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踏破型ダンジョン

49

「ふぅ、まぁ気を取り直してと。魔石の換金やったな?」

「えぇ、そうよ」

 若干の軽蔑の目をミツバに向けたままのヒナタ。

 (うぅ……ヒナタちゃんからの尊敬の目が完全になくなっとる)

「はぁ。ほな換金したるから出してみ」

「はい。これよ」

 いつのまにかタメ語になるヒナタ。あんな情けない姿を見た後に丁寧な言葉を使うのは、少々躊躇われるようだ。

「んー、どれどれ。って、ヒナタちゃんこんな安物の拡張ポーチ使っとるんか? 容量足りへんやろ?」

「入り切らないのは捨ててきてるわ」

「げげっ。勿体ないなぁ。次来た時うちがいいのあげるわ」

「あらほんと? それはありがとう」

 そうしてミツバが魔石を取り出していく。

「オルガの深層やね。ヘルハウンドにデススコーピオンにミノタウロス。1人でよーこんなに集めてくるね? 大変やったやろ?」

「これくらいは慣れっこよ」

 魔石をどんどん出していく。そうして現れる、一際大きな魔石。

「これは……ミノタウロスの変異体の魔石やな? ヒナタちゃんよく倒せたね。推奨討伐レベル175とかやろ? なんかのスキルか?」

「ええ。スキルを使ってギリギリ倒したわ。物凄く疲れたけど」

「へー、それはご苦労様や……」

 (うんうん。やっぱうちの見込んだ通りの逸材や。これはこれからも期待大やなぁ。うひひひひ)

 レベル25の差を埋めるジャイアントキリングを難なくこなしてくる目の前の少女。きっと特別なスキルでも持っているのであろう。自分の目に狂いは無かったと内心ほくそ笑むミツバ。しかし、拡張ポーチから魔石を取り出していると……さきほどよりも更に大きな感触。そして、重い。ミツバは拡張ポーチから全力で手を引っ張り、その魔石を取り出す。

「これは……」

「タイラントの魔石よ」

「タイラント? オルガのダンジョンボスの?」

「そうに決まってるじゃない」

「……」

 言葉に詰まるミツバ。タイラント? ダンジョンボス? ん? 何を言っているのだろう。頭の上にロード画面が出そうなほどフル回転で思考を巡らせる。が、一向に処理が終わらなさそうだ。よし、本人に聞こう。

「どうやって倒したん?」

「光魔法で倒したわ」

「1人で?」

「そうよ?」

「「……」」

 無言。ミツバは決断する。

「ちょっと、トイレ行ってくるわ。リアンちゃん。換金済ませといて〜」

「承知しました」

 そう言ってお辞儀する受付のリアン。

 別の部屋に走り込んだミツバは、情報端末を取り出して情報屋のジンに連絡を入れる。

「今日はなんのご用ですか?」

「ちょっと、あんたヒナタちゃんのステータス嘘こいたんちゃうやろうな?」

「嘘? いや、ギルドに登録された最新情報ですよ。間違い無いです。何度か裏を取りましたから」

「ほんまか〜? 嘘ついとったら承知せーへんで?」

「本当ですよ。今まで嘘の情報を送ったことないでしょう? 確信度が高い情報しかミツバさんには送ってません」

「……まぁ、そうか。それやったらええわ。電話かけてすまんな。ほな、切るで」

 ピッ。

 (……まぁ本人に聞けばええか。嘘ついとる感じもないし)

 そうして部屋を出るミツバ。

 

 一方、いつもの事務速度で魔石を処理していくリアン。すぐさま勘定を終える。

「……そうですね。6000万ヴァルでいかがでしょう」

「それでいいわ」

 即決。そもそもヒナタは金につられてミツバと契約を結んだわけではないため、大したこだわりは無いのだ。元々が大金であるのだから、わざわざごねる必要もない。そのままギルドカードをリアンに渡して換金作業を終える。

「どうぞ」

「ん、ありがとう」

 受け取ったギルドカードをポケットに入れる。どうやら大金を稼ぐ感覚にも慣れてきたようだ。ふとモニターを眺めるヒナタ。ミツバが開いていた画像を思い出して、ブルッと身震いをする。

「流石に、あなたに手を出す気は無いと思いますよ」

 そう耳元で呟くリアン。ビクッとなるヒナタ。リアンは笑って言う。

「仕事と遊びの分別くらいは付いてるはずです」

「ならいいけど……」

 『はず』という言葉を使っている辺り、リアンであれミツバを信用し切れてはいないのではないか、と突っ込みたくなったヒナタであるが、流石に関係性も無いので黙っておく。ガチャ、と扉を開く音。どうやらミツバが戻ってきたらしい。

「お待たせ〜」

 リアンとヒナタの間に流れる妙な空気感。これは何かしたな。商人としての勘がビビッと働く。ミツバはリアンに近付いて小声で言う。

「ちょっと。私がおらん間に何か悪いこと吹き込んだんちゃうやろうな?」

「いいえ。ミツバさんは仕事と遊びの分別がつく素晴らしい方だと説明しておりました」

「そ、そうか。ならええわ」

 どうせ深掘りしても墓穴を掘るだけだと諦めて、ミツバはそそくさと席に座る。今回に関しては、仕事室でおかず探しをしていた自分が全面的に悪いのだ。会話を進めてもこちらが不利になるだけだ。席に座ったミツバは、とりあえず本題の方を進めようと単刀直入に聞く。

「ヒナタちゃん、今レベルいくつや?」

 そう言ってお茶を飲むミツバ。

「200よ」

「ブフーーーッ! ゴホッ、ゴホッ! に、200!?」

 含んだお茶を全て吐き出す。普通のシーカーなら年単位の時間がかかってもおかしく無い水準だ。あまりの想定外に、本来知らないはずの情報も口に出してしまうミツバ。

「あんた前の時151やったんちゃうの!?」

「そうだけど?」

「そうだけど? じゃないやろ! 異常事態も異常事態やんか。なんでそんな一気にレベルが上がったんや? それもスキルか?」

「さぁ? 元からレベルは早く上がるタイプだったけど。最近それが激しくなってきたから、何かのスキルが原因だとは思うけど」

 どこか誇らしくするヒナタ。少しずつ自分の異常性を理解し始めたらしい。急速なレベルアップについては実際の所キューネも関係しているが、それについては黙っておく。面倒ごとの予感しかしないためだ。ミツバは部屋の棚から何かを取り出して、机の上に置く。

「まぁ一旦ええわ。とりあえずステータス見させて頂戴」

 機械を覗き込むヒナタ。随分と小型だ。

「ちゃっちいわね。本当にこれでステータスが測れるの?」

「ギルドのが旧式やから馬鹿でかいだけで、こっちが新式や。ほら、早よ測り」

 あまりの見たさに珍しく人を急かすミツバ。ヒナタは機械の上に手を置き、唱える。

 (ステータスオープン)

【レベル】 200

 

【スキル】 【夢】【変速(Ⅰ)】【変速(Ⅱ)】【優待者】【精霊使い】

      【誓約使徒〈エインヘリヤル〉】

 

【魔法】  【光魔法】【魔法障壁】【回復魔法】

 表示されたヒナタのステータス。ミツバは機械を手に持って震える。

「はぁ!? なんやこのステータス!? こんなんまるで……」

 (怪獣やんけ)

 ミツバが驚いたのはレベルだけでは無い。ありえないほどの魔法とスキルの数。そしてネームドスキル。どれか一つだけでも凄まじい要素を、この化け物は複数持ち合わせているのだ。怪獣という言葉は、まさにヒナタを示すのに相応しい言葉だろう。

「凄いでしょ? ここまで来るのに結構苦労したんだから。えっへん」

「凄いでしょじゃ済まされへんレベルやけどな、これは……」

 なるほど。この数の魔法とスキルがあれば、ヒナタの無理無茶無謀なレベルアップの速度も説明が付くのかもしれない。しかし、そもそもどうやってこれほどのスキルと魔法を獲得したのだろうか? 分からない。

「スキルと魔法は何でゲットしたんや?」

「ダンジョンに籠りまくってるからね。宝箱を見つける機会も多いの。それでよ」

「あ〜……なるほどな」

「そういうことよ。うふん」

 (たまたま運よく激強スキルか魔法をゲットしてからの急成長タイプか。それなら一万歩譲ったらギリギリ理解できるわ)

 とりあえず1番初めに手に入れた何かが超強力で、それを元にダンジョン攻略を進めて、運も良かったためここまでの化け物が誕生した。そう納得するミツバ。

 (まぁどっちゃにしろ逸材は逸材や。さて、後はどう活かしたものか……)

「ヒナタちゃん、『踏破型ダンジョン』って興味あるか?」

「踏破型ダンジョン? 何それ、初めて聞いたわ」

「今までヒナタちゃんが行ってたオルガみたいなタイプのダンジョンは『養殖型ダンジョン』て言うてな、攻略した後も残るタイプのダンジョンや。でも、一回踏破されたらもう2度と入ることが出来へんダンジョンもあるねん。それが踏破型ダンジョンや」

「へ〜……でも、踏破されてるのならもう私は参加できないじゃない」

「もちろん今はほとんどが踏破されたんやけど、それでも一部のダンジョンは未踏破のまま残っとる事もある。レベル制限なんかがあるダンジョンやと特にその傾向は強い。そうやな、今のヒナタちゃんのレベルなら……オルフィアのとこのダンジョンがあったはずや。確かレベル制限は200以下。ちょうどヒナタちゃんにピッタリのダンジョンや。どうや? 行かへんか?」

「そうね……確かにちょうどオルガをクリアして暇になってた所だったし、行ってみようかしら」

「おっけ。決まりや。ほなまた日程とかは情報端末で送るから。それまでゆっくりしとき。あ、あとレベルは上げたらあかんで? レベルが一個でも上がったら参加出来んくなるからな。きーつけや。装備はまたうちの提携店も紹介するし。まーそんなとこか。何か言い忘れてた事あったら情報端末でそれも送るわ。ほなまたな」

「分かったわ。それじゃあまたね」

 そうして部屋から出ていくヒナタ。それを見届けたミツバは、早速デスクについて日程調整を始める。

「オルフィアの所言うたら、確か3日後開催やったよな?」

「はい。それで合ってます」

「ちょっと調べてみるか……お! めっちゃ盛り上がってるやん」

 オルフィアの踏破型ダンジョンは地上に魔物が彷徨いている地域であり、近付くだけでも危険なのだ。そのため、幾つかのクランが合同で力を合わせて参加日を決定し、その期間内であれば他の高レベルシーカーによる間引きにより、安全にダンジョンに挑めるという仕組みだ。

「レベル制限付きのダンジョンで、ですか? 珍しいですね」

「『月華双極』のカイゼルが参加してるから、ランキングが更新されるんちゃうか言うてメディア含めて大盛り上がりや」

 月華双極とは勢いのある若いシーカーを集めたクランで、カイゼルはその筆頭だ。踏破型ダンジョンにはランキング掲示板も付いており、誰が何階層まで行ったかは上位100位以内なら見れるようになっているのだ。そのため、もしもクランのメンバーが1人でもランキングに食い込む、もしくは上位に入り込むなんて事があれば、一気にそのクランは活気付き、覇権クランへの切符を手にする事になる。

「月華双極のカイゼル…………次世代のグラウスと言われるあのカイゼルですか?」

「そのカイゼルや。まぁ次世代のグラウスっていうのは箔をつけるために言っただけやろうから多少誇張しとるやろうけど、それでも将来有望な事には違いない。だからこそ皆んな注目してる。他のクランの連中も多分夢中になっとるはずや。そこにうちのヒナタちゃんを放り込む。今日までならまだ申し込みも間に合うし。あ〜、クランも創設せなあかんし、やる事だらけやな」

「全部自分で蒔いた種ですけどね」

「しゃーないやろ。こんないいビジネスチャンスが転がってるって言うのに、逃すわけにはいかん。というわけで、今日も徹夜で頑張るでリアンちゃん」

 そうして徹夜作業を始めた2人であった。49

「ふぅ、まぁ気を取り直してと。魔石の換金やったな?」

「えぇ、そうよ」

 若干の軽蔑の目をミツバに向けたままのヒナタ。

 (うぅ……ヒナタちゃんからの尊敬の目が完全になくなっとる)

「はぁ。ほな換金したるから出してみ」

「はい。これよ」

 いつのまにかタメ語になるヒナタ。あんな情けない姿を見た後に丁寧な言葉を使うのは、少々躊躇われるようだ。

「んー、どれどれ。って、ヒナタちゃんこんな安物の拡張ポーチ使っとるんか? 容量足りへんやろ?」

「入り切らないのは捨ててきてるわ」

「げげっ。勿体ないなぁ。次来た時うちがいいのあげるわ」

「あらほんと? それはありがとう」

 そうしてミツバが魔石を取り出していく。

「オルガの深層やね。ヘルハウンドにデススコーピオンにミノタウロス。1人でよーこんなに集めてくるね? 大変やったやろ?」

「これくらいは慣れっこよ」

 魔石をどんどん出していく。そうして現れる、一際大きな魔石。

「これは……ミノタウロスの変異体の魔石やな? ヒナタちゃんよく倒せたね。推奨討伐レベル175とかやろ? なんかのスキルか?」

「ええ。スキルを使ってギリギリ倒したわ。物凄く疲れたけど」

「へー、それはご苦労様や……」

 (うんうん。やっぱうちの見込んだ通りの逸材や。これはこれからも期待大やなぁ。うひひひひ)

 レベル25の差を埋めるジャイアントキリングを難なくこなしてくる目の前の少女。きっと特別なスキルでも持っているのであろう。自分の目に狂いは無かったと内心ほくそ笑むミツバ。しかし、拡張ポーチから魔石を取り出していると……さきほどよりも更に大きな感触。そして、重い。ミツバは拡張ポーチから全力で手を引っ張り、その魔石を取り出す。

「これは……」

「タイラントの魔石よ」

「タイラント? オルガのダンジョンボスの?」

「そうに決まってるじゃない」

「……」

 言葉に詰まるミツバ。タイラント? ダンジョンボス? ん? 何を言っているのだろう。頭の上にロード画面が出そうなほどフル回転で思考を巡らせる。が、一向に処理が終わらなさそうだ。よし、本人に聞こう。

「どうやって倒したん?」

「光魔法で倒したわ」

「1人で?」

「そうよ?」

「「……」」

 無言。ミツバは決断する。

「ちょっと、トイレ行ってくるわ。リアンちゃん。換金済ませといて〜」

「承知しました」

 そう言ってお辞儀する受付のリアン。

 別の部屋に走り込んだミツバは、情報端末を取り出して情報屋のジンに連絡を入れる。

「今日はなんのご用ですか?」

「ちょっと、あんたヒナタちゃんのステータス嘘こいたんちゃうやろうな?」

「嘘? いや、ギルドに登録された最新情報ですよ。間違い無いです。何度か裏を取りましたから」

「ほんまか〜? 嘘ついとったら承知せーへんで?」

「本当ですよ。今まで嘘の情報を送ったことないでしょう? 確信度が高い情報しかミツバさんには送ってません」

「……まぁ、そうか。それやったらええわ。電話かけてすまんな。ほな、切るで」

 ピッ。

 (……まぁ本人に聞けばええか。嘘ついとる感じもないし)

 そうして部屋を出るミツバ。

 

 一方、いつもの事務速度で魔石を処理していくリアン。すぐさま勘定を終える。

「……そうですね。6000万ヴァルでいかがでしょう」

「それでいいわ」

 即決。そもそもヒナタは金につられてミツバと契約を結んだわけではないため、大したこだわりは無いのだ。元々が大金であるのだから、わざわざごねる必要もない。そのままギルドカードをリアンに渡して換金作業を終える。

「どうぞ」

「ん、ありがとう」

 受け取ったギルドカードをポケットに入れる。どうやら大金を稼ぐ感覚にも慣れてきたようだ。ふとモニターを眺めるヒナタ。ミツバが開いていた画像を思い出して、ブルッと身震いをする。

「流石に、あなたに手を出す気は無いと思いますよ」

 そう耳元で呟くリアン。ビクッとなるヒナタ。リアンは笑って言う。

「仕事と遊びの分別くらいは付いてるはずです」

「ならいいけど……」

 『はず』という言葉を使っている辺り、リアンであれミツバを信用し切れてはいないのではないか、と突っ込みたくなったヒナタであるが、流石に関係性も無いので黙っておく。ガチャ、と扉を開く音。どうやらミツバが戻ってきたらしい。

「お待たせ〜」

 リアンとヒナタの間に流れる妙な空気感。これは何かしたな。商人としての勘がビビッと働く。ミツバはリアンに近付いて小声で言う。

「ちょっと。私がおらん間に何か悪いこと吹き込んだんちゃうやろうな?」

「いいえ。ミツバさんは仕事と遊びの分別がつく素晴らしい方だと説明しておりました」

「そ、そうか。ならええわ」

 どうせ深掘りしても墓穴を掘るだけだと諦めて、ミツバはそそくさと席に座る。今回に関しては、仕事室でおかず探しをしていた自分が全面的に悪いのだ。会話を進めてもこちらが不利になるだけだ。席に座ったミツバは、とりあえず本題の方を進めようと単刀直入に聞く。

「ヒナタちゃん、今レベルいくつや?」

 そう言ってお茶を飲むミツバ。

「200よ」

「ブフーーーッ! ゴホッ、ゴホッ! に、200!?」

 含んだお茶を全て吐き出す。普通のシーカーなら年単位の時間がかかってもおかしく無い水準だ。あまりの想定外に、本来知らないはずの情報も口に出してしまうミツバ。

「あんた前の時151やったんちゃうの!?」

「そうだけど?」

「そうだけど? じゃないやろ! 異常事態も異常事態やんか。なんでそんな一気にレベルが上がったんや? それもスキルか?」

「さぁ? 元からレベルは早く上がるタイプだったけど。最近それが激しくなってきたから、何かのスキルが原因だとは思うけど」

 どこか誇らしくするヒナタ。少しずつ自分の異常性を理解し始めたらしい。急速なレベルアップについては実際の所キューネも関係しているが、それについては黙っておく。面倒ごとの予感しかしないためだ。ミツバは部屋の棚から何かを取り出して、机の上に置く。

「まぁ一旦ええわ。とりあえずステータス見させて頂戴」

 機械を覗き込むヒナタ。随分と小型だ。

「ちゃっちいわね。本当にこれでステータスが測れるの?」

「ギルドのが旧式やから馬鹿でかいだけで、こっちが新式や。ほら、早よ測り」

 あまりの見たさに珍しく人を急かすミツバ。ヒナタは機械の上に手を置き、唱える。

 (ステータスオープン)

【レベル】 200

 

【スキル】 【夢】【変速(Ⅰ)】【変速(Ⅱ)】【優待者】【精霊使い】

      【誓約使徒〈エインヘリヤル〉】

 

【魔法】  【光魔法】【魔法障壁】【回復魔法】

 表示されたヒナタのステータス。ミツバは機械を手に持って震える。

「はぁ!? なんやこのステータス!? こんなんまるで……」

 (怪獣やんけ)

 ミツバが驚いたのはレベルだけでは無い。ありえないほどの魔法とスキルの数。そしてネームドスキル。どれか一つだけでも凄まじい要素を、この化け物は複数持ち合わせているのだ。怪獣という言葉は、まさにヒナタを示すのに相応しい言葉だろう。

「凄いでしょ? ここまで来るのに結構苦労したんだから。えっへん」

「凄いでしょじゃ済まされへんレベルやけどな、これは……」

 なるほど。この数の魔法とスキルがあれば、ヒナタの無理無茶無謀なレベルアップの速度も説明が付くのかもしれない。しかし、そもそもどうやってこれほどのスキルと魔法を獲得したのだろうか? 分からない。

「スキルと魔法は何でゲットしたんや?」

「ダンジョンに籠りまくってるからね。宝箱を見つける機会も多いの。それでよ」

「あ〜……なるほどな」

「そういうことよ。うふん」

 (たまたま運よく激強スキルか魔法をゲットしてからの急成長タイプか。それなら一万歩譲ったらギリギリ理解できるわ)

 とりあえず1番初めに手に入れた何かが超強力で、それを元にダンジョン攻略を進めて、運も良かったためここまでの化け物が誕生した。そう納得するミツバ。

 (まぁどっちゃにしろ逸材は逸材や。さて、後はどう活かしたものか……)

「ヒナタちゃん、『踏破型ダンジョン』って興味あるか?」

「踏破型ダンジョン? 何それ、初めて聞いたわ」

「今までヒナタちゃんが行ってたオルガみたいなタイプのダンジョンは『養殖型ダンジョン』て言うてな、攻略した後も残るタイプのダンジョンや。でも、一回踏破されたらもう2度と入ることが出来へんダンジョンもあるねん。それが踏破型ダンジョンや」

「へ〜……でも、踏破されてるのならもう私は参加できないじゃない」

「もちろん今はほとんどが踏破されたんやけど、それでも一部のダンジョンは未踏破のまま残っとる事もある。レベル制限なんかがあるダンジョンやと特にその傾向は強い。そうやな、今のヒナタちゃんのレベルなら……オルフィアのとこのダンジョンがあったはずや。確かレベル制限は200以下。ちょうどヒナタちゃんにピッタリのダンジョンや。どうや? 行かへんか?」

「そうね……確かにちょうどオルガをクリアして暇になってた所だったし、行ってみようかしら」

「おっけ。決まりや。ほなまた日程とかは情報端末で送るから。それまでゆっくりしとき。あ、あとレベルは上げたらあかんで? レベルが一個でも上がったら参加出来んくなるからな。きーつけや。装備はまたうちの提携店も紹介するし。まーそんなとこか。何か言い忘れてた事あったら情報端末でそれも送るわ。ほなまたな」

「分かったわ。それじゃあまたね」

 そうして部屋から出ていくヒナタ。それを見届けたミツバは、早速デスクについて日程調整を始める。

「オルフィアの所言うたら、確か3日後開催やったよな?」

「はい。それで合ってます」

「ちょっと調べてみるか……お! めっちゃ盛り上がってるやん」

 オルフィアの踏破型ダンジョンは地上に魔物が彷徨いている地域であり、近付くだけでも危険なのだ。そのため、幾つかのクランが合同で力を合わせて参加日を決定し、その期間内であれば他の高レベルシーカーによる間引きにより、安全にダンジョンに挑めるという仕組みだ。

「レベル制限付きのダンジョンで、ですか? 珍しいですね」

「『月華双極』のカイゼルが参加してるから、ランキングが更新されるんちゃうか言うてメディア含めて大盛り上がりや」

 月華双極とは勢いのある若いシーカーを集めたクランで、カイゼルはその筆頭だ。踏破型ダンジョンにはランキング掲示板も付いており、誰が何階層まで行ったかは上位100位以内なら見れるようになっているのだ。そのため、もしもクランのメンバーが1人でもランキングに食い込む、もしくは上位に入り込むなんて事があれば、一気にそのクランは活気付き、覇権クランへの切符を手にする事になる。

「月華双極のカイゼル…………次世代のグラウスと言われるあのカイゼルですか?」

「そのカイゼルや。まぁ次世代のグラウスっていうのは箔をつけるために言っただけやろうから多少誇張しとるやろうけど、それでも将来有望な事には違いない。だからこそ皆んな注目してる。他のクランの連中も多分夢中になっとるはずや。そこにうちのヒナタちゃんを放り込む。今日までならまだ申し込みも間に合うし。あ〜、クランも創設せなあかんし、やる事だらけやな」

「全部自分で蒔いた種ですけどね」

「しゃーないやろ。こんないいビジネスチャンスが転がってるって言うのに、逃すわけにはいかん。というわけで、今日も徹夜で頑張るでリアンちゃん」

 そうして徹夜作業を始めた2人であった。

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