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今宵、星がかける

作者: 紅月

 さあ、みんな、準備をしましょう。

 星たちはサンタのもとへ。星たちは宴の主催者のもとへ。空が多少暗くても、今宵は誰も困らないから。

「なあなあ、かーちゃん。ほんとにサンタさんは来てくれるのか?」

「ええ。来てくれるわよ」

「クッキーとココアも用意したもんな」

 男の子はもう一度、リビングの中を確認する。きれいに飾ったツリーに、テーブルの上にはココアとクッキー。

 男の子は寝る前に一度外に出て空を見上げる。星はかなり少なくなっている。

 星はこの日、サンタの道しるべとなるために姿を隠すのがあるというのはこの世界では誰もが知っている話だ。

「そろそろ寝なさい」

「はーい」

 息子が部屋に入っていったのを確認してから母親はリビングのソファに座り縫い物を始める。夜も遅い。暖房があっても縫物をする手が少しずつ動きを鈍くしていっている。でも、あと少しで出来上がる縫物を作ってしまおうと手を止めようとはしない。

「そんなに頑張ってて明日に響いたらどうするのよ。明日は一日子供につきっきりなんでしょ?」

「大丈夫よ。こんばんは、ミク」

「ええ、こんばんは」

 部屋に入ってきた子供はそう言って母親の前に座った。普通の人ではありえない、発光しているミクを見ても母親はあわてることもなく椅子をすすめた。

 ミクは人ではない。星なのだ。サンタとして人にプレゼントを配る彼女は体が淡く光っていてそして母親と出会った時からその姿は成長していない。

 あれから。母親が子供だった頃にサンタ見たさに床に鈴をばらまいてそれにひっかかったあの時。ミクと母親が出会ってから二十年以上の時が過ぎた。子供は大人になり、母親になった。今年、ミクは彼女の子供にプレゼントを届けてから彼女とおしゃべりをしている。

 ミクは今でも、自分が発光しているのは自分が星であるということもあるが暗い部屋でも周りが見えるようにするためだと苦笑しながら言う。

 しかし、当時とは違いミクはそのことを悔やんではいない。今はこの日を楽しみに一年を過ごしている。

「でも、あんなお転婆だったのが今じゃ一児の母だなんて信じられないわ」

「私だってそうよ。でも、ルクスも私に似てるのよ」

「鈴なんてまかないように注意しておいてちょうだいね」

「ええ」

「でもどうしてルクスって名前なのよ」

 ルクス、というのはミクの友人でプレゼントの配達仲間である男の子だ。ミクは彼に何度もいじめ、もといいじられているのでミクにとってはあまり好きな人物ではない。

 母親は楽しそうに笑ってから言った。

「だって、面白そうな人じゃない」

 それだけでミクはこれ以上何かを言うのをあきらめた。というか、子供が生まれてから毎年繰り返している内容だった。

 ミクは温められたココアを飲み、母親は縫物の最後の仕上げを終えた。

 静かな空間に暖房である火のついた薪のぱちぱちという音だけが聞こえる。

 そろそろミクが帰る時間だ。ミクたちはこの後、宴の準備があるそうだ。

「待ってちょうだい」

 そう言って母親が出してきたのはついさっきまで縫っていた手袋だった。ミクの手にぴったりとはまったそれをミクはまじまじと見ている。

「サンタさんであるお星さまにクリスマスプレゼントよ。本当はミトンにしようかと思ったんだけど、そりに乗ってたりすると五本指のタイプの方がいいと思ったの」

 包むところまでできなかったけど、受け取ってちょうだい。

「今日はみんなに自慢してやるわ。ありがとう」

 ミクはうれしそうに出て行った。しばらくして空に一本の光の筋が走る。母親はそれを見送ってからベッドに入った。息子が起きてくるまでゆっくり寝るつもりだ。

メリークリスマス。皆さんリア充してますか。作者の紅月です。

なんだかんだで3年かけて3部書きました。

小説家になろうに登録してから毎年書いているので登録してから2年たったんですね。

これを読んだ人に他のクリスマス短編も読んでもらえたらうれしいなとか思いつつあとがきでした。


2011.12.25

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