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第25話 二ヶ月の研鑽、覚醒する古代の剣技

 聖都の二ヶ月は、狂熱と静寂が入り混じる奇妙な時間となりました。

 街中では「英雄万歳」の合唱と令嬢たちの熱狂的な声が止みませんでしたが、城塞の奥深くでは、一行が自らの限界を超えて、命すら削り取るような修練に没頭していました。

 アルベローゼは、王城から離れた広大な騎士団演習場に籠もりました。

 彼女が挑むのは、空間そのものを歪める次元干渉魔法。

 一歩間違えば敵味方問わず周囲の空間もろとも消滅させる危険があるため、遮るもののない更地での孤独な格闘が続きました。

「うう、理屈はわかってるんだけど……! 封印の門を通過するには次元の入り口と出口を繋ぐだけでいい。でも、あの封印魔法が次元魔法の維持と魔力供給プロセスに絶妙に干渉してくるんだよね。よし、封印のところだけ魔力供給プロセスを迂回させて……あああ! 今度は次元出口の維持魔力供給に干渉かぁ! もう、意地悪すぎるよこの封印!」

 彼女は髪をかき乱しながら、古代文献と格闘し続けました。

 しかし、その過酷な試行錯誤の中で、一つの副産物を習得します。


 それが『ディメン・セル』(次元収納魔法)でした。

 時の静止した虚無の空間。

 生命体は絶対に死んでしまいますが、物質なら腐敗もせず保管できる特殊空間です。

 この魔法の習得の目処が立ったある日、アルベローゼは女王エレオノーラの元へ直談判に赴きました。

「女王様! 次元の穴を通るための『元気』が足りないよ。私、成功したらこの中に最高のご馳走を詰め込んで行きたいな。生肉も、お酒も、ジュースもお菓子も! 私の次元収納魔法は50ガルイ四方(50メートル四方 )の空間があるんだ。全部パンパンにしたい!」

 女王は彼女のあまりに無邪気で、しかし必死な提案に思わず微笑みました。

「良いでしょう、アルベローゼ殿。

 我が国の王宮料理人と地下貯蔵庫のすべてを、その空間のために開放しましょう。あなたがたの『元気』になるのなら安いものです」

 こうしてアルベローゼの次元空間には、聖都最高の食糧がこれでもかと詰め込まれました。


 王の執務室。

 女王は弟レオンに、政務と王家の執務、王のみに伝えられる秘法を全て伝授していました。

「姉上……」

「言いたいことは分かりますよ、レオン。しかし、乙女の生贄に、私自身がいる事で少しでも生贄の家族が納得してくれるのならば安いものです。レオン…もしもの時、…この国は頼みますよ……」


 一方、バハルとリニの夫婦は騎士団との合同演習に明け暮れていました。

 聖都の精鋭が束になっても、二人の鉄壁と鋭い連撃を崩すことはできません。

「……俺って、そんなに強かったのか? びっくりだぜ」

 バハルが首を傾げます。

「あなたはとても強いですよ。」と笑顔で重量級の木槍を小枝のように振り回しているリニ。

 騎士団員たちはその圧倒的な力に畏怖の眼差しを向けました。

 ディオンとライナスは、父ガリアスから受け継いだ術の「答え合わせ」を一つずつ進めていました。


 三日に一度行われるバハル、リニ、騎士団との木製武器を使った組み手では、ディオンが真価を発揮します。

 低レベルとはいえ、古代魔導エルフ文字の魔力を剣筋に乗せた彼の斬撃は、騎士団の剣術を遥かに凌駕していました。


 ライナスもまた、教会の『ハイル・リッター』(教会神聖騎士団)に同行しては、母譲りの神聖魔法で死霊系モンスターを浄化し、騎士たちを驚愕させていました。


 エリカは『マギ・オバスト・オーブスト』(客員大佐待遇)として、魔導師団の演習や練習に参加しました。

 ミスリル製の螺旋腕輪と聖遺杖アステリアのおかげで、強大な魔力を行使しても精神に殺意が宿ることはなく、彼女はかつてないほど冷静に魔導の深淵を追求できていました。


 この期間、全員が極限まで自分を追い込み、口数少なく泥のように眠っては、夜明けと共に武器を取る日々を繰り返しました。


 二ヶ月の期限が迫る中、彼らは「誰も犠牲にしない」という誓いを胸に、地獄の底へと挑むための力を着実に掴み取っていました。


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