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病院

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隻眼のソーマと戦い意識を失ったヒナタ。うっすらと目を開ける。

「……んん……ここは……?」

「病院の中だ。一日中眠ってたぞ。今回も派手にやったみたいだな」

 声のする方向を向く。ミナトがいるようだ。どうやら日付が変わってしまったらしい。

「病院……あ!」

 大声を上げるヒナタ。色々と思い出したようだ。

「あんまり大声出すなよ。他にも患者がいるんだぞ」

「ああ、そうね。ごめんなさい……ところで、なんであんたがこんな所にいるのよ? わざわざ私のお見舞いに来るほど律儀だったかしら?」

「お前の為だけじゃない。ギャング制圧でそこそこの数のシーカーに被害が出たからな。そいつらのお見舞いも兼ねてだよ」

「あー、そういうこと……って、ポルカとワドンは? 大丈夫なの?」

「ポルカとワドン……ああ、お前と一緒にギャング制圧に行ってた奴らか。一応生きてはいるぞ。重傷だからまだベッドの中だけどな」

「そう。良かったわ」

 安堵の表情を浮かべるヒナタ。ミナトは座って言う。

「それにしてもお前らは災難だったな。零番街の連中と出くわすなんて」

「零番街?」

 聞きなれない単語に声を高くするヒナタ。

「お前が出会ったテロリストが所属してるテロ組織名だよ。覚えてないのか?」

「ああ、あの包帯男の事?」

「そうだ。ここら辺では最大級のテロ組織だな。お前が会った隻眼のソーマもその組員の1人だ」

 隻眼のソーマが組員の1人と聞いたヒナタは顔をしかめる。

「えぇ、あんなのがうじゃうじゃいる犯罪組織? 都市がさっさと取り締まっちゃいなさいよ」

「一応取り締まりはしてるんだけどな。それぞれの組員が強くて逃げ足が速いせいで、大した成果は上がってないんだよ。グラウスが来てくれて良かったな」

「グラウス……ああ、あのキザっぽい男のこと?」

「キザっぽい男……世界最強をそんな呼び方するのなんて、お前が初めてだよ」

「世界最強……あぁ、なんか包帯男もそんなこと言ってたわね。大層な名前付けて皮肉でも言ってるのかと思ったけど、事実だったの?」

「あぁ、事実だ。一応ギルドに登録されてる中だと最高レベルだからな」

「具体的には幾つなのよ?」

「721だな」

 ちょっと引いたような様相のヒナタ。

「怪獣じゃない……道理であんな馬鹿げた火力が出るわけだわ」

「5大ギルド鉄血同盟の盟主だからな。実績も他のシーカーと比べて抜きん出ている。中には英雄って呼んでる奴もいるくらいにはな」

「そっちも随分大層な名前ね」

「英雄の方はスキル由来らしいぞ。そういう名前のスキルを持ってるのにちなんで付けられた二つ名らしい」

「あいつ英雄なんてスキル持ってるの? どこの漫画の主人公よ?」

「まぁそれに相応しいくらいには実績と実力があるからな。神様にでも認められたんじゃねぇか?」

「そう……世の中って不公平だわ。はぁ」

 (お前も十分怪獣なんだがな)

 そう思いつつミナトは情報端末を開く。

「それで、明日も何か依頼受けるか?」

「都市のご機嫌とりは終わったんじゃなかったの?」

「ちげぇよ。お前の体調が良いなら、明日の依頼の申請を今日中に済ませちまおうかっていう話だ」

「ああ、そういうこと。ならそうねぇ〜」

 (ダンジョンかしら?)

 (ダンジョンだね)

「ダンジョンに潜るわ」

「お前は本当にダンジョンが好きだな。まぁ今更都市が口を出してくる事もないだろうから別に構わんが」

 今回のギャング制圧依頼でしっかりとした成果を挙げたヒナタ。どうやら都市の疑いの目も晴れたらしい。

「結局あそこが1番経験値を稼ぎやすいからね。下に潜れば嫌でも強いモンスターがいるし。わざわざ地上みたいに強いモンスターを探して歩き回ることが無いもの」

「普通は地上で安全に狩りをする方が好まれるんだけどな。お前くらいの物好きじゃないとダンジョンに行こうなんてならない」

「って言ってもよ。あんなワームやら変異体やらがそこら辺に転がってる地上も十分に危ないでしょ? 私からしてみれば、階層順に敵が強くなっていくダンジョンの方が良心的に思えるわね」

 ヒナタの意見も真っ当に思われる。確かに地上は人が多く、いざという時に助けを求めやすい環境にあるのは確かだが、生息域から離れて強いモンスターがうろちょろ徘徊しているのであれば、それはダンジョンよりも危険であろう。ダンジョンにも変異体は出るが、一応通常のモンスターはある程度強さ順に並べられており、急に強いモンスターが現れたなどという事もない。ミナトは腕を組んで言う。

「今まではそんな事なかったんだけどな。変異体や北害の発生率が上がったのもつい最近の話だ。それまでは地上も割と平和だったんだよ。でもそうだな……確かにこれ以上変異体や北害の発生率が増えれば、またダンジョンに人が戻るかもしれないな」

「そうなる事に期待しておきましょう」

 情報端末を操作するミナト。どうやらヒナタがダンジョン行きの護送車に乗れるよう申請を通しているところらしい。

「よし、申請通ったぞ。また情報端末から送っとくから確認しといてくれ。あ……あとこれも渡しとかないとな……ほら100万ヴァルだ」

 少し不満そうな顔を見せるヒナタ。

「あんだけの激戦を繰り広げてこれだけ?」

 今までであれば飛んで喜んだだろうが、シーカー稼業を続けるうちに金銭感覚が狂い始めているようだ。だが、確かに自身が命を賭けた対価としては少々少ないように感じるかもしれない。

「隻眼のソーマを捕まえていたら懸賞金もあるからもっと貰えてただろうが、交戦しただけだからな。追加報酬は無しだ。我慢してくれ」

「そう……それなら仕方ないわね」

「それじゃあ、またな」

「ええ、またね」

 そうして医者の診断を再度受けて帰宅を許可されたヒナタ。いつもの宿に戻ってベッドに転がり込む。

「あー、疲れた」

「お疲れさま〜」

「あれだけ頑張って100万だって。もうちょっと欲しいところだわ」

「まぁミナトの言う通り交戦しただけだからね。追加報酬を渡したくても支払ってくれる人がいないからどうしようもないんだと思うよ」

 間引き依頼やギャング制圧依頼なら都市が税金を使ってシーカーに報酬を支払おうとするだろうが、何せヒナタ達は隻眼のソーマと交戦しただけだ。これではやはり、お金を払おうとする人などいないので、ギルド側としても報酬をギャング制圧依頼の基本給以上に与えることが出来ないのである。

「ま、それもそうなんだけど。命懸けで戦ったからにはもう少し温情を加えて欲しいものだわ」

「確かにそれは本当だ。でもグラウスと隻眼のソーマの戦いは凄かったね? ヒナタもスキル解除せずに見てたでしょ?」

「えぇ、ほとんど何が起きてるか分からなかったけれど、私の目指すべき所は見えたわね」

「確かレベル721だったっけ?」

「ええ。つまりグラウスより早くレベル800にまでなれば私が最強よ」

 大言壮語もいい加減にしろ、と言いたい所だが、ヒナタがこのスピードで成長を続ければ、本当にいずれ可能になるかもしれない。それほどまでにヒナタのレベルアップの速度は速いのだ。

「まぁその為にはまずレベル100の壁を突破しないとだね。隻眼のソーマと戦ってどれくらいレベル上がったの?」

「うーん。ちょっと待ちなさい」

 キューネはヒナタの肩にちょこんと乗って座っている。

 【レベル】  85

 【スキル】  【夢】  【変速】

 【魔法】

「レベル85か。モンスターを倒さなくてもレベルって上がるのね?」

「でもモンスターを倒した方がやっぱり効率はいいね。それに、生計が立てられない」

「まぁそれもそうね。明日のダンジョンでレベル100になれるかしら?」

「うーん。無理と言いたい所だけど、もしかしたらいけちゃうかもね」

「じゃあいけるわね。明日は大冒険するわよ」

「あはは、お願いだから無理はしないでね」

 なんて乾いた笑いをするキューネ。そしてヒナタはまた眠りにつく。どうやら相当に疲れたらしい。もうぐっすり眠って起きる気配はない。

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