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ミツバとヨツバ

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朝早く。いよいよ踏破型ダンジョンに挑戦する日がやってきた。ヒナタは薄ら目を開けながら集合場所へと向かう。

 (ヒナタ〜、大丈夫〜?)

 (大丈夫よ。体を動かしてれば目覚めるわ)

 そうムニョムニョ言うヒナタ。いつもの起きてるのか寝ているのか分からない状態に比べれば今日は随分と寝起きが良い。3日も体を動かす事が出来なかった事が大きいのだろう。久しぶりに体を動かせる興奮でなんとか目を覚まして歩き続ける。

 そうして歩き続けた先。いつもの集合場所へとやってくると正装をしたミツバがいた。いつもの格好と大違いだ。

「おはよ〜ヒナタちゃん。前も思ってたけど随分眠そうやね?朝弱いん?」

「そうよ。分かってるならこんな朝早くから呼ばないで」

「ほんまか〜、申し訳ないなぁ。でもヒナタちゃん、今日はヒナタちゃんのために色々と装備を用意したから、それで我慢して頂戴。ほら、リアンちゃん。あれ持ってきて」

 そう言って手招きするミツバ。リアンは重そうに何かを運んでいる。覆い布で覆われたその中身。ミツバはそれを取り外す。

「じゃーん。これが今回のお目当て、アークスーツ。そして剣。さらにこっちにはポーション。そして魔法瓶に拡張ポーチ。ヒナタちゃんのために我が商会から取り寄せちゃいました〜。ほら、ここにミツバって刻まれてる。凄いやろ?」

「ん、ありがとう」

「なんやえらい反応が薄いな」

「ていっても、全部元々持ってるのよね。特別欲しいものでもないし……」

「ちなみにこれ総額10億ヴァルやで」

「えっ!?これが!?」

 そう言って目を見開くヒナタ。眠気が一気に吹っ飛んだようだ。

「そうそう。魔法瓶とかは単価500万ヴァルくらいのが最高やから大した値段にはならへんかってんけど。剣とアークスーツで8億、拡張ポーチに1.5億。ポーションと魔法瓶に5000万ヴァルとかやったかな?」

 魔法瓶は空間魔法の精度が上がるにつれ性能は上がるが、現状はレベル200以下で通じるものしか販売されていない。強力な魔法を詰め込むのが難しいためだ。そのため単価はそこまで高くなり得ない。

「うそぉ?装備一つに?」

「ていっても、これうちの汎用型でそんな特に高い奴とかじゃないで?まだまだ高くて性能高いのもうちにはあるし。てことで、拡張ポーチに魔法瓶とポーションだけ入れといてリアンちゃん」

 まだ商会への貢献度が少ないヒナタに対して持って来れる限界がこの装備であろう。が、それでもヒナタを驚かせるのには十分すぎた。

「ちょっと待って。後々お金を頂戴とか言われても私返せないわよ?本当に良いの?」

「ええねんええねん。どうせヒナタちゃんとは長い付き合いになるし、うちの大事なシーカーに死なれても困るやん?だからこんくらいは必要やって、ほら、早速きてみ、このアークスーツは魔晶石内蔵型で取り替える必要とかもないし、ほらほら」

 そうして着替えるヒナタ。側から見ればそこそこ高ランクのシーカーに見えるであろう装備を身に纏う。

「どう?」

 そう恥ずかしそうに言うが、ミツバは笑顔で手を叩いて言う。

「ええやんええやん。ヒナタちゃんにぴったりやわ〜」

「そう?ありがとう」

 今までの装備品と比べて圧倒的に着心地が良い。やはり高い商品にはそれなりの理由があるのだ。性能面だけでなくユーザビリティへの配慮が感じられる。

「ほいなら早速移動開始しようか〜。あんまりここら辺でごちゃごちゃしてると混んでくるしな。リアンちゃんとレオンちゃんもいくで〜」

「かしこまりました」

 そう言ってミツバの背後の影からスッと出てくるレオン。ヒナタは急に現れた大柄な男に肩をビクんとさせる。

「うわ、びっくりした」

「あはは。レオンちゃんは神出鬼没やからな〜、きいつけや〜。ほら、こっちこっち」

 そう言って護送車の中へと手招きするミツバ。ヒナタはそれに付き添って護送車の中へ入るのだった。

 グースカグースカパクパクパク。グースカグースカパクパクパク。グースカグースカグースカ………………

「ちょっとヒナタちゃん、着いたで」

 そう呼ばれて目を覚ますヒナタ。薄ら目を開けて言う。

「あと十分……」

「あと十分やない。もう始まっとるねん。ほら、早く起きて寝癖を直さんと。ウラッ!」

 そう言って布団を思いっきり引っ張るミツバ。ヒナタを無理矢理立たせて顔を洗わせ、寝癖を直して装備を着させ直させる。

 (はぁ、うちに子供が出来たみたいやわぁ)

「ほら、ヒナタちゃん起きた?」

 コクコク。

 (ほんまかいな)

「それなら目を開けて、よし行くで」

「ゴー」

 一応起きたようだ。まだ若干眠そうだが目を開いて自力で歩いてるのでよしとしよう。そうして護送車から出ると……

「うわぁ。すごーい」

「祭りみたいやろ?」

 踏破型ダンジョンに挑戦したいクランやそれに纏わる商会。メディア関係者など多くの人で賑わうオルフィアのダンジョン付近。壁の外とは考えにくいほど盛り上がった様子だ。

「ほら、ヒナタちゃん。これ整理券。あっちがダンジョンや。並んでき」

 そうしてヒナタもダンジョンに挑戦するシーカー達の列へと並ぶ。その間、繋がりのある商会へと話しかけようとミツバが動き出したその時。

「あら、ミツバさんがどうしてこんな所にいらっしゃるのかしら?」

「ゲッ。ヨツバ……」

 ミツバとヨツバ。名前は似ているが姉妹などではなく、ただの商敵だ。しかし、強力なライバルで、ミツバの顔を見つけるといつも寄ってきて嫌味を言ってくる嫌な奴だ。

「ここへいらっしゃると言う事はどこかのクランと契約を結んだので?」

「いやちゃう。組んだのは個人や。後々はクランも創設するつもりやけど」

「あらそう。ご存じなかったわ。つまりここはミツバさんの晴れ舞台という事でよくて?」

「私じゃなくて、うちのヒナタちゃんが!やけどな」

「おほほほほ。それは申し訳ない事をしてしまったわね。今日はうちのカイゼルちゃんがいるの。わざわざここまできて屍を作るような真似をさせて申し訳無いわねぇ」

「え?あんたまさか?月華双極と組んだんか?」

「うふふふふ。その通りよ。値は張ったけど。それも今回うちのカイゼルちゃんがランキングを更新する事で全部回収するつもりよ?そっちのヒナタボッコ?とか言うのには悪い事をしちゃったわね。それじゃあまた。パーティで会いましょう。クローヴァーにも成りきれへんかった半端もんさん。おほほほほほほほ」

 そう言って去るヨツバ。

 (相変わらず嫌な奴や。その割に商才はあるからなおタチが悪い。まったく、朝から嫌な気分にされたわ)

「護送車に戻りますか?」

 後ろからの声。振り向くその先に居たのはリアン。リアンの胸に顔を沈めて言う。

「リアンちゃん。後ろにおったなら助けて〜な。今日もあいつにボロクソ言われたで?ミツバチはどっかいけって。」

「そんな事は言ってなかったでしょ……それでどうするんですか?戻ります?それともここで残ってヒナタさんを待ちますか?」

「う〜ん。せやなぁ。まぁヒナタちゃんが出てきた時に私がおらな可哀想やし?一応待っとこうかと思ってるけど。そんなに時間かからへんやろ」

「そうですか……分かりました。それでは私は護送車で休みます。少々疲れました」

「はいは〜い。おおきにな〜リアンちゃん。ゆっくり休んどき〜」

 ここまで徹夜で事務作業を続けてきたリアン。流石に疲れが溜まっているのだろう。目にクマを溜めたまま護送車に入り込んだのだった。

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