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復帰戦

33

ダンジョンに向けた護送車に乗るヒナタ。ギャングと共謀しているのではないかというギルドからの疑いが晴れたため、今日からいつものシーカー稼業を復活するようだ。その腕には護送車に乗る前にフリッジマーケットで買った衝撃吸収用の腕輪を着けている。ワーム戦といい、ソーマ戦といい、ヒナタはこの腕輪に何度も助けられたため、もはや験担ぎとでも言わんばかりで購入を悩むことは無かった。そうしてヒナタはいつものようにガラガラの車内を眺めながら言う。

 (今日は下層に潜るのよね?)

 (うん。ヒナタのレベルだともう中層じゃ大した経験値は期待できないからね。)

 (まだ中層の魔物にも慣れてないわよ?頭がこんがらがりそう。)

 (その分ヒナタが早く成長してるって事なんだから、いい事だよ。)

 (まぁ、それもそうね。)

 ヒナタの悩みはある意味贅沢な悩みだ。ありえない速度でレベルアップを遂げているおかげで、今の魔物に慣れる前に次々と新たな魔物の適正レベルに到達していると言う事なのだから。数年単位で狩り場を変えるシーカーもいると分かれば、その異常性も際立つだろうが、孤立的にシーカー活動をしているヒナタはそういう情報を耳に入れる機会もない。だからこそこの非常識モンスターが生まれているわけだが。そしてヒナタはどうやら睡眠不足らしい。欠伸をしており、目も虚ろだ。

 (ちょっとちょっと、今寝てもすぐ起きないとダメだよ?分かったら起きて。)

 (ちょっと寝れるならいいじゃない。)

 (ヒナタはちょっとじゃ起きないから言ってるの。ほら、分かったらこの曲がった首を上げて)

 そう言ってヒナタの首を小さな手で何とか押し出して真っ直ぐにするキューネ。ヒナタの寝起きの悪さはよく理解しているので、絶対に寝かせまいとせかせか動いている。

 (うーん……分かったわよ。)

 目は瞑ったままだが、体勢を元に戻したヒナタ。どうやら起きたままでいることに決めたらしい。キューネの努力も功を奏したようだ。キューネはそれを見て安堵しつつも、日々のヒナタを起こす苦労からため息を零す。

 (夜更かししてニュース見たらこうなるって分かってるんだから、もう少し早く寝ればいいのに……はぁ。)

 悪口は聞き逃さないヒナタ。目を少し開けて言う。

 (うるさいわね。大体あんたが魔物の勉強だーって私を昨日早く寝かさなかったことに問題があるのよ。)

 (僕がそうしなくてもヒナタいつも夜更かししてるでしょ?それに、新しい階層に行くのに魔物の勉強はしないと危ないんだから、多少時間がかかるのは仕方がないって思ってくれないと。)

 分が悪いと感じたヒナタは少し間を置いて、もう一度目を閉じて言う。

 (あーはいはい。分かったわよ。私が悪かったわよ。とりあえず目を瞑ってなるべく体力を回復するから。もう喋りかけないでちょうだい。)

 そうしてキューネはヒナタが寝ないかを監視しながらヒナタの肩にポツンと座るのだった。キューネから見たヒナタの信用のなさが窺われる。

 ヒナタが再び目蓋を閉じて数分後、車がダンジョン付近の魔物が少ない地域に着いたので、降車するヒナタ。もはや見慣れたダンジョン付近の景色を眺めながらダンジョンへと向かう。車は魔物が寄ってくるからとすぐさま走り出してしまうので、この場にはもうヒナタ達しか残っていない。もはや気配を消す魔法を使わなくてもヒナタ達に向かってくる魔物も少なくなって来た。ここら辺の地上の魔物では全くもってヒナタの相手にはならないだろう。それを魔物達も本能的に察してわざわざ自ら先制攻撃をしようとは思わないのだ。少しヒナタに目を向けたとしても、大抵の魔物はまた地上に目を戻し徘徊を続ける。人間を殺すと言う本能と生存本能の鬩ぎ合いが感じられるその光景を眺めながらヒナタはダンジョンへと向かっていく。

 (昔の私なら噛み殺しに来てそうね。)

 (そんな馬鹿な事をする魔物のほとんどはもう死んじゃってるだろうね。)

 (現金な奴らね。不思議と悪い気分はしないけど。)

 人によって態度を変える事を嫌うヒナタだが、今回に関しては不思議と不愉快には思わなかったらしい。きっと自身が強くなったという実感とそれによって生まれた心の余裕が強く影響を与えているだろう。なにせ、今回に関してはヒナタは得をした側だ。ダンジョンに向かうたびにヒナタを見つけた魔物がこちらを噛み殺しに来ては無駄に体力を消耗させられるし、気配を消す魔法を使うにもキューネの魔力を浪費してしまう。魔物が襲ってこないのであれば、それはヒナタにとっては結構な事なのだ。

 いつものように魔物と接触しないように上層を通り抜けていくヒナタ。ただただ歩くだけで退屈そうにしている。それを見たキューネはヒナタに提案してみる。

 (レーザーアイの変異体がいたけど、倒す?大した経験値にはならないだろうけど。)

 (うーん……まぁ、どうせいるなら行きましょうか。準備運動にもなるし。)

 なんて言うが、準備運動と言っているのは建前であり、ただ退屈であっただけだ。それと、レーザーアイの変異体を一度見ておきたいという知的好奇心である。変異体はすべて見た目が通常の魔物と異なっているので、レーザーアイならどうなるのであろうと、純粋に気になったのだ。

 (ほいほい了解。そんじゃこっちだね。)

 そう言ってスー、っと進行方向を変えて進んでいくキューネ。ヒナタはキューネの後ろにベッタリついて、足早に進んでいく。どうやら期待に胸を膨らませているらしい。ある程度進んだ頃、キューネは急停止して人差し指を次の通路に向けて指す。

 (この先。)

 (了解。私1人でも行けるわよね?)

 (うん、余裕。でも油断して変に怪我しないようにね。)

 (分かってるわよ。それじゃあ行くわ。)

 そう言って通路から飛び出すヒナタ。もはやスキルを使うこともない。無駄使いにしかならないからだ。そうしてヒナタはレーザーアイを目視して言う。

 (うわ、キモ。)

 レーザーアイは目しかないためただでさえ気持ち悪い。それに加え、今回は眼球が赤く染まり、通常個体より血管が浮き彫りになっている。誰が見てもヒナタと同じ反応をするだろう。通常個体を見慣れていても、その外見の気持ち悪さが慣れを凌駕して目に訴えてくる。レーザーアイはヒナタに向けて光線を溜めている。どうやら予備動作は通常個体と変わらないらしい。しかし、溜め時間は通常個体より早いらしく、ヒナタがレーザーアイに辿り着く前に、一度ヒナタに光線を放つことには成功したようだ。しかし、レーザーアイはお手の物であるヒナタにとってそれを避けるのはあまりにも容易すぎる。余裕綽々とレーザーアイの光線をよけて距離を詰める。そしてその眼球に剣が突き立てられる。もはや変異体の威厳は感じられない。致命傷を受けたレーザーアイは魔石となって地面に転がる。

「ま、余裕ね。」

「変異体でも上層ならこんなもんだね。」

「いい気晴らしにはなったわ。さっさと下に降りていくわよ。」

「レッツゴー。」

 そうして中層にまでやって来たヒナタ。どうやら準備運動の続きをしていたらしい。スカルナイトの魔石が地面に転がっている。

「ま、余裕ね。」

「余裕だね〜。」

 中層の魔物は変異体を含めても討伐推奨レベルは90より低い。通常個体なら尚更だ。通常個体を倒すだけであれば、今のヒナタのレベルなら自力でそこまで苦労することなく倒せて当然なのだ。また少し退屈そうな様子を浮かべるヒナタ。キューネは探知の魔法を使った後ヒナタに言う。

「下の階層に変異体のスカルナイトがいるけど、どうする?」

「え?ほんとに?行く行く。行くに決まってるじゃない。」

 声を高くするヒナタ。どうやら相当に嬉しいらしい。その様子を見たキューネも少し嬉しく思いながら、変異体までの道案内を始める。

「こっちこっち。いくよ。」

 そうして変異体スカルナイトがいる通路の前まで案内をするキューネ。ヒナタもその変異体独特の威圧感から変異体の存在を目視せずとも理解する。

 (魔法、準備よろしく。)

 (寄ってきた魔物の対処お願いね。)

 (任せなさい。流れ弾一つ残さないわよ。)

 そうしてキューネが詠唱を始めて数十秒後、魔力の高まりを感じた魔物達がこちらに向かって急接近してくる。そしてそれは変異体も然りだ。ヒナタは1番早く寄ってきたレッドスパイダーの腹を剣で両断した後、変異体の対処に向かう。変異体を目視したヒナタ。相変わらずヒナタの3倍くらいの高さはありそうだ。しかし、以前のような威圧感は感じられない。ヒナタのレベルが既に変異体のスカルナイトの討伐推奨レベルに達していることが大きいだろう。変な緊張感を持つこともない。1人でも倒せる相手なのだ。実際、何度も攻撃できそうな隙を見つけている。しかし、今回はキューネの魔法が完成すれば一掃できるので、とりあえず防戦一方を演じているようだ。スキルを使っている様子もない。ただ淡々と、己のフィジカルのみでスカルナイトの剣を受け止める。いくばくかの魔物は戦闘の合間を狙って襲ってくるが、足で蹴れば十分戦闘不能にできる。意識を必要以上に向ける必要もない。そうして戦闘を続けて数十秒、キューネの光魔法が全てを包み込む。光の濁流は辺り一帯の魔物を飲み込み、魔物は魔石と成る。光が消える。残った残党もすべてヒナタが蹴散らしたようだ。ヒナタの周囲から魔物は一切消え、魔石のみが残っている。全ての魔物を倒した事を確認したヒナタは言う。

「ふ、余裕ね。」

「余裕じゃないでしょ。すぐ調子に乗るんだから。」

「スキルを使わずに倒したんだから十分余裕よ。さっさと魔石を集めちゃうわよ。こんなんでも、そこそこ高いんだからね。」

 中層の魔物をこんなん、と表現するヒナタ。以前であれば出なかった言葉であろう。その言いぶりからは成長を感じさせられる。

「そんじゃ、もっと下に潜るわよ。」

「ほいほい〜。こっちこっち。」

 そう言って更に下の階層に向かう2人であった。33

ダンジョンに向けた護送車に乗るヒナタ。ギャングと共謀しているのではないかというギルドからの疑いが晴れたため、今日からいつものシーカー稼業を復活するようだ。その腕には護送車に乗る前にフリッジマーケットで買った衝撃吸収用の腕輪を着けている。ワーム戦といい、ソーマ戦といい、ヒナタはこの腕輪に何度も助けられたため、もはや験担ぎとでも言わんばかりで購入を悩むことは無かった。そうしてヒナタはいつものようにガラガラの車内を眺めながら言う。

 (今日は下層に潜るのよね?)

 (うん。ヒナタのレベルだともう中層じゃ大した経験値は期待できないからね。)

 (まだ中層の魔物にも慣れてないわよ?頭がこんがらがりそう。)

 (その分ヒナタが早く成長してるって事なんだから、いい事だよ。)

 (まぁ、それもそうね。)

 ヒナタの悩みはある意味贅沢な悩みだ。ありえない速度でレベルアップを遂げているおかげで、今の魔物に慣れる前に次々と新たな魔物の適正レベルに到達していると言う事なのだから。数年単位で狩り場を変えるシーカーもいると分かれば、その異常性も際立つだろうが、孤立的にシーカー活動をしているヒナタはそういう情報を耳に入れる機会もない。だからこそこの非常識モンスターが生まれているわけだが。そしてヒナタはどうやら睡眠不足らしい。欠伸をしており、目も虚ろだ。

 (ちょっとちょっと、今寝てもすぐ起きないとダメだよ?分かったら起きて。)

 (ちょっと寝れるならいいじゃない。)

 (ヒナタはちょっとじゃ起きないから言ってるの。ほら、分かったらこの曲がった首を上げて)

 そう言ってヒナタの首を小さな手で何とか押し出して真っ直ぐにするキューネ。ヒナタの寝起きの悪さはよく理解しているので、絶対に寝かせまいとせかせか動いている。

 (うーん……分かったわよ。)

 目は瞑ったままだが、体勢を元に戻したヒナタ。どうやら起きたままでいることに決めたらしい。キューネの努力も功を奏したようだ。キューネはそれを見て安堵しつつも、日々のヒナタを起こす苦労からため息を零す。

 (夜更かししてニュース見たらこうなるって分かってるんだから、もう少し早く寝ればいいのに……はぁ。)

 悪口は聞き逃さないヒナタ。目を少し開けて言う。

 (うるさいわね。大体あんたが魔物の勉強だーって私を昨日早く寝かさなかったことに問題があるのよ。)

 (僕がそうしなくてもヒナタいつも夜更かししてるでしょ?それに、新しい階層に行くのに魔物の勉強はしないと危ないんだから、多少時間がかかるのは仕方がないって思ってくれないと。)

 分が悪いと感じたヒナタは少し間を置いて、もう一度目を閉じて言う。

 (あーはいはい。分かったわよ。私が悪かったわよ。とりあえず目を瞑ってなるべく体力を回復するから。もう喋りかけないでちょうだい。)

 そうしてキューネはヒナタが寝ないかを監視しながらヒナタの肩にポツンと座るのだった。キューネから見たヒナタの信用のなさが窺われる。

 ヒナタが再び目蓋を閉じて数分後、車がダンジョン付近の魔物が少ない地域に着いたので、降車するヒナタ。もはや見慣れたダンジョン付近の景色を眺めながらダンジョンへと向かう。車は魔物が寄ってくるからとすぐさま走り出してしまうので、この場にはもうヒナタ達しか残っていない。もはや気配を消す魔法を使わなくてもヒナタ達に向かってくる魔物も少なくなって来た。ここら辺の地上の魔物では全くもってヒナタの相手にはならないだろう。それを魔物達も本能的に察してわざわざ自ら先制攻撃をしようとは思わないのだ。少しヒナタに目を向けたとしても、大抵の魔物はまた地上に目を戻し徘徊を続ける。人間を殺すと言う本能と生存本能の鬩ぎ合いが感じられるその光景を眺めながらヒナタはダンジョンへと向かっていく。

 (昔の私なら噛み殺しに来てそうね。)

 (そんな馬鹿な事をする魔物のほとんどはもう死んじゃってるだろうね。)

 (現金な奴らね。不思議と悪い気分はしないけど。)

 人によって態度を変える事を嫌うヒナタだが、今回に関しては不思議と不愉快には思わなかったらしい。きっと自身が強くなったという実感とそれによって生まれた心の余裕が強く影響を与えているだろう。なにせ、今回に関してはヒナタは得をした側だ。ダンジョンに向かうたびにヒナタを見つけた魔物がこちらを噛み殺しに来ては無駄に体力を消耗させられるし、気配を消す魔法を使うにもキューネの魔力を浪費してしまう。魔物が襲ってこないのであれば、それはヒナタにとっては結構な事なのだ。

 いつものように魔物と接触しないように上層を通り抜けていくヒナタ。ただただ歩くだけで退屈そうにしている。それを見たキューネはヒナタに提案してみる。

 (レーザーアイの変異体がいたけど、倒す?大した経験値にはならないだろうけど。)

 (うーん……まぁ、どうせいるなら行きましょうか。準備運動にもなるし。)

 なんて言うが、準備運動と言っているのは建前であり、ただ退屈であっただけだ。それと、レーザーアイの変異体を一度見ておきたいという知的好奇心である。変異体はすべて見た目が通常の魔物と異なっているので、レーザーアイならどうなるのであろうと、純粋に気になったのだ。

 (ほいほい了解。そんじゃこっちだね。)

 そう言ってスー、っと進行方向を変えて進んでいくキューネ。ヒナタはキューネの後ろにベッタリついて、足早に進んでいく。どうやら期待に胸を膨らませているらしい。ある程度進んだ頃、キューネは急停止して人差し指を次の通路に向けて指す。

 (この先。)

 (了解。私1人でも行けるわよね?)

 (うん、余裕。でも油断して変に怪我しないようにね。)

 (分かってるわよ。それじゃあ行くわ。)

 そう言って通路から飛び出すヒナタ。もはやスキルを使うこともない。無駄使いにしかならないからだ。そうしてヒナタはレーザーアイを目視して言う。

 (うわ、キモ。)

 レーザーアイは目しかないためただでさえ気持ち悪い。それに加え、今回は眼球が赤く染まり、通常個体より血管が浮き彫りになっている。誰が見てもヒナタと同じ反応をするだろう。通常個体を見慣れていても、その外見の気持ち悪さが慣れを凌駕して目に訴えてくる。レーザーアイはヒナタに向けて光線を溜めている。どうやら予備動作は通常個体と変わらないらしい。しかし、溜め時間は通常個体より早いらしく、ヒナタがレーザーアイに辿り着く前に、一度ヒナタに光線を放つことには成功したようだ。しかし、レーザーアイはお手の物であるヒナタにとってそれを避けるのはあまりにも容易すぎる。余裕綽々とレーザーアイの光線をよけて距離を詰める。そしてその眼球に剣が突き立てられる。もはや変異体の威厳は感じられない。致命傷を受けたレーザーアイは魔石となって地面に転がる。

「ま、余裕ね。」

「変異体でも上層ならこんなもんだね。」

「いい気晴らしにはなったわ。さっさと下に降りていくわよ。」

「レッツゴー。」

 そうして中層にまでやって来たヒナタ。どうやら準備運動の続きをしていたらしい。スカルナイトの魔石が地面に転がっている。

「ま、余裕ね。」

「余裕だね〜。」

 中層の魔物は変異体を含めても討伐推奨レベルは90より低い。通常個体なら尚更だ。通常個体を倒すだけであれば、今のヒナタのレベルなら自力でそこまで苦労することなく倒せて当然なのだ。また少し退屈そうな様子を浮かべるヒナタ。キューネは探知の魔法を使った後ヒナタに言う。

「下の階層に変異体のスカルナイトがいるけど、どうする?」

「え?ほんとに?行く行く。行くに決まってるじゃない。」

 声を高くするヒナタ。どうやら相当に嬉しいらしい。その様子を見たキューネも少し嬉しく思いながら、変異体までの道案内を始める。

「こっちこっち。いくよ。」

 そうして変異体スカルナイトがいる通路の前まで案内をするキューネ。ヒナタもその変異体独特の威圧感から変異体の存在を目視せずとも理解する。

 (魔法、準備よろしく。)

 (寄ってきた魔物の対処お願いね。)

 (任せなさい。流れ弾一つ残さないわよ。)

 そうしてキューネが詠唱を始めて数十秒後、魔力の高まりを感じた魔物達がこちらに向かって急接近してくる。そしてそれは変異体も然りだ。ヒナタは1番早く寄ってきたレッドスパイダーの腹を剣で両断した後、変異体の対処に向かう。変異体を目視したヒナタ。相変わらずヒナタの3倍くらいの高さはありそうだ。しかし、以前のような威圧感は感じられない。ヒナタのレベルが既に変異体のスカルナイトの討伐推奨レベルに達していることが大きいだろう。変な緊張感を持つこともない。1人でも倒せる相手なのだ。実際、何度も攻撃できそうな隙を見つけている。しかし、今回はキューネの魔法が完成すれば一掃できるので、とりあえず防戦一方を演じているようだ。スキルを使っている様子もない。ただ淡々と、己のフィジカルのみでスカルナイトの剣を受け止める。いくばくかの魔物は戦闘の合間を狙って襲ってくるが、足で蹴れば十分戦闘不能にできる。意識を必要以上に向ける必要もない。そうして戦闘を続けて数十秒、キューネの光魔法が全てを包み込む。光の濁流は辺り一帯の魔物を飲み込み、魔物は魔石と成る。光が消える。残った残党もすべてヒナタが蹴散らしたようだ。ヒナタの周囲から魔物は一切消え、魔石のみが残っている。全ての魔物を倒した事を確認したヒナタは言う。

「ふ、余裕ね。」

「余裕じゃないでしょ。すぐ調子に乗るんだから。」

「スキルを使わずに倒したんだから十分余裕よ。さっさと魔石を集めちゃうわよ。こんなんでも、そこそこ高いんだからね。」

 中層の魔物をこんなん、と表現するヒナタ。以前であれば出なかった言葉であろう。その言いぶりからは成長を感じさせられる。

「そんじゃ、もっと下に潜るわよ。」

「ほいほい〜。こっちこっち。」

 そう言って更に下の階層に向かう2人であった。

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