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輪廻庭  作者: 猫の手
4/4

機甲竜(下)

案内され着いた先は地下室だった


俺は少女に言われたベッドにテシィを寝かせ適当な所に座る


「じゃあ早速ですまないが、色々教えてくれないか?主にこの世界の事とかここら辺の状況とかさっきの機甲竜についてとかな」

「良いよ…と言いたいところだけどまずは自己紹介しよ?時間はたっぷり有るから」

「それもそうだな、俺の名前はシェド、今寝てるのはテシィ」

「私の名前はレミ、レジスタンスの団員の一人」

少女は自己紹介を終えると、自分の成り行きを話し始めた


「私はこの街に産まれた、ずっとここで生活していたの…物心着いた時には帝国は既に有った…帝国が機甲竜を使い始めたのは約1年前、帝国はその力を使って世界を統一しようと企んでる……命令を聞かない人は問答無用で殺された…まるで子供がアリを踏んで殺すように……そんな帝国を倒そうと組織されたのが私達レジスタンス………この間私を除いた全員が死んじゃったけど…」


「そうか…なんかごめんな」

「それは私の台詞だよ…帝国と疑ってごめんなさい…」

「いや誤解が解けたなら良いんだ」

「ところであなた達はどこから来たの?」

輪廻庭については言わない方が良いのかこれ…?まぁ一応伏せておくか…

「遠いところだ、俺達は旅の途中でね」

「えっ、じゃあ二人は付き合ってるのですか?」

「ちげぇよ!?」

「二人で旅しててカップルじゃなかったら逆に怪しいのですけど…?」

「うぐっ…!?」

た、確かに……

「これまでの旅の事を色々話してくださいよ〜」

少女はニヤニヤこちらを見ている

「特に話すような事はねぇよ!つーかお前はどうなんだ!?」

「え?私の好きな人ですか?」

「そうだ!絶対1人は居るはず…!」



「死にました」

レミはそう俺に言った

「私を庇って死にました」

さっきまで明るかったレミの顔は少しずつ暗くなる

「ご、ごめん…配慮が足らなかった…」

まさか地雷だったとは…

「良いんです…人が死ぬなんて日常茶飯事ですから…でも想いを伝えられなかったのはちょっと辛いですね……人ってなんでこんなに脆いんでしょうね…」

そう言ってレミは被っていたマントを脱ぎ右腕を見せる


そこには腕全体に有る大きな火傷跡

「彼は帝国の機甲竜が内蔵している火炎放射器によって死にました、死ぬ時は…一瞬でした…帝国はまるで雑草を燃やすように仲間を焼き殺しました…彼の最後の言葉は分かりませんでした…口を動かしてくれたのは分かってたんですけど…燃やされた後直ぐに……」

レミはそこまで言って黙った

「レミ………」

「シェドさんは私みたいにならないでくださいね?素直になれないで想いを伝えられないとか最悪ですから…」

「ありがとう、覚えておくよ」

そこまで俺が言った後


「う、うーん…ここは…?」

テシィが起きた

「おぉ、起きたかテシィ」

「シェドと…さっきの子?」

「始めましてレミと言います」

「私はテシィ、よろしくね」

「テシィさん、ちょっと気になったんですけど…」

「ん?何?」

「シェドさんとテシィさんって付き合ってるんですか?」

せぇいせぇいせぇいッ!!?

ちょぉぉぉっとダイレクト過ぎじゃないですかね!?

「ふぁっ!?ぜ、全然そんな関係じゃないよ!!?」

テシィは顔を真っ赤にして否定

「へぇ〜……」


レミは部屋の隅に有った寝袋を手に持って別の部屋に移動しようとする

「ちょっと待て!なんで黙って移動しようとしてる!?」

「え?それは愚問でしょ?」

「俺にその寝袋使わせろ!」

「人に物を頼む時はちゃんと真心込めないと〜」

「その寝袋貸してください!お願いします!」

「だからと言って貸すとは言ってないけどね!」

そう言ってレミは全力で部屋を出た

「あっ!?待ちやがれ!」

隣の部屋を開けるとまた別の部屋に続く扉がいくつか有った

レジスタンスのアジトなのだから広いのだろう……辛い

俺は諦めてテシィの部屋に戻り扉を閉める……と同時に扉の下から何かが出てくる

「紙…?」

俺はその折れた紙を広げて中身を見る


『最近の夜は寒いから一緒寝てね♪

それじゃあおやすみなさい! by.レミ』


「この部屋シュレッダー有る?」

「な、無いと思うけど…」

ビリビリビリィィィ

俺は木っ端微塵に手紙を破り裂いた

「何が書いてあったの?」

「白紙だった」

「そ、そう?」

あの野郎……明日覚えとけよ…

「それで明日からはどうする?ずっとこの地下室を借りるわけにはいかないだろ?」

俺は木っ端微塵になった紙をゴミ箱に入れつつテシィに問う

「そうだね…安全な所を探さないと……」

「じゃあ明日にでも出発するか」

「シェド」

「ん?なんだよ?」

「私帝国を倒したい」

唐突な事に俺は驚いたが冷静に返答する

「無茶言うなよ…さっきギリギリだっただろ?」

「でも……」

「あの子の為か?やめとけって、俺達じゃ戦力不足だ」

「かわいそうじゃないですか!あの子は苦しんでるんですよ!?」

「気持ちは分かる、だけどあいつらを倒すのは現実問題不可能だ」

あんなデカイ機械が大量に居るのなら尚更勝てる見込みは無い

確実に俺は戦力外だろうしな…

「みんなで協力すれば…!」

「人員なんて居ないぞ?」

「もういいです!私一人で行きます!」

「ひとつ聞きたい」

「なんですか!?」

「なんであいつの為にそこまでするんだ?」

「それは…!」

「さっき会ったばかりの人間になんでそこまでするんだ?」

「人が困ってるのに助ける理由が必要ですか!?」

「必要だ」




俺はそうキッパリそう言った

「なっ…!?」

「理由も無しに人を助けてお前が傷ついてどうする?そんなのただの自己犠牲で自己満足だ、正当な理由の中でこそ、人は人を助けれる…自分も助かったうえで他人を助けるこれが出来なきゃ何も救えない……戦う理由が有るからこそ人は勝つ意思を持つ」



「…………」

テシィがポカンと口を開けている

「あ、あれ…?」

なんで俺こんな大層立派な事を言えてんだ…?


「も、もう良いです!私一人で行きます!それに私人じゃありませんし…!」

そう言ってテシィは外に飛び出して行った

「ちょっ!?待てって!」

「ちょっと!何彼女怒らせてんのよ!?」

レミはそう言って上のダクトから出て来る

「テメェはなんでそこに居るんだよ!?」

「好奇心…かな♪」

「『かな♪』じゃねぇよ!」

「そんな事より彼女追わないと!」

「あいつ空飛べるからな…追いつけるのか…?」

外に出ると案の定陽が沈みかけている空に舞うテシィの姿が見えた、テシィは頭上高くに舞い空を駆けて行った

「車庫にバイク有るから使って!」

レミはすぐ隣にある車庫のシャッターを開き二人乗りのバイクを取り出す

「俺運転出来んのかこれ…?」

俺はそうぼやきながら操縦席に乗ると自然とエンジンをつけてアクセルを踏んだ


身体が覚えてんのか…怖っ


走り出したのと同時にレミも乗り込む

テシィの姿はまだ目視で見える

「というか帝国ってこっちの方角なのか?」

「大体合ってるかな…」

「マジかよ…」

間逆だったら連れて帰れたかもしれねぇのに…

「大体どれくらいで着く?」

「このペースだと半日以上かな…」

それならバテた所で回収出来るかもだな…

「わかった、このまま追いかけよう」

「ねぇ」

「なんだ?」

「念の為に持ってて」

レミが渡してきたのは一丁のハンドガン

「念の為って…これじゃあ気休めにもならねぇぞ?」

「何も無いよりかはマシでしょ?」

「それもそうだが…」

「そういえばさ…さっきの会話なんだけど…」

まぁ、真上に居たならそりゃ聞こえてるよな…

「あぁ、お前には悪いが……」

「シェドが正しいよ」

レミはそう俺に言う

「帝国の軍事力には勝てない…私達レジスタンスがそれを証明してる…だから早くテシィさんを説得して逃げて」

「お前……」


あぁ…改めて感じた、俺は無力なのだと

俺が前にななゑと戦った時の力は今は微塵にも感じられない、あの謎の力を自発的に使おうとしたわけじゃないが…ただ直感的に分かる


今の俺には何の力も無い



「すまん……」

「仕方無いよ」

レミはそう言って哀しそうに笑った



レミとそうやり取りをしている最中に閃光が周囲を埋める


「わっ!?」

俺は唐突のフラッシュに驚きブレーキをかけた

閃光が終わりテシィの状態を確認しようと上空を見上げる

テシィは無事だった

目が眩んで良くは見えなかったが、明らかに前回遭遇した機甲竜の光線に酷似していた何かだった


「そんな…!?」

レミが何かを察したように驚く

「どうしたんだレミ?」

「逃げて!早く!!」


ゴォォォォッ!!!


何も無い空間から光線が出現しテシィを光が飲み込んだ


「テシィ!!?」

テシィは咄嗟に半透明の壁でガードしたらしくまだ空を飛んでいた、しかし威力を殺しきれなかったのか、ボロボロだった


『ほう…?死なないのか…今の光線を受けて生きていたのはお前が初めてだ』

人の声が機械音を通してのその声が周囲に響く


「どこに…!?」

『ここだ』

そう言って姿を見せたのは以前の機甲竜程では無いがそれでも大きい大蛇型の機甲竜だった


『我が機甲竜は姿を消せる、偵察兵を倒したのは見事だったが…その武運もここまでだ…消えろッ!!』


大蛇は再び透明になり姿を消す


「チッ…!?逃げろテシィ!!こんな相手に勝てる訳が無い!!」

「嫌だ!私はまだ諦めない!

天界兵装《Angel Weapon》型式…!」


ゴォォォォッ!!!


背後からの光線がテシィを襲おうと迫る

回避は絶望的だった


「テシィ!!?」




ピシィィィィンッ!!

テシィを襲う光線は途中で不規則に掻き消された

『馬鹿なッ…!?』

「えっ?えっ!?」

テシィは訳も分からずに宙を飛んでいる


『貴様…何をした!?』





「斬っただけだよ…?」

テシィの真下の地面に正座でお茶を飲んでいる知り合いが居た


『誰だ貴様!?』

「ルー・ルプス…神狼だよ」


ルプスはそう言って持っているお茶とは逆の手で刀を持ち横に薙ぐ


ズザァァァァッ!!!


姿を消していた大蛇の機甲竜は真っ二つに分かれる


『なん……だと…!?なぜ…わかった…!?』

「臭いと音」


そう言ってルプスは追撃の剣撃を放ち

機甲竜を叩き斬った




機甲竜が完全に機能を停止したのを確認しテシィがルプスに近寄る

「ル、ルプス!?なんでここに!?」

「心配した……」

「ル、ルプスぅ……」

「あなた馬鹿だから…」

「なんで今上げて落としたの!?」

なんで漫才やってんだよ…

そう思いつつシェドは二人に近づく

「助かったよルプス、ありがとう」

「二股ですかシェド!?」

レミが驚きの声を上げる

「なぜそうなる!?そんな関係じゃねぇよ!?」

「詳しく…」

ルプスが楽しそうに聴き始める

「なんで乗り気なんだよ!?というかここは危険だからさっさと帰るぞ!」

「なんでよ!ここまで来たのに!?」

テシィが反対する

「どういうこと…?説明してシェド」


「しょうがねぇな……」


俺はこれまでの経緯をルプスに話した

帝国、機甲竜、レジスタンス……

とりあえず自分が得た情報をルプスに淡々と言う


「なるほど……つまり帝国を潰せば良いってことだね…?」

「なぜそうなる…」

「違うの…?」

「俺らだけじゃ無理だろ、何人相手にすると思ってるんだ?」

「じゃあシェドは帰ればいい…」

ルプスはそう言って歩き出す

「ちょ!?待てよ!」

「なんで止めるの…?」

「なんでそこまで…」

「なんでそこまでするのかって…?愚問だね、助けたいと思ったからだよ…?」

「それがお前の助けたいと思った理由なのか…?」

「シェドはどう思ったの…?」

「俺は……」

「見捨てるの…?」



「………助けたいに決まってるだろッ……!


だけど現実不可能だろうが…!この子を助けるには力が必要だ!力も無いのに無責任な事言えるわけねぇだろ!それに俺らが死んでこいつが一人になったらどうする!?また仲間が居なくなる悲しみを背負うことになるんだぞ!?それでもお前は……!!」



「助けるよ、そうでしょテシィ…?」

「当たり前です」

ルプスとテシィの二人は力強く頷く


俺は弱い

俺が強ければ…

最初っからこいつらと同じ選択が、出来たんだろうな…


「わかった…だけど絶対に無理はするなよ」

「え!?本気ですか!?」

レミは驚愕する

「レミさん…だっけ?帝国ってここからどれぐらいの距離あるか分かる…?」

「ここからだったらバイクで半日ぐらいかかるかな…」

レミは帝国の方向を指差しながら答えた

「ありがとう…」

そう言ってルプスは帝国が有るであろう方向を向いて刀を抜く

「何する気だ?」

「先制攻撃」

「は?何言っ……」



ズドォォォォォォォォッ!!!


ルプスが刀を縦に振り下ろした直後斬撃波が発生し地面を割り進んでいく


斬撃波は高速で地面を抉り取りながら進んで行き見えなくなった


「これで帝国は一刀両断されてるはず…」

「……………………………………えー…」

ななゑよりもチートやんこの人

俺のシリアス返せ

「それじゃあ行こうか…今の攻撃で敵も気づくだろうから、敵の迎撃を退けながら進むね…」

「なんでそんな事を…」

「敵が自分から倒されに来る方が全滅させるのに手っ取り早い……」

テシィが前に怖いって言ってたけど今なら分かる怖過ぎる


「ほらその乗り物で行くんでしょ…?私が乗ると狭いからテシィは飛んでね」

「ルプスが走れば良いじゃん!」

「それだとみんな置いてっちゃう事になるけど…?」

「どんだけ速いんだよ」

「もうルプスが走って帝国全滅させにいった方が速い気がするんだけど?」

「バーロー、流石に一人で行かせるわけにはいかないだろ」

テシィの提案に俺は反対の意思を見せる

「というか最悪さっきの一撃で帝国全滅してるかも…規模次第だけど…」

そんなことはあってはならないだろおい…

レミも顔が引きつってるし…

「か、確認するのも含めて帝国に向かうぞ、それにレミだって成り行きが見たいはずだ」

「そ、そうだね」

俺とレミは顔を引きつらせつつルプスとテシィに言う

「じゃあやっぱりテシィは飛んで移動して…」

「ちぇっ…」


その後俺達はバイクを走らせ帝国に向かう事になった





しばらくの間夜道を走ると街が見えてきた




「あれ?」

ふと疑問がよぎる、ここまでの道中で敵に遭遇してないぞ…?


「シェド、バイク止めて…」

ルプスがいきなりそう言う

「お前も違和感に気づいたか?」

「道中に敵が来なかったのも気になるけど…それより気になる事がある……」

ルプスは止まったバイクから降り、少し歩くと朝になったのか周囲が明るくなる


朝日が帝国を照らす





帝国は一刀両断されずにそこにあった

「なん…だと…!?」

「…………」

ルプスが走り出したのと同時に俺はバイクを走らせ、帝国の門の所まで近づいた

「………………」

ルプスは門の近くまで行った所で、自分の放った斬撃痕を確認する


(斬撃を強制的に打ち消した跡…この世界には私と同等以上の人が居る……?)




「びっくりしたかしら?」

「!?」


ルプスは直後上から声を掛けてきた主から距離を取る


「そんなに驚かなくても良いんじゃない?」


「お前は!?」

俺は門の上で足を組んで座っている女に心当たりがあった



舞浜ななゑ

彼女はそこに居た


「元気かしら?暇だから来ちゃった」

「ななゑさん!まさか帝国を倒すのに手伝ってくれるんですか!?」



「はぁ?何言ってんの?」

「「「は?」」」



「こいつらは大量の食糧を確保してくれんのよ?これで私達の世界に帰った後の食糧危機は脱出できる。まぁ要するに金づるね」

「そんな簡単に行くわけないだろ!?」

「簡単よ、力を見せるだけであいつらは条件を呑んでくれたわ」

「私の斬撃を止めたのも……」

「そう、私よ?」

ルプスは不満そうな顔をする

「もっと力一杯斬るべきだった……」

「止めなさい、地球が壊れるわよ?」

「地球が脆いのが悪い……」

「何言ってんのあんたは…とりあえず、ここを破壊しようってんなら私を倒してからにしなさいな」

ななゑはそう言ってカードホルダーからカードを5枚引く

「ななゑ!今はお前と争ってる暇は無いんだ!」

俺はななゑを説得しようと声をかける

「だったら早く帰りなさいよ、そしたら私も攻撃しないし」

「帝国はレミの仲間を皆殺しにしたんだぞ!?」

「レミって誰よ?あぁ、その後ろの子?どうせレジスタンスとかでしょ?」

「なんでお前がレジスタンスを知ってるんだ!?」

「当たり前じゃない、もう何個もレジスタンスの街破壊してるんだから」


「お前ッ……!!?」

「破壊するだけで報酬くれるんだから助かるわー…」


ズドォォォォォォォォ!!!


ななゑが言い終わった直後ルプスは持っていた刀を地面に突きつけ衝撃波が周りに広がる



「久しぶりにキレたよ……」

「そうこなくっちゃ」


ルプスは刀を引き抜き構え直す

「久しぶりのガチね」

ななゑは左手に持っている5枚のカードの中から右手で1枚を選び取る

「シェド…テシィと一緒に帝国に侵入して…内側から壊していって……」

ルプスは俺にそう言う

「お前はどうするんだよルプス!?」

「私はななゑをブッ飛ばす……」

「シェド!レミちゃん!行こう!」

テシィに連れられ俺とレミは帝国の門に近づこうとする


「行かせ無いわよ」

「それは私の台詞……」


ななゑが追おうとするのをルプスが阻める


「テシィ頼む!」

「わ、わかった!

天界兵装【Angel Weapon】型式《爆弾》!」

テシィは手元に構築したダイナマイトを着火させ門に投げつける


ドォォンッ!!


さほど威力は無いが門に小さな穴を開ける事には成功した

「入って!」

テシィの呼びかけに応じて、テシィ、レミ、俺の順番で穴に飛び込んだ



「あの二人が喧嘩するなんて…」

テシィは絶望してるのかあからさまに表情が暗い

「そんなにヤバいのか?」

「下手したらここら一帯は焼け野原ですよ…」

「俺らが内側から破壊するよりもそっちの方が早くね…?」

「いや、今回はななゑさんは帝国を防衛しようとしているわけですから、ここは多分壊れないです……多分」

「不安な答えだな…というかこれからどうするレミ?」

「………………」

レミは何か考え事をしているようだった

「レミ?」

「あっ!ごめん!ぼーっとしてた!それで何か言った?」

「これからどうする?って話だ」

「多分中枢部に管理棟があるはずだからそこから破壊すれば良いと思う」

「何でそんなに詳しいんだ?」

「帝国は元々は違う国だったの、だから昔の国の地図で全貌が分かるってわけ」

「なるほどな、じゃあとりあえずは中枢部の管理棟を破壊しに行くぞ!」



こうして俺達は中枢部に位置する管理棟を目指す事になった




ーーーーーーーーーーーー

《帝国 城門前》



「アルカナカードオープン【隠者】!」

ななゑは持っていたカードが光りその効果を発動する

直後ななゑの背後に白髭の仙人のようなおじいさんが浮いてる状態で召喚される


「そんな弱いカードで戦う気?」

ルプスは容赦無くななゑごと仙人を叩き切ろうとする


「私が何も考えずにカードを選ぶわけ無いじゃない」

ルプスの斬撃は虚しく空を斬る

「……ッ」

ななゑは寸前の所でルプスの斬撃を避けていた

「アルカナカード【隠者】は使用者に洞察力を与える」

「だから何?」

ルプスはななゑに追撃を加えようと刀を振る

振る直前にななゑは残り4枚の手札の中から2枚のカードを選び取る


「アルカナカードオープン【節制】【吊り人】!」

カードの効果が発動し、ななゑの背後に天使の羽が生えた聖母と吊るされた人が隠者の隣りに同時に現れる


キンッ


ルプスの攻撃はななゑの頭部に当たるものの、力無く弾かれる


「【節制】は相手の力をコントロールし、【吊り人】は私に加わるダメージを吊り人が代わりに受けてくれる」

「ズルい……」

「あんたを相手にするのに何枚カードを消費してると思ってんのよ、普通の相手なら1枚でも十分過ぎる効果なのよ?」


「そう……」

ルプスはそう言い捨て


ズバァァ!

ななゑの背後に居た【吊り人】の頭を吹き飛ばす


「なっ!?」

ルプスは一歩も動かずに居たのにも関わらず一方的に吊り人を斬り落としてみせた


「私の力をコントロール?出来るものならやってみてよ……ちなみに今のは空気圧で斬り落とした…」

「そ、それは反則でしょ!?【節制】がどれだけ貴方の力を落としてると思ってるの!?」

「どれくらいなの…?」

「地球を斬れる程の力をアリも殺せない程度まで落としてるわよ!」

「あぁ…その程度…?」

「その…程度……!?」

「ダメだよななゑ……」

ズバァァァッ!!


続けて【節制】の首も飛ぶ


「さっきも言ったけど…私は怒ってるんだよ…?」












「…………ふふっ…あははは!!」

ななゑは腹を抱えながら笑い出す

「やっぱりあなた凄いわ!」

「……何で笑ってるの…?何もおかしくないよ……」

「あなたがそこまで本気になるのって本当に久しぶりよね」

「だから何…?」

「何って、私の今までの不完全燃焼を全て解決してくれそうだなって♪

アルカナカード【悪魔】!」

直後ななゑの背後に現れたのは羊の頭をした悪魔だった


「ななゑが戦闘狂だとは知らなかった…」

「何か勘違いしてるみたいだけど、私はただストレスが溜まってるだけよ」


直後、ななゑの背後に居た悪魔とルプスがぶつかり合う




ーーーーーーーーーーーー

《帝国 中枢部管理棟目前》



「やっぱり警備は厳重だな…」

レミ、テシィを含めた俺達三人は管理棟目前の所で厳重な警備に足止めされていた


「何でこんなに警備が…?あっ…」

テシィが疑問を浮かべた直後に何かを悟った

「何か分かったのかテシィ?」

「多分これってななゑさんの手回しですよね…」

「なるほど…ルプスの攻撃を受け止めた後で対策を練ったって事か…」

ルプスの行動が結果的に裏目に出てしまったな…

「どうします?これじゃあ突破出来ませんよ…?」

「レミ、どこか抜け道っぽい所とか無いか…?」

「……………」

レミはまた何かを考えているようだった

「大丈夫かレミ?」

「あっ!ごめん!ちょっと考え事を…」

「さっきからどうしたんだ?」

「いやちょっとね…さっきのキャスケット帽の人が言ってた事が気になって…」

「さっきのキャスケット帽の人?ななゑの事か?」

「うん…」

「あいつは最低だぞ?街を何個も壊したって…」




「一つなの」

「「え?」」

俺とテシィは間の抜けた声で言った



「レジスタンスのある街は一つだけなの…その他は帝国の支配下で…だからななゑって人が言ってる事は変なの…」

「確かに矛盾してるな…」

「じゃあ何でななゑは…?」

「あいつの考えてる事なんて分からん」

「いや、あれはストレス発散じゃないかニャ?」

「なるほど、ストレス発散…か……っておぉぉい!!?」

3人の背後に居たのは謎の猫耳フードことシケットだった


「何でそんなに驚いてるのかニャ?」

「シケットさんのせいですよ!?」「シェド!?まさか三股…!?」

「レミは落ち着け!?」

「詳しくですニャ」

「めんどくせぇぇぇぇ!!お前ら分かってんの!?ここは敵本拠地だぞ!?」


「おい今そこで人の声がしたぞ!」

敵兵が異変に気付きこちらに近づいてくる


「「「シェド……」」」

「俺の所為なの!?」

だけどこれはマズイ…!このままじゃ見つかる…!


「どうも〜おはようございますニャー」

隠れていた所から出て行ったのはシケットだった

「貴様、何者!?」

「はい、静かにお願いしますニャ」

シケットがそう言った直後


バタンッ


敵兵が倒れた

「な、何したんだ…?」

俺がそう聞くと

「軽く殴っただけニャ」とシケットは答えるが

少なくとも俺にはシケットの殴打は見えなかった…


「なんか大変そうだから手伝うニャ」

そう言ってシケットは管理棟の警備をしている敵兵達に近づいていく


「む、無茶だ!」

「ここは私に任せてさっさと登るニャ」

「行こうシェド!今しかチャンスが無いよ!それにシケットちゃんなら大丈夫!レミちゃんも行こう!」

「う、うん…」

「でも…!」


シケットを捉えようとする敵兵



はピンポン球の様に弾かれていく


「うん!大丈夫そうだな!任せたぞシケット!」

敵兵が減った所で俺とテシィとレミは管理棟内に突入した



中は広いロビーが有り正面にはカウンター、真ん中に上に登る巨大な螺旋階段が有るといった感じだった

近くにエレベーターもあったのだがどれも電源を止められており、上に登る手段は螺旋階段しかないようだった

「楽には行かせてくれないようだな」

「そうみたいですね…」

「そういえばテシィ、気になってた事が有るんだが…」

「ん?何ですか?」

「前にお前が機甲竜を倒した時に使った剣は使えないのか?」

「あぁ、《個体指名》のことですね…あれはちょっとデメリットが多くて…今はちょっと使えないですね……」

「そうか、それじゃあしょうがないな……っておい、お前そんな状態で大丈夫なのか?凄く今更だが立て続きで休まずにここまで来ちまったけど……」

「大丈夫ですって…立て続けに戦うのは慣れてますから、それよりもシェドさんだって大丈夫なんですか?私は天使だから身体が丈夫なのですが、シェドさんはどう見ても普通の人間ですよね?」

「悪かったな普通の人間でよ!後俺の事は大丈夫だ、それより自分の心配をしろよ」

「ねぇねぇシェド…」

レミが小声でシェドに話しかける

「なんだよ小声なんかで…」

「テシィさんはいわゆるナルシストってやつなんですか…?」

「あー…うん、まぁそんな所だ」

自分を天使だとか言ってたら周りの反応は当然こうなるよな…

テシィには悪いがナルシストということにしとこう

「どうしたの二人とも?」

「「いや、なんでもない」」


俺とレミはそうテシィに言った後、螺旋階段を登り始めた


俺達は螺旋階段を2階3階と登って行く、途中の2階3階には機械の残骸があったが特に脅威もなさそうなのでスルーし俺達は上に登っていった、レミの話いわく帝国を動かしているコントロールサーバーは5階に有るらしい



俺達は4階に到着するとそこは1階同様に広い空間が広がっていた

ただ1階と違う点を言うならば

カウンターが無いことと…


「次の階に繋がる螺旋階段が無い…!?」

「えぇっ!?なんで!?」

俺とレミが驚愕し4階の空間に入った直後


ガァンッ!

鉄柵が上から落ち、俺とレミを捕らえる


「二人とも!!?」

テシィは後から登って来た為無事だった

『どーもレジスタンス皆さん…』

いきなり上からモニターが現れ、謎の男が映し出される

「誰だ!」

『誰だとは失礼な、私こそがこの帝国のコントロール主導権を持つジィーリ博士だ!』

「なんで博士が国の主導権握ってんだよ!?」

『簡単さ、機甲竜を作ったのは私、そしてこの国を制圧したのも私だからだ』

「なんでそんな…まさか世界征服とか言うつもりじゃねぇだろうな?そんなありきたりな話は無しだぜ?」

『………………良く我々の包囲網を突破したな…褒めてやろう』

図星かよッ!

「つーか包囲網って何のことだよ…それっぽいのは全然なかったぜ?」

『何…?そんなバカな、それぞれのフロアに最強の機甲竜達を配置したはず……』

「2階3階は機械の残骸しか無かったぞ?」

『バカな…まさか!あの女か!?ことごとく私の計画を潰しおって…!』

「あの女…?」

博士は歯軋りをしつつ話を続ける

『まぁ良い!貴様らはここで死ぬが良い!!』


博士がそう言うと小型の蛇の形状をした機甲竜3体が現れ俺達を囲う

小型と言っても俺やテシィを少し上回る程の大きさだった


『焼け死ぬがいい!!』

博士がそう言うと3匹の機甲竜の口が開き火を吐き出す

「天界兵装【Angel Weapon】型式《盾》!」

テシィが展開した半透明の壁が檻ごと覆い火から俺たちを守る

『ほう?それが例の報告にあった異能の力か…興味深い』

3匹の機甲竜は火を吐き出すのを止め、尻尾を叩きつけてテシィの《盾》を砕こうとする

「くっ…!」


テシィは砕かれる前に《盾》をしまい回避行動を取る

尻尾の叩きつけが失敗した機甲竜達は続け様にテシィを追いかける


「テシィ逃げろ!お前が狙われてるぞ!」

「分かってます!」

テシィは背中の翼を使い羽ばたかせ宙に逃げる

『予想の範囲内じゃな』

博士がそう言った直後、機甲竜の背中から鋼の翼が展開される

「なっ!?」


高速で空を舞った3匹の機甲竜は様々な角度からテシィを狙う

テシィは回避を優先しようとするが、死角から現れた機甲竜の尻尾に巻き付けられ地面に落下してしまった

機甲竜の尻尾は容赦無くテシィを締め付ける


「あああああぁぁぁ!!!」

「テシィ!」

『ふむ…気絶しないか…やれ』

博士の指示が機甲竜に伝わり、テシィを締め付けていた機甲竜はテシィを壁に叩きつける


「がぁっ…!!?」

『しぶといな』

「やめろ!!」

俺はレミから預かった拳銃で機甲竜に向けて発泡


キィンッキィン!

機甲竜に向けて放たれた弾丸は簡単に弾かれた

『無駄無駄、そんな豆鉄砲で機甲竜は壊れんわ』

「くっそ!!」

続けて撃つものの全て弾かれてしまい、残弾が尽きる


「くそ!!こんな檻さえ無ければ…!」

「シェ……ド…………」

「待ってろテシィ!直ぐ助けに…!」


「そこに居て……できれば見ないで欲しいかな……」


「何を言っ…」

『茶番は終わりじゃ』

3匹の内の1匹の機甲竜がテシィにトドメを刺そうと尻尾をテシィに叩きつけようとする

「テシィ!!」




「フフッ…」

バシッ…!

機甲竜の尻尾をテシィが片手で受け止める


『なんじゃと!?』


「テシィ……?」

テシィの様子がおかしい


テシィの水色の髪が次第に白くなっていき

テシィの背中の羽は消え、代わりに先端が鎌のような黒い尻尾が現れ

天使の輪が消え黒い角が頭に生えた


そして、テシィの青い目は赤い目に変わる




「遊ぼ♪」


バキィッ!!

テシィ?は機甲竜の尻尾を握力だけで握りつぶした


『な、なんじゃこれは!?こんなの報告には無かったぞ!』

3匹の機甲竜は危険を察知しテシィ?から離れる


「遊ぼーよ」

テシィ?は地面を蹴り機甲竜に向けて駆けだす


『ちぃっ!!?』

博士は盛大に舌打ちをし機甲竜に指示を飛ばす

指示を受け取った機甲竜達は一斉に火を吐き出す


機甲竜が吐き出した火はテシィ?に直撃


「熱いよ」

テシィ?は火の中を無理矢理突き進み

尻尾の先の鎌状の刃物で3匹の機甲竜の頭を斬り飛ばした


『き、貴様何者……!?』

テシィ?は何も答えず機甲竜の頭をモニターにぶつけ、液晶を割った


「テシィ……?」

俺は檻越しからそう呼びかけるとテシィが振り向く

「ん?あぁ、あの子の知り合いかな?」

「何言ってるんだ…?」

「私はルビィ、悪魔だよ」

「な、何言ってんだ…?」

マジで意味が分からない、色々と雰囲気が違うのは分かるが、顔は紛れもなくテシィそのものだ

「どうしちゃったんですかテシィさん!?」

レミは突然容姿が変貌したテシィに戸惑いを隠せないようだった

「あぁ説明が面倒ですねー、とりあえず檻から出たらどうですか?」

そう言ってルビィは尻尾の鎌を器用に使い檻を切断

「どっから説明すべきですかねー?」

「どいうことだよ」

「簡単に言わせてもらうと、ちょっと特殊な二重人格ってところです。天使の私の肉体、もしくは精神の限界が近づくと堕天して私が出てくるって訳です。以上説明終わり」

「いや待てよ!テシィはどうなってんだよ!?」

「テシィなら寝てますよ、私の中でね」



ーーーーーーーーーーーー

《帝国 城門前》


「ちぃっ!!?」

ななゑはギリギリで迫り来る刀を避けたが、背後に居た【隠者】は切り裂かれた


「大人しく死んでください…」

「そんなお願いを素直に聞く奴なんて居ないでしょうが!」

ななゑは自分のカードホルダーを確認する


(残りカードの枚数は…)


「呑気にカード選んでる暇なんてあげないよ…」

ルプスはななゑから距離を取り刀を振るう

「アルカナカードオープン!【皇帝】!」

即座にななゑはカードホルダーからカードを取り出しアルカナカードを発動させた

ななゑの目の前に【皇帝】が現れる


直後【皇帝】は斬撃に直撃し吹き飛ぶ


「くっ…!?」

「もうカードを選ぶ暇も無いみたいだね…」

「勘違いしないで、あれは今のタイミングでは完璧な采配よ」

「じゃあもう限界ってことだよね…?」

「……………………」

「今なら謝れば許してあげる…だからあの子に謝りに行こ…?」

ななゑは黙り込む







「今回は私の勝ちだから……」

ルプスはそう言って私に向かって一歩前に出た



「ふふっ……いつから勝ったって錯覚してたの?」

ルプスの足元が唐突に光り始める

ななゑがあらかじめ仕込んで居たのだろうアルカナカードが発動する


「っ!?」

ルプスは回避をしようとしたが手遅れだった


「アルカナカードオープン!【運命の輪】!」

ルプスを中心とし幾つもの光の円がルプスの周囲をグルグルと回り始める

「ルプス、あなたは私に勝てない運命を辿る」

「何を言って……っ!?」

ルプスは身体中の力が抜ける感覚に囚われる

「この運命は覆せない…絶対に」

「やってみないとわからない……」

ルプスは地面でグルグル回っている光の円に対して刀を突き刺す


バチィバギィガキィィィ!!

異様な破壊音が周囲に鳴り響くが光りの輪は崩れなかった


「それは私のとっておきよ?簡単に破壊されてたまるもんですか」

「じゃあ私もとっておき……」

ルプスは刀を捨て両手で印を組む


バチィバチィ!!

印を組んだと同時に雷の檻がななゑを捕らえる

「封ノ印」


「こんなもので捕らえられると思ってるの?」

ななゑはアルカナカードを発動しようとするが一向に発動する気配が無い

「その中ではななゑはただの人になる」

「なっ!?じゃあ最初っから手を抜いてたってこと!?」

「そんなことはない…ちゃんとデメリットも有る…この技の発動中は私は一歩も動けない」

「あんたが搦め手なんて珍しいわね…………」

「こうしないとななゑが勝っちゃうから…私がななゑに勝てない運命は決まってたけど、引き分けなら勝ち負け関係ないからね…」

「考えたわね…」

「それなりに…」

「それで?どうすんのよ?」

「時間が来るまでこのまま…」

「そんなの暇過ぎるわ」

「それは仕方が無……ん?」


ルプスは門の方向から誰か歩いて来るのが見えた


「喧嘩ですかニャ?」

猫耳フードを被った少女シケットは言った

「シケット…来てたんだ…」

「何の用よ化け猫」

「あまり歓迎されてないみたいですニャ、せっかく面白い話を持ってきたのにニャ」

「「面白い話…?」」

暇になりかけたルプスとななゑはシケットの発言に食いついた


「聞きたいかニャ?」

「暇だから…」

「早く言いなさいよ」


「それではそれでは…」

そう言ってシケットが取り出したのは何枚かの写真とボイスレコーダーだった


「何よそれ?」

「この世界でのななゑの動向だニャ」

「はぁぁぁぁぁ!!?ちょっと待ちなさい!いつから!?いつからの記録なのよ!?」

「聞けば分かるニャ」

そう言ってシケットは黒い笑みを浮かべながらレコーダーを流し始める


『レジスタンスの全滅?そんなのこちらから願い下げよ』

ハッキリとななゑの声が再生される

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?ちょっと!止めなさいよ!?つーかいつの間にそんなものをぉ!?」

「ずっと後ろで盗聴してたニャ」

『力ずくで言うこと聞かせるですって?その言葉そのまま返すわ』

「そしてななゑはこの後帝国の機甲竜を三分の一ぐらいまで減らしたニャこれがその時の写真とビデオテープですニャ」

シケットはレコーダーから流れたななゑの声に補足する

「わかった!わかったからもうやめて!あんたの要求は何!?何が目的でこんなことを!?」

「ニャ?」

『罪の無い捕虜は解放しなさい、何?それは無理ですって?なら私が直接解放しに行くわ』

「ちょっ…待っ…マジで何が目的なのよ!?」

「ニャー単純な目的ですニャ、ななゑの毒舌で悪人っぽいその性格を直して欲しいのですニャ」

「ななゑ……」

「わ、わかった!わかったから!もう悪人面しないから!だからテープ止めなさいよ!!」

「わかったニャ、あっ、手が滑ってテープがー(棒」

電源を止めた直後テープはルプスの方に飛んでいく

「絶対わざとでしょおぉぉぉ!!?」


テープがルプスの足元近くに落ち、衝撃で再び電源が入る

『管理棟を守ってた機甲竜は壊したし後はあいつらが来るだけね…久しぶりにルプスと本気の手合わせしたいし、ここで私の悪人度を伸ばしておこうかしら』

「へぇ…?」

ルプスがニヤニヤとななゑを見る

「もういっそ殺してよ…」

ななゑは地面に突っ伏していた

「茶番はこれぐらいでそろそろ本題に入るニャ」

「本題…?」

「この国の今後についてだニャ」



ドォォォン!!


シケットが話し始めた直後帝国内から爆音が響く

「そろそろこの世界ともお別れですニャ」

そう言いシケットはななゑを取り囲んでいる結界とルプスにかけられた【運命の輪】に近づき


「お世話になった皆にお別れを挨拶をしに行くニャ」


バリィィィンッ!!!


両手の拳でルプスの結界とななゑの【運命の輪】を破壊した



「いつも思うけど…あんたって人間?」

「確かに……」

ななゑとルプスの問いにシケットは


「それは私のパーカーを取れば分かることですニャ」


「「…………」」

ななゑとルプスはシケットの猫耳フードの中身をまだ見たことがなかった。本人は建前上は飾りと言っていたが、何か在るのは明白だった。以前二人はシケットのフードの中身を無理矢理みようとした事があったが、それは叶わなず終わった


「ニャ?前みたいに無理矢理取ろうとはしないのかニャ?」

「それが出来れば苦労しないわよ」

「あなたは化猫ですから……」

ななゑとルプスはシケットを見ながら溜息を吐く


この猫は強い

一対一では戦いにすらならない



「それじゃあ行くとするニャ」


ーーーーーーーーーーーー

《帝国 中枢部管理棟 コントロール室》


結論から言わせてもらうとルビィが管理棟を両断した

ルビィの中にテシィが寝ているという話を聞いた後、俺は不本意ながらも納得し現状を説明したらルビィが突然空中で回転し管理棟を両断

何を言ってるのかわからねぇと思うが俺もよく分からん


「はい壊した」

ルビィは手に付いたホコリを両手で払いこっちに戻ってきた

「いやいや!この管理棟ごと両断すんなよ!?」

「そろそろ崩れるから捕まりなさい」

ルビィは俺の話を聞く様子は無く襟を持ち

空いた手でレミを抱える

管理棟は崩れていき足場が無くなっていく



ルビィは器用に瓦礫を蹴り、宙を移動し

しばらくすると管理棟は完全に崩れ落ちていた




「やった…!やった!これでこの世界も平和になる!」


レミはルビィから降ろしてもらい瓦礫の上をはしゃぎながら走った


「おい足元が不安定だから気をつけろよ!?」


「ありがとうシェド!それにルビィさんにテシィさ」

バァンッ!






唐突に鳴った銃声が周囲を埋め





レミの胸辺りが少しずつ赤く染まっていく

「レミッ!!?」

俺は崩れ落ちそうになるレミに駆け寄り支えた

駆け寄った時にレミの後方にとある人物が居たのに気づく

後方に居た人物は先程までモニターに映っていた博士だった


その両手に握られていたのは一丁の拳銃



「ひひひ、残念だったな…仲間を守れなくて」

「このクズ野郎がぁぁぁぁ!!」


俺は怒りに任せレミから借りている拳銃を博士に向ける

「知っているよぉ?その拳銃に弾丸は入っていない、さっき機甲竜に全て使ってしまっただろう?」

博士は銃口を俺に向ける


知っている


この銃に弾丸が込められていないのは誰よりも俺が知っている



だが俺は銃を降ろすつもりはない



この感覚は前にななゑと戦った時に似ている





怒りが収まらない



「《Anger mind》」

そうシェドは言い、それがトリガーとなったのかシェドの拳銃に異変が起きる


「《放たれる怒りよ…!集束し愚者を討て!》」

拳銃は手の平で形を変質させ周囲に落ちている鉄くずを吸い上げていく


拳銃は次第に巨大な丸い鉄の塊となる


「《アンガーバーサーカー!!》」

シェドが叫ぶと

巨大な丸い鉄の塊にヒビが入り

中から現れたそれが姿を表す


「グオォォォォッ!!」

現れたのは全身包帯を巻かれた大男

両腕両足首には鉄の鎖が巻きついていた


「蹴散らせッ…!アンガーバーサーカー!!」


アンガーバーサーカーと呼ばれた大男は博士に向かい走り出す


「ひぃっ!?し、死ねぇ!!」


博士は大男に対し銃を発砲するが大男の肉体がその弾丸をいとも容易く弾く


「死ぬのはテメェだ……!!」

シェドはレミを抱えながら大男、アンガーバーサーカーに命令を下す


「穿て」


アンガーバーサーカーはその岩石のような拳で博士の胴を貫いた



博士は叫び声を上げる前に絶命

アンガーバーサーカーは使命を果たしたのか

霧状に消えていった





「おい…!レミ!しっかりしろ!!」

俺はレミに呼びかけるが返事が返ってくる様子が無い

「冗談だろ…!?おい!目ぇ覚ませよ!!」


「………………」


「なんでだよ!なんで最後の最後で…!」

「シェド」

ルビィが背後から話しかけてくる

「なんだよ…!?今それどころじゃ…!」

「その子はもうダメだよ」

「ダメ…?ダメってなんだよおい!まさかこいつが死ぬとでも言うつもりか…?おい!どうなんだよ!!」

「直接言わないと伝わらない?その子は死ぬって言ってる」

「おい…!なんでそんな…!勝手に決めつけんな!!こいつはまだ…!」

「あなたは何にすがってるんですか?」

ルビィは冷たくシェドに問う

「なんでそんなに冷静なんだよ!!」

「私は悪魔です。可哀想なんて感情は存在しません」

「お前ッ……!!」



「シェ…ド……?」

抱えてたレミから掻き消えそうな声が聞こえる

「レミ!大丈夫か!?直ぐ医者に…!」

「ごめんね…もう間に合わないかな…」

「何言ってんだよ!諦めんな!」

「最後にみんなに伝えて欲しいんだ……」

「最後なんて言うなよ…!まだお前は…!」

シェドがそう言った瞬間、周囲の霧が少しずつ深くなっていく


「シェド!」

霧が深くなりかけたところでななゑとルプス、そしてシケットが戻り

ななゑとルプスは何らかの術式のような物で結界を張る

言葉での説明を受ける前に俺は気付く、二人は輪廻庭に戻らないように時間を稼いでくれているのだと



「みんな…ありがとう…この世界を救ってくれて………」

レミはそう言うと静かに目を閉じた



同時に霧が深くなり俺達は輪廻庭に飛ばされた





ーーーーーーーーーーーー

《輪廻庭》


気がついたら俺達はルプスの神社に居た


さっきまで抱えていた筈のレミの姿は無く

その手にあった重さも完全に消滅していた





「そん…な………こんな…こんなことがあって良いのかよ……!!」

俺は地面に拳を叩きつけて叫んだ




こうして2回目の俺の旅は最悪な形で終わりを迎えた






END





















「ここは…どこ?」

少女は湖から陸に上がり疑問を浮かべていた


大変遅くなりましたが投稿出来ました

あけましておめでとうございます( ̄▽ ̄)

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