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ギルドカード

 ミナトに連れられて防壁外の簡易ギルドにやってきたヒナタ。

「わぁ、広〜い。」

 そう言って辺りを見渡すヒナタ。端から見ても明らかに新参者と分かるような風貌と立ち振る舞いだ。

「お前、ギルドにすら来たことなかったのか?」

「……そうだけれど。何でよ?」

「いや、何でもない……」

 するとまた辺りを見渡し始めるヒナタ。金ピカの装備に身を包んだ人もいれば、明らかに重そうな剣を携帯している人もいる。ヒナタにとってギルドの中は新世界そのものであった。

「ここでちょっと待ってろ。今計測器を持ってきてやる。」

 そうして椅子と机のある場所に案内されたヒナタ。椅子に座った後もヒナタは見慣れない新世界を好奇の目で見続けていた。

 (ヒナタ、流石に見すぎだよ。)

 (いいじゃない。減るものでもないでしょ。)

 (ギルドの中だから誰も何もしてこないけど、外ならどんなイチャモン付けられたか分かったもんじゃないよ。頼むから落ち着いて座ってて。)

 (分かったわよ……過保護なんだから。)

 (過保護にされる方にも問題があると思うんだけど……)

 (なんか言った?)

 (いいえ何も言ってません。)

 キューネは早口になった。そんな茶番を続ける2人だが、キューネは先んじてヒナタに知恵を授ける。

 (あ、そうそう、ヒナタ。魔法の事についてはね……)

 キューネの解説を聞いたヒナタ。詳細はよく分からなかったが、自身が何を言えばよいのかだけはとりあえず把握した。

 (分かったわ。そう言えばいいのね。)

「悪い、待たせたな。」

 そう言ってヒナタの下に戻ってきたミナト。そこそこのサイズのステータス測定機を机に置く。

「ほら、ステータスを確認するから、これの上に手を置いてステータスを開いてくれ。」

「ん?普通にステータスを開けばいいの?」

「そうだ。他のやつに見られることを心配してるならそれは大丈夫だ。これは俺用に作ってもらった奴だから俺にしか見えない。」

「分かったわ。」

 そしてヒナタはその機械の上に手を置きステータス画面を開く。ステータス画面上ではヒナタ単体の現状の実力が端的に示されていた。

 【レベル】  8

   

 【スキル】 【夢】

 

 【魔法】  

「ん?これ本当にお前のステータスか?何かステータスを隠すスキルを使ってるのか?それなら外してくれ。」

「いや。これが私のステータスよ?」

 ミナトは疑念を抱く。ダンジョンから一人で生還するには最低40、50くらいはレベルが欲しい所であるし、そもそも先程まで魔法を連発していたように見えた。しかし、ステータスが示す所によると魔法の欄は空欄であるし、レベルに至っては8である。これではまともに外を歩くことも難しいであろう。その乖離を埋め合わせるために、ミナトはヒナタがステータスを隠蔽するスキルを使っているのだと自ら辻褄を合わせたが、それもヒナタに否定されてしまった。ミナトは言う。

「お前さっきまで魔法をバンバン撃ってたよな?」

「撃ってたわね。」

「でもこのステータスによるとお前は魔法を持ってないぞ?」

「そうね。」

「じゃあなんだ。幻でも見せてたっていうのか?この夢とか言うスキルで。」

「いいや、違うわ。実際にのところそのスキルは魔法をある程度自由に放てるようになるスキルなの。それで魔法は持ってないけど、擬似的に魔法を撃つことは出来るの。」

「それでもレベル8だろ?あんなに魔法を連発なんて無理だろ。ダンジョンを出るまでも、出てからもかなりの距離があっただろ。それまで魔力が持つ訳がない。俺等が見ただけの魔法の量でもお前のレベルならとっくのとうに魔力切れで倒れてる筈だ。」

「私、生まれつき魔力は多い方なの。ダンジョンを出て途中までは気配を薄くする魔法を掛けてたから魔物達に気付かれなかったの。それでダンジョンの中でも、そして都市に着く途中までもそれで乗り切れてたのだけど、勘のいい魔物にバレちゃってね。それであんなことになってたのよ。」

 ヒナタの説明には一応の筋が通っていた。それに加え、実際にキューネの存在を省いているだけで、やっていることはほとんどありのままの真実を伝えているので、あからさまな矛盾は存在しない。そんな説明を聞いたミナトは一応の納得を見せる。

 (なるほどな。まぁこれならダンジョン送りになったのにも理由がつく。ぱっと見、低いレベルと使い道の無さそうなスキルしかないからゴミ認定された訳だ。)

「分かった。じゃあとりあえずギルドカードを発行してやる。お前金は持ってるのか?」

「え、お金がいるの?」

「当たり前だろ。一応公式からのカードだからな。無料って訳には行かねえよ。偽造対策にそこそこ金をかけてるんだ。これくらいはするさ。」

「それってちなみにいくら位?」

「一万ヴァルだ。」

「ちょ、ちょっと待ちなさい。」

 財布を振ってお金を出すヒナタ。そしてそこから出てきたお金を数えてみる。

「1326ヴァル……」

「こりゃ全然足りねぇな。」

 (ヒナタ、魔石魔石)

 キューネがヒナタに話しかける。すっかり魔石の存在を忘れていたヒナタだが、キューネにその記憶を呼び起こされ左ポッケから魔石袋を取り出す。

「これで足りるかしら?」

「おー。ちょっと見せてみろ。低層の魔石7個か……7000ヴァルくらいだな。」

「足りないじゃない……」

「ギルドカードが無いと壁の出入りも出来ないぞ。」

 (ねぇキューネ。どうしようかしら。)

 (野宿か……ヒナタ。一緒に頑張ろう。)

 そう言ってヒナタの肩に手を置くキューネ。すると瞼をきゅっと上げ答えるヒナタ。

 (なに諦めてんのよ!こんなか弱い少女を路上で寝かすつもり!?)

 (でもお金がないなら仕方ないよ。)

 (それはそうだけど……)

 黙りこむヒナタを見たミナトはため息をつきながらヒナタの目の前に一万ヴァルを置く。

「貸しにしといてやるよ。」

「え、本当に?いいの?」

「ああ、将来有望なシーカーだからな。先行投資ってやつだ。さっさと活躍して返してくれよな。」

「分かってるわよ。2倍にして返してやるわ!」

「はは、もう少し強くなってから大口は叩くんだな。ちょっとそこで待ってろ。今作りに行ってやる。」

 ヒナタのギルドカード発行のために奥へ消えたミナト。暇になったヒナタはまたキューネとの会話を始めていた。

 (あいつ、意外といい奴じゃない。)

 (本当だね。これで野宿しなくて済む。感謝感謝。)

 そう言って両手をすり合わせるキューネ。

 (それにしてもヒナタ、随分ポーカーフェイスが上手いね。ダンジョンで一杯ちちくり合ったのが功を奏したかな?一瞬瞼が吊り上がったのは気になったけど)

 (あんたがあんなこと言うからでしょ。もうちょっと自制しなさいよね。こっちも集中してるんだから。)

 (はいはい分かったよ。)

 奥から出てきたミナト。そしてまたヒナタの対面となる椅子に座り込む。

「これがお前のギルドカードだ。絶対に無くさないようにな。」

 机に出されたギルドカードを大事そうにポケットに入れるヒナタ。そして、ギルドカードの隣に置かれた機械類の何かに目を向ける。

「こっちのは何よ?」

「情報端末だ。これを使えばギルドから発表されている情報が一通り確認できる。例えば、ギルドからの車がどこに向けていつ出発するのか、とかな。その他にもこのデバイスを使えば依頼を受ける事もできる。お前のレベルじゃあ同伴扱いだから高くなるだろうが死ぬよりましだ。もしまたダンジョンに潜りたいならもう少しレベルを上げてから行くか、高い金を払うことだな。」

「同伴ってなによ?」

「レベルの高いシーカーはいざという時にモンスターと戦うのに役立つから護衛という形でギルドの輸送車両に乗れる。同伴っていうのはレベルの低いシーカーや民間人がそこに同乗する形だな。だからその分必要な金は高くなる。」

「ダンジョンに行くならいくら位するのよ。」

「確か……3万ヴァルとか、そんなもんだった気がするな。」

「高いわね。本当に乗せる気があるの?」

 3万ヴァルという信じられない額面に顔を歪ませるヒナタ。しかし、ミナトは淡々と答える。

「まぁ乗客に弱いのが居れば強いのを入れる枠が少なくなる。外で輸送車を走らせるのは危険だからな。お荷物抱える分、お金を貰わないと割に合わないんだよ。護衛という形で乗りたいなら……そうだな。魔法を使えるならレベル30くらいにいけば申請通るかもな。」

「当分はひもじい生活をすることになりそうね、とほほ。」

 (ヒナタ、ベッドが無くても僕の膝枕があるよ。)

 (黙ってなさい。)

 冷たいヒナタの声にしょぼぼんと高度を落とすキューネ。

「別にダンジョンに行かなくてもお金は稼げるぞ?」

 ヒナタは驚愕の声を上げる。

「え?それって本当?」

「ああ、お前が受けられる依頼なら、ここら近くの雑魚狩りの間引き依頼だろうな。単価は安いが、魔石の獲得数次第でそれなりにボーナスも貰える。」

「じゃあ何よ。シーカーはダンジョンに潜らないと生計が立てられないって話は嘘なの?」

「それはお前をダンジョンに送る嘘っぱちだろうな。毎回ダンジョンに潜れるほど強いシーカーばっかりじゃないし、地上の魔物の方が人気だからな。というより、初心者シーカーをそんなに使い回してたら下が育たないだろ。低賃金にはなるが、それなりに簡単な依頼もギルドには多く登録されている。早速明日ここら辺の間引き依頼受けてみるか?時給500ヴァル。魔石1個につきプラス300ヴァルだ。」

「安いわね……」

「そりゃある程度大人数で行って安全が確保されている状態だからな。普通に行くよりは安くなるさ。でも死ぬよりはマシだろ?ギルド経由の依頼はある程度の安全性は確保されているからな。それの手間暇を経費として抜いたら、お前らに残るのはそれくらいだ。」

「そう……それにしても。本当に私騙されてたのね。世の中にはひどい人達もいるものだわ。」

「世の中にはそんな奴ばっかだ。もしこういうことに今後巻き込まれたくないなら、強くなることだな。周りがお前をぞんざいに扱えないくらいにな。」

「強いことがそんなに重要なの?」

「少なくともダンジョン送りにされることは無かっただろうな。」

「……」

 ミナトの言葉には、強くなって自身の実績に貢献してほしいという願いが込められていたものだが、今まで故郷暮らしで何も持たなくとも丁寧に扱われてきたヒナタにとっては胸をえぐるような言葉であった。

 (強くならないと……ね)

 その言葉にはどこか決心めいたものが混ざっていた。

「分かったわ。ありがとう。それじゃあ私、もう眠いから行くわね。さっさと宿を探して寝るわ。」

「なら……ほら。さっきの魔石を換金した7000ヴァルだ。持ってけ。」

「いいわよ。ギルドカード代に当てておきなさい。」

「1000ちょっとのヴァルでまともに宿に泊まれると思ってるのか?一万は俺が持っといてやる。これ持って多少はマシな宿に泊まってこい。」

「そう?ならありがとう。」

 金銭感覚がいまいち分からないヒナタだがとりあえずお金を貰えたことに感謝する。1000ヴァルで泊まれる宿などどこにも存在しないであろうことから、ヒナタはミナトにもっと感謝しなければならない。

「じゃあな。もう二度と魔物を都市に連れて来るなよ。それと担当職員を俺に設定しといたから、次から依頼の処理とか魔石の処理をしたい時は俺を呼べ。対応してやるから。そんじゃあ俺はもうそろそろ帰る。」

「分かってるわよ、それじゃあ私も行くわ。あんた意外と優しいのね。」

 そう言って手を振りギルドを出るヒナタ。

 (それじゃあキューネ、宿を探すわよ。)

 (レッツゴー。)

 そう言って右手を上げるキューネ。そしてそのまま検問所に行き壁の中に入る。壁の中に広がる光景を見て感慨深くなるヒナタ。

 (ようやく戻ってきたわね。)

 その顔には安堵が漏れ出ていた。壁の中に広がる建物を見渡しながら、まだ不慣れな道を進んで行く。しかし、ヒナタがシャワー付きの宿を求めた結果、宿探しは大いに苦労することになったのであった。

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