ったら、誰も竜騎士団になんか入らねーよ。」






 さて、そろそろ戻らなければまた心配をかけてしまう。

 俺はカフの背中に手をかけ、そしてひとつ、大事な事を思い出す。



「そうだ・・・最初、お前のこと悪人扱いして悪かったな。正直、お前はあの教官とグルなんじゃないかって少し思ってたよ。」



「ふふ、それはいいよ。ずっと黙っていたのは僕の方だしね。」


「・・・お前のこと信用する。だから一緒に頑張ろう、ティオ。」





 俺たちは友情の契りを交わし、山を下った。




 ***********


 【光竜】


 飛行能力:Aランク

 戦闘能力:Aランク

 知的能力:Aランク


 破壊砲:6発

 希少度:★★★★★


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