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第三話 お屋敷の犬

それではご想像くださいませ。

時は現代。所は日本。


うららかな陽気の昼下がり、

郊外の高級住宅地のとあるお屋敷に、

あの男が営業にやってきました。


お屋敷の広さはおよそ1000坪。

その白亜の豪邸は、まるでヨーロッパのお城のようです。

お屋敷には、業突く張りでケチな、お金持ちの主人と、

たくさんの召使い、そして恐ろしい番犬が住んでいたのでございます。


おや、こんな離れたところにまで、

お屋敷の主人の怒鳴り声が聞こえてまいりましたよ。


挿絵(By みてみん)


「なんだと、きさま!

だまって聞いてたら結局新手のセールスか!

無断でわしの屋敷に入ってきて、

わけのわからんことで金を無心しやがって。

何が衝撃屋だ。

わざわざ災難をこうむって、

金を払うバカがこの世のどこにいるんだ」


「ひいいっ、

こ、これは大変失礼いたしました」


「ほら、出ていけ、

さっさと出ていけ。

誰か、つまみ出せ」



主人がそう言うと、すぐに屈強な男が2人奥から現われました。



「乱暴はよしてくださいませ。

た、ただちに、ただちに、

退散、退散いたしますから、

ご容赦をー!」



男たちは、無言で衝撃屋を軽がると持ち上げると、

ゴミでも捨てるように、玄関先に放り出してしまいました。



ぽーーーーーーい



「うわーーーっ」



どしーーん



「あ痛たたたたたた」


「ふん。腹のたつ。

わしの金を狙う奴を容赦するか。

犬をけしかけてやる。

おい、ジョンいけっ」



なんと、お屋敷の主人は衝撃屋を放り出したばかりか、

恐ろしい大きな犬まで放ちました。



「ばうわう、ばうわう」


「ひ~~~。

おたすけ、おたすけ~~~~」

たったったったったったったっ。



犬は1匹でしたが、とても大きくて恐ろしい犬です。

必死で逃げる衝撃屋。

追いかける犬。



「ばうわう、ばうわう」

たしっ、たしっ、たしっ、たしっ、たしっ。


「おたすけ、おたすけ~~~~」

たったったったったったったっ。



お屋敷の主人は、その様子をしばらく眺めて楽しんでいました。



「はっはっはっは、愉快愉快」



そしてすぐに飽きて、家の中へ入ってしまいました。


ばたん。



するとどうしたことか、お屋敷のご主人の姿が見えなくなったとたん、

犬が急に追いかける速度を落とし始めたのでございます。



「ばうわう、ばうわう。・・・・・ば」

たしっ、たしっ、たしっ、たしっ。・・・・・た。



そして、さっきまで血相を変えて追いかけてきた犬が

衝撃屋の元へすり寄ってきたのでした。



「くう~ん。くぅ~ん

へっへっへっへ」


「?・・・・お犬さま、急におとなしくなられましたね。

もうここいらで勘弁してくださるのですね。

ありがとうございます。

じゃあ失礼いたします」


がぶっ。


「あいたっ。あんまりではございませんか。

油断させておいて後ろから噛み付くなんて。

行きます、行きます。

もう決してこちらへはまいりませんから。

それでは今度こそさようなら」


がぶっ。


「あいたっ。

なんでございますか。

わたくしになにか用があるのですか?」


「へっへっへっへ。

ばうわう、ばうわう^^」


「ばうわう、ばうわう。では

要領をえませんよ。

わたしにわかるようにおっしゃってください」



すると犬は地面になにか描きはじめた。



「へっへっへっへ」

描き、描き、描き、描き。


「なんですか?

○、一、○、一、

わかりませんねぇ」



犬は、考えこんでいる衝撃屋に解らせようと、

前足で、自分の描いた図形を必死でたたきました。



たしっ!たしっ!たしっ!たしっ!

○、一、○、一、○、一、○、一、



「マルイチ、マルイチ、

ああ、毎日、毎日、でございますか」


「ばうっ^^」



そして犬は突然走り出し、何処かへ行き・・・また戻ってきました。



たっ、たっ、たっ・・・・・・・・・ ・ ・  ・ ・ ・・・・・・・・・・たっ、たっ、たっ。

どす。



「鯛」



くわえてきたのは鯛。

そしてまた走り出して何処かへ行き・・・またまた戻ってきました。



たっ、たっ、たっ・・・・・・・・・ ・ ・  ・ ・ ・・・・・・・・・・たっ、たっ、たっ。

ころん。



「靴」



今度は靴を片方、持ってきたのでございました。

衝撃屋は、この犬がなにをか言わんとしているのかピンときました。



「毎日、毎日、退屈」


「ばうっ」


「しかしこんな大きなお屋敷で

何不自由無くお暮らしでいらっしゃるのでしょう。

何がご不満なのでございますか?」



その言葉を聞いて犬は、前足で鯛と靴を交互にたたいて

抗議しました。



たしっ!たしっ!たしっ!たしっ!

鯛、靴、鯛、靴、鯛、靴、鯛、靴。



「いやはや、これは、たいへん失礼いたしました。

衝撃屋のわたくしが愚問でございましたね。

お客様の心情をお察しできず、誠に申し訳ございません。

平和と安寧の日々といえば聞こえがよろしいが、

お犬さまにとっては、野生の本能を眠らせる、

睡眠薬のようなもの。

錆びた刀では、大根も切れますまい。

おいたわしや」


「ばうっ」


「それではお客様。

わたくしどものサービスをご所望ということで

よろしいのですね?」


「ばうっ」


「ご予算はいかほどに」



そう問われると、犬はまた走り出して何処かへ行き・・・お金をくわえて戻ってきました。



たっ、たっ、たっ・・・・・・・・・ ・ ・  ・ ・ ・・・・・・・・・・たっ、たっ、たっ。

かさっ。



「10,000円でございますね。

それでは衝撃レベル5になりますが、

よろしいですか?」



「ばうっ」




「それではまいりますよ」
















「あなた、捨てられるみたいですよ」














「それではまた、

御用命の際はお気軽にお声かけくださいませ。

ごきげんよう、さようなら」


読んでくださってありがとうございました。

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