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第二話 巡回中のおまわりさん

それではご想像くださいませ。

時は現代。所は日本。

深夜2時をまわった真夜中の、都会の外れの裏通り。

人通りも途絶え、月も出てない真っ暗で静かな夜。

みなさまご存知のあの男が歩いておりました。


灰色の鳥打帽に灰色のスーツ。

細い切れ長の目は、笑っているような、泣いているような。

その表情からは心中まったくうかがい知れないその男。

今日も今日とて何処へむかって歩いているのやら。


暗く、そして静寂が支配している街の中。どこまでも続く道端の街灯。


男は、街灯の灯りにその姿を浮かべては、闇に消え、

また次の街灯の灯りにその姿を浮かべては、また闇に消えました。


挿絵(By みてみん)


いくつめかの街灯の下にその姿を晒した時、

巡回をしていた警察官が男に声をかけたのでございます。




「ちょっとそこのあなた。

こんな夜中になにしてるんですか?

ちょっと君ぃ待ちなさい。

止まりなさい」


「は?わたくしのことですか? 」


「そうだよ。 あなた何してるんですか? 」


「道を歩いているのですが、何か? 」


「こんな夜中にか? 」


「夜中なのはわたくしのせいではございません。

世の中が勝手に夜中になってしまったのです 」


「おかしな奴だ。 あなた職業は? 」


「はぁ、こういう仕事をしております」



男は警察官に名刺をさしだしました。

名刺を受け取ると、警察官は懐中電灯でその名刺を照らし、文言を読み取りました。

すると警察官は、ますますいぶかしげに男を問いただし始めたのでございます。



「なに?・・・・・・衝撃屋?

なんだ、この物騒な屋さんは。

暴力団の一種か?

もうおまえ、タダで帰すわけにはいかんなぁ」


「お金をちょうだいできるのでしたら、

ありがたく、いただきますが」


「バカ者!金なんかやるもんか。

お前、この衝撃屋ってのは、

どんな家業なんだ」


「はい。 平穏な日常に波風をたてて、

ご予算に応じた、衝撃的な気分を味わっていただく

サービス業でございます」


「おまえは、本当にバカか?

誰が好き好んで平和な日常に波風を立てたがるものか」


「あなた様は、お見受けしたところ巡査さんのようですが、

そうでございますね。

あなたのようなご職業の方でございましたら、

さぞ毎日スリルとサスペンスに溢れたご経験をされていらっしゃるでしょうから、

退屈などという気持ちは、 おわかりにならないでしょうなぁ。

世の中には、自分が何の為に生きているのか、

さらに、生きているのか死んでいるのかさえ実感がもてないほど、

日常に満足されてない方が、わりといらっしゃるのでございます。

そういった方々に、

生きている実感を取り戻していただくのが、

わたくしの仕事でございます」


「贅沢な悩みだ。くだらない」


「そのとおりでございます」




「で、下はいくらからなんだ?」




「はい?」


「その衝撃の値段だ。

いくらでその衝撃的な気分を味わわせてくれるんだ」




「ご希望でございますか?」




「出世の見込みのない交番勤務の巡査が、

どれだけ退屈かお前にわかるか。

道案内、酔っぱらい、道案内、酔っぱらい、道案内、酔っぱらい。

毎日、毎日、毎日、毎日、まじめに20年。

おれはこの街の世話係か。

こんな人生にへき易してるんだ」




「下は、50円からでございます」


「そうか。じゃあ奮発して1000円出してやる。

百戦錬磨のおれの人生に、

せいぜい衝撃をあたえてみろ」


「そのご予算ですと、

衝撃レベル4になりますがよろしいですか? 」



「おお、やってくれ」



「ではまいりますよ」










「奥さん。 万引きしてますよ」









「それではまた、

御用命の際はお気軽にお声かけくださいませ。

ごきげんよう、さようなら」


読んでくださいましてありがとうございました^^

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