プロローグ〜
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黒魔術専門学校願書受付中
鍛冶職人育成学校
五色魔法学専攻ー定員残り5名
看護魔導士専門学校
冒険者入門開催中(短期入学可能)
聖騎士育成学校(試験日程)
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…………うーん、
ろくな情報がないな。
スクロールスクロール。
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魔導士資格を短期でとろう!
地下建国学を一から学べる
ガロンド学園願書受付開始
幻獣学専門学校ー申込み期限迫る。
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―――ん?
幻獣とな?
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幻獣学専門学校 ◀︎ピッ
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【学科紹介】
⚫︎討伐科
⚫︎生態学科
⚫︎薬学科
⚫︎育成科 ◀︎ピッ
⚫︎保護学科
⚫︎歴学科
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んー……フェンリルって何だっけな。
犬?まあいいや。
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【専攻コース】
⚫︎グリフォン
⚫︎フェンリル
⚫︎ドラゴン ◀︎ピッ
⚫︎スレイプニル
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よし。
俺は携帯を投げ出し、ベッドから起き上がった。
起動していたのは「異世界情報ツール」だ。
「―――――さて、アルヴィス来い。」
枕元で丸まって眠っていたアルヴィスは、桜色の体をピクピクと震わせた。
ルビーのような瞳が鈍く回り始める。
「ったく、人の気も知らないでゴロゴロしやがって。」
まあ当然か・・・こいつにとっちゃ俺の悩みなんて、夕食のウインナーソーセージ以下だろうからな。
俺はその小さくもっちりとした体を摘み上げ、肩にそっと乗せる。
―――――――――トン、トン、トン、トン
台所から、まな板をリズム良く叩く音が聞こえてきた。
よし、奴は今料理中だ。武器を持たれているのは少し不安だが、料理中は比較的機嫌がいい事の方が多い・・・気がする。
俺のめでたい16回目の誕生日は、もう4日後にまで迫って来ていた。
今日こそは……必ず勝ってみせる。
相手は包丁、ならば今夜は英国人名辞書で対抗するとしよう。流石にこの分厚さは貫通できないだろう……あれでも一応人の子だ。だから俺も人の子。
そして俺の未来は、他の誰でもない俺自身で掴み取るんだ。
「――――よいしょっと。」
重量50キロある部屋の扉を持ち上げ、俺は階段をスルスルと駆け降りる。
ちなみに階段の板は4年前に母さんが取っ払ってしまったため、今は鉄の枠組みだけが残るアスレチック状態だ。危険極まりない。
―――――台所。
暖簾の向こう側にいる母親の様子を確かめ、俺は細心の注意を払いながら一歩踏み出す。
挨拶代わりの一撃をしのいだ後は、いつも通りの「進路相談」が始まる。
大丈夫大丈夫。これでも交渉材料はそれなりに準備してきたつもりだ。
今日こそは……いける。
今年に入ってもう何度目かも分からないこの問答も、いい加減終わりにしよう。
「――――あら晴彦、素敵な辞書ね。でもダメよ、これは受けるんじゃなくてかわさなくっちゃ。」
予想通りの軌道で飛んできた包丁を受け止め、俺は意気込んで口を開く。
「母さん聞いて。」
「なあに?」
「俺は、進学する。」
行宗家、最後の親子喧嘩の火蓋が切られた。
この作品を見つけていただいて
大変感謝しております(ノ_<)
見苦しい所が多々あるとは思いますが、アドバイスやご指摘など、気軽にしていただけたらとても嬉しいです(>_<)