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〜異世界進学〜勇者家業を継ぎたくないので竜でも育てます。  作者: 麒麟
第2章〜育成科1年(飛行訓練編)
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2-1 白と黒の比翼





 湖に沈む夕日をバックに、俺たちはオレンジ色の水面ぎりぎりのところを飛んでいた。



「よーし、カフ。もう少し高度を上げられるか。このままだと崖にぶつかっちまう。」


 俺はその白くて硬い背中を2回叩く。

 すると返事はないが、徐々に体が水面から離れてゆき速度もぐんぐん上がってゆく。

 そしてあっという間に島の真上まで来たところで、俺は校舎5階の屋上スペースを指差した。


「いったんあそこに降りよう。先生にばれると面倒だからゆっくりな。」


 俺の指示を忠実に聞き入れたカフは、羽音を最小限にとどめ静かに着地する。

 教員も生徒もめったに立ち入らないこの場所は、羽休めにはもってこいだ。


「よし、お疲れ、少し休もうか。」


 そして俺が背中から飛び降りると、カフはその長い首を曲げ、頭を撫でてくれと言わんばかりに顔を近づけてくる。耳の下、喉元、そして翼の付け根が最高に気持ちいいらしい。



 白銀の鱗に細くとがった長い尻尾、そして体の割に大きな翼は「風竜」に共通する特徴だ。

 正確には「白閃風竜」という、風竜の中でもかなり飛行能力に特化した種類らしい。

 敏感な耳で風の流れを探り当て、軽い体と独特の器用さでその流れに身を乗せる。特に上昇、下降スピードはかなりのものだ。



 アルヴィスがカフの頭の上に乗り、角をかじって挑発していた。


「こら、そんな事やってたらこの前みたいに食われるぞ。」


 少し前までこうして二匹でじゃれ合っていたというのに・・・

 卵が孵化してからわずか半年。カフはもう俺の頭を丸かじりできるほどに大きくなっていた。



 ドラゴンの成長はとにかく速い。驚くほどに。



 それから少しの間カフの翼の調子を見てやっていると、また一匹、頭上を颯爽と駆けてゆく影が現れる。


「?」


 眩しい夕陽を掌で遮りながら、俺はその影主の姿を眼で追う。カフとは違う、力のある強いはばたき。

 そしてまるで混じり気のないその漆黒の鱗は、淡い空色の中で落ち着いた存在感を放っていた。



 黒竜だ。


 その魅力的な容姿に加え、高い戦闘能力を誇るおそらく世界一の竜種。ほとんどの竜騎士見習い達が夢に見る、理想とも言えるドラゴンだ。


 ヒルッカは新入生に与える卵は毎年ランダムに選んでいると言っていた。

 しかし単純な確率で考えると、たった48個の卵の中にこのサラブレッドがひとつでも混じっていた事はほぼ奇跡に近い。


 そして、そんな奇跡の中からさらにそのひとつを掴み取った竜使いは、我が56期生一の優等生。そして半年前の第一回進級試験のトップ合格者だった。



「またこんなところで勝手に飛んで・・・検査の待ち時間だって遊んでいいわけじゃないのよ?」


 そう言いながら屋上に降り立った人物に、俺はお説教覚悟で歩み寄る。


「ようフィアナ。珍しいなこんなとこに。」


 そう言うと、彼女はその整った眉を寄せ俺を指差す。


「あのね・・・わたしはあ、な、た、を、呼びに来たの。ハル、いい加減集団行動というものを覚えて。あなたも、ユージン君も!」


「えー、だってじっとしてらんないよ。明日からやっと飛行訓練だもんな・・・フィアナはもう検査終わったのか?」



 フィアナは呆れたように浅い笑みをこぼす。


「もう・・・わたしは終わったよ。翼の成長も異常なし。明日からの訓練も問題なくいけるって。」

「そっか、じゃあ俺も早く行かないとな。」



 振り返ると、カフはフィアナの黒竜と並んで何か会話をしているような不思議な仕草をとっていた。


「ふむ・・・やっぱり黒いのがいると俺の竜もなかなか映えるな。」などと呑気な事を言っていると、フィアナが横から俺の肩を小突いてきた。



「シルヴァーノ、もう竜舎まで戻っていいわよ。わたしは中から戻るから。」


 そう言われ、黒竜はすぐさま羽を広げ屋上から飛び立っていく。フィアナはもうドラゴンに「ハウス」を教えているようだ。

 まあもともと言葉が通じる種だから俺のカフもできるはずなのだが、やはりしつけの腕前にも差が出るようだ。



 アルヴィスがカフの背中から飛び立ち、俺ではなくフィアナの肩に乗った。

 もうすっかり懐いてしまって、ときどきフィアナの部屋に勝手に潜り込んだりもしている。無粋な奴だ・・・そして少し羨ましい。




「ねえハル・・・」

「なに?」


 アルヴィスを抱いたまま、フィアナが急にしおらしい顔をし始めた。


「今度、わたしもカフに乗せてくれない?」

「・・・え、うん・・いいよ。」


 気前よく返事をしつつ、俺は二度フィアナの顔を見た。

 そして彼女の言葉の真意を理解し、俺は今きっと少し変な顔をしている。


 竜使いが他の人の竜に乗りたいと言うのは、つまりは・・・俺もよくは分からないが、おそらく自転車の二人乗り的な、もしくは文化祭後のフォークダンス的な・・・なんともこそばゆい意味合いがこの世界にはあった。



「やった。じゃあ約束ね。」


 そう言うと、フィアナは駆け足で屋上の扉に向かった。夕陽のせいか、頬が少し赤く染まって見える。


 俺は自分の耳が赤くなっていないか心配で、思わず両手で塞いだ。


 そしてしばらくして、カフの背に乗りその場を離れた。

 明日からはいよいよ、飛行訓練が始まる。







**********



【風竜】


飛行能力:Sランク

戦闘能力:Cランク

知的能力:Aランク


破壊砲:2発

希少度:★★★



ーーーーーーーーーーーーーーーー



【黒竜】


飛行能力:Aランク

戦闘能力:Sランク

知的能力:Aランク


破壊砲:8発

希少度:★★★★★



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