「PB黒字化廃止」はマストではあるが、結局は財政出動の「中身」が問題であることについて
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は自民党内の原案で「PB黒字化が事実上廃止」出来るかもしれないと言う記事がありました。
https://www.asahi.com/articles/ASV6Q4469V6QULFA01GM.html?iref=pc_ss_date_article
しかし、「内容がヘボ」だと結局のところ「何も変わらない」どころか「現状より悪くなる」ことについて語っていこうと思います。
◇そもそも、なぜ「PB黒字化」は厳しいのか?
質問者:
ついに、PB黒字化目標と言うのが廃止されるかもしれないんですね!
筆者:
ここで「PB黒字化目標」について簡単におさらいしておきますと、
非常に簡単に言うのであれば税収で全ての支出を賄う事です。
え? そんなの当たり前でしょ? と思われるかもしれません。
この感覚は一般家庭であればその考えで100%正解の感覚ですが、
これは国家財政運営の問題です。
日本においては特に自国通貨建ての国債ですので他国に遠慮する必要が無く、いわゆる「デフォルト」と言う確率が限りなくゼロに近いです(むしろ日銀以外に引き受けさせるとデフォルトリスクは上がる)。
そのために統一通貨のユーロを持っているEU諸国と比べること自体が間違っていると言えます。
質問者:
でも日本はGDP比率で見た場合の借金が世界で一番悪いですよね?
筆者:
これについては2つの側面がありまして、1つは日本が30年間GDPが停滞し続けたためです。そもそもの数字が増えていなければ国債を増やしただけその比率は悪化していきます。
これも自民党の政策が間違い続けており、内需を失い続けていたからに他なりません。
2つ目は日本は世界最速で高齢化率が高くなっており、高齢者に対する医療と年金を支払うだけで自然と赤字が積みあがっていくんです。
そのために「過去最大の予算」とか毎年記事では出ていますが、122兆円のうち医療・年金と国債償還を除くと50兆円ほどしか他には使えないんです。
そして防衛費は年々増えてついに9兆円までに達しました。
残る40兆円ほどの金額で有効な手立てを打つことは難しく、日本全体の病巣を根本を治癒するような有効な策を打つことは困難なんです。
結局のところ年50兆円以上にも上る年金が自己積立制度では無く賦課方式であることが根本の問題であり(ただし特別会計なので一般予算とは関係は無い)、老後の設計がままならないレベルの受給金額しか無い上に、現役世代も取られて苦しいという地獄のような制度が全体を苦しくしてしまっている原因の一つと言えます。
質問者:
だからこそ収入だけで支出を賄う事はどんどん先細りしていくばかりなんですね……。
筆者:
また、GDPと債務残高以外のクレジットデフォルトスワップ(CDS)の指標で見れば日本はむしろ「財政は健全」な方とも言えるので、一番悪いところだけを切り取った非常に恣意的な報道と言えます。
そして、国が財政出動をする必要性ですが、
本来であれば「過去最高益」を連発して株価がうなぎ上りになっている大企業が日本に還元してくれるのがベストではあります。
しかし企業は「国民のため」ではなく「株主のため」に働いています。
そして株主は外資が占めていることが多いので、日本に必ずしも還元されないというのはやむを得ないことではあるのです。
だからこそ、政府が国民のために支出をしてくれなければ今の日本国民が苦しい様相と言うのは変えることが出来ないんです。
※現在は労働分配率が過去最低水準の上に、設備投資が過去10年でみたら横ばいのために大企業の日本での利益は海外に投資されているものと思われます。
質問者:
具体的にはPB黒字化を廃止すればどれぐらい財政出動が出来るようになるんですか?
筆者:
勿論、供給力が無い状態で積極財政をするのは危険なので様子見をしていく必要があるとは思います。
過去の僕のエッセイでも書きましたが、複数年度で財政規律を見ていくことで、
一番少なくても5兆円、最大30兆円規模の財政出動が出来るようになります。
https://ncode.syosetu.com/n8019li/
ちなみに消費税収が25兆円ぐらいなので、丸々廃止することが出来るぐらいのインパクトはある金額なのです。
質問者:
それはかなりインパクトのある話ですね。期待したいところです。
◇しかし、現実は「内容」が根本治癒に至らない……
筆者:
ここで問題なのは「PB黒字化の事実上の廃止はマスト」ではあるものの「それだけではどうにもならない」ということです。
質問者:
筆者:
結局のところ追加で支出する内容次第で全く様相が変わるからです。
例えば喉が渇いている人に水分では無くパンを差し出しても、喉がカラカラなら飲み込めず、むしろ窒息するまであるでしょう。
今、日本政府がやろうとしている政策から推測するとそれぐらい場違いなことをしようとしているという事です。
質問者:
筆者:
例えば皆さんが期待しているかもしれない「食品消費税ゼロ」ですが、これを1%やら0%にしたところでその下がった分価格が下がるわけではありません。
飽くまでも価格決定権が店側にある以上「一部利益をせしめとる」事も全然可能だからです。
その上で、飲食店では店内で食べれば10%なのに持ち帰りは0か1%と大きく差が出るために値段をその分差をつけるか、損を被るかどうか選択をすることになります。
「政府は補助金で対応する」ことを検討しているようですが、こんな面倒なことをやるぐらいなら「一律8%」にした方が「レジ(笑)問題」も解消できるので全然手っ取り早いです。
下らない議論ばかりして時間を稼ぎ、しかもあまり効果が無いというあまりにもふざけた茶番を展開しているんです。
どちらかと言うとインフレに連動して保険料や各種税を自動的に控除最低額を引き上げる制度にしないとインフレによって自然に徴収額が増える――いわゆる「インフレ税」によって国民は押しつぶされてしまいます。こちらの対策をした方がよっぽど有益でしょう。
質問者:
皆さん食品高に苦しんでおられるので少しでも食品価格が下落する事を期待しての意見だとは思いますけどね……。
筆者:
正直これはかなりの「罠」だと思いますよ。
0OR1%、非課税、8%、10%と4つに分離することからインボイス制度が固定化します。
インボイス制度は課税業者に対する増税ではあるのですが、非課税業者から見ても「報酬値下げ圧力」がかかるために民間同士で対立を生む地獄のような制度です。
実は「軽減では無い10%」の方を少しでも減税してくれた方が中小企業などが給料にその分回してくれる可能性が上がるので(給料は税額マイナスにならないため)、非常に有益なんです。
このポイントを多くの皆さんに知って欲しいなと言うのが僕の願いですね。
質問者:
現状では経済にほとんどプラスにならないのが目に見えているのに、皆さんが支持するのは悲しいですよね……。
筆者:
「皆さんがお望みの消費税減税をやっても物価高は改善しませんでした」宣言をし、むしろ物価を下げるために消費を冷やすための「更なる増税」すら目論んでいるに違いないのです。
「日銀利上げ」だって「消費を冷やす」効果があるのである意味この方向性ですからね。コストプッシュインフレが起因なので全く物価が下がる可能性が無い利上げですけどね。
さらに「成長戦略」としているのが「更なる法人減税」に向けられているところがまたいただけません。
法人税は全ての支出を支払った後に 赤字の企業が支払う余地がないんです。新興企業ほど先行投資をしているので赤字ばかりなので「法人減税」は極めて不利な立場になります。
つまりは、黒字の勝ち組企業を更に増長させるというものです。
むしろ法人税は増税して利益を減らさせて「税金で払うぐらいなら従業員に還元するか投資するか」とプラスの作用すらあると思います。
ところが、大企業が「株主」に目が言っていると「利益至上主義」になっていますので、「法人税減税」を要求し、企業献金をたらふく貰っている自民党はそれに同意すると言った流れになっているのです。
質問者:
日本ではいわゆる「ユニコーン企業」と言う急成長する新興企業が生れないのはこういった下地がないからと言うのもあるんですね……。
筆者:
有効策を打てないまま「中途半端積極財政」をするようでは日本は浮上する見込みは無いでしょう。
僕は積極財政をするべきとは言っていますが、国債発行数を増やすという事は間違いなく円の価値を毀損し、円安に繋がるので物価高に拍車がかかっていくことになるリスクも承知しているつもりです。
円安は大企業は輸出をするのでホクホクですが、一般庶民においては円安は物価高になって悲劇しかないという事です。
リスクがあるからこそ「政府責任をもって成長させる」そう言う気概を期待したいのです。
もちろんPB黒字化目標は絶対に廃止した方が良いことは間違いないことなんですが、供給力を上げる政策を打てないと苦しくなるばかりです。
ところが農業においては「需給のバランス」を見て生産し、「稼げる農業」ばかりを推進しています。
完全に逆行した方針であり、抜本的見直しを行わなければ高齢化に伴い生産力は落ちるばかりになると思います。
現状高市内閣の「責任ある積極財政」というのは「大企業」又は「財務省」に対する責任と言え、国民や国家全体の発展に対する責任とは思えません。
質問者:
筆者さんのお話を長年聞いている身からすると、結局のところは「利権」や「外圧」によって政治が歪められているんだなって思いますね……。
筆者:
食品消費税0か1%に引き下げるのを開始してから、2年後に8%に戻すというのがまだ始めてもいないのに「決定事項」らしいのがまた笑えますね。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/900193474.html
経済的な基準で持ってのでは無く「始める前からの決定事項」となっているのは、
「誰かが作り上げたストーリー」に沿って活動しているのか「公約で挙げたからノルマとして消化している」のが今の日本政府だということを意味しているのだと思います。
問題は「100%マイナス」では無く、「中途半端にしか効果が無い(利権で吸い取っている)」ことを延々とやっているために、あらゆる政策を「完全にやめる」とそれはそれで後退するというところがタチが悪いと言えます。
財務省や政府の出先機関である大手メディアを見ているだけだと中々「何がどう悪いのか」分からないと思いますので、これからも僕なりの解説で良ければ続けていきますのでよろしければご覧ください。




