300万の使い道
29
変異体のオーガと戦い、剣と魔道具を再度失ったため、またもやフリッジマーケットの扉を開けるヒナタ。すると、カルラはいつもと変わらないお辞儀を見せてヒナタを出迎える。
「フリッジマーケットへようこそ。今日は何のご用事でしょうか。」
キューネは眼福だという表情でカルラの胸を見つめている。もはや隠そうとする気配すらない。そんなキューネを放っておいて、ヒナタは今日の用事を告げる。
「武器と魔道具を新調しに来たわ。予算は300万ヴァルよ。何かお勧めしてくれる?」
「さ、左様でございますか。少々お待ちください。」
(どういう予算の増え方よ……しかもこの腕の怪我、大丈夫かしら?)
なんて心の中で思うカルラであるが、金の卵であるヒナタには笑顔を向けたままだ。予算300万ヴァルに丁度いい武器と魔道具のセットをひたすら脳内検索してヒナタを案内する。
「こちらの剣などはいかがでしょう? この剣はミツバ商会の一品で、特に武器の耐久力に力を入れております。切れ味はこの価格帯の別の剣と比べ少々劣りますが、持ちの良さから一部のシーカーから大変な人気を得ております。」
いつも武器を壊して帰ってくる目の前の少女にとって、武器の耐久力が高いという情報は聞き逃せないに違いないと確信したカルラ。そしてどうやらその勘は当たったようだ。ヒナタは非常に興味深そうな顔でその剣を見つめている。
「へぇ……長持ちするの。それは良いわね。私、大体すぐに剣を壊しちゃうか、買い換えちゃうから、長持ちすることが少ないのよね。値段も50万ヴァルか、手頃ね。一個買おうかしら。」
50万ヴァルを手頃だと言うヒナタ。高価な武器に囲まれて少し金銭感覚がおかしくなってしまったようだ。高々と掲げられた1億ヴァルの剣などを見ると、どうしても50万ヴァルを手頃に感じてしまう。そんなカルラの商品戦略は上手くいったらしい。
「お買い上げいただきありがとうございます。魔道具はいかがしましょう?」
「それも全部失くしちゃったから買い換えたいわ。できたら前のより高性能なのを。種類は一緒で。」
「左様でございますか。それでしたら、腕輪は100万ヴァル、魔法瓶は50万ヴァルのものがございます。共に値段が張る分、性能は以前のものより遥かに高くなっております。いかがしましょう?」
「そうねぇ……じゃあ腕輪一つと魔法瓶三つを頂戴。今日はそんなところでいいわ。丁度予算だし。」
「かしこまりました。合計300万ヴァルとなります。」
「はい。」
そうして現金とギルドカードをカルラに渡すヒナタ。カルラはそれぞれの商品を商品棚から取り出して机に置く。
「あんがとね。」
「ご利用ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。」
そう言って深々お辞儀をする。キューネは生まれてきたことに感謝しながら、その黄金の光景を眺めるのであった。
フリッジマーケットでの300万ヴァルの買い物を済ませたヒナタ。宿に帰ってベッドでゴロゴロしているようだ。情報端末を眺めながらキューネと話す。
「そういえば結局ポーションは使わずじまいね。あれ賞味期限とかないの?」
「ポーションにそんなものないよ。よっぽどの期間放置してない限りは大丈夫。」
「ふーん。なら良いけど。」
そんなたわいのない会話をしていると、またもやミナトから情報端末に電話がかかってきたようだ。情報端末がプルル、と音を鳴らしながら揺れている。立ち上がったヒナタは情報端末を手に取り、耳元まで運んで応答する。
「何の用よ。」
「悪いがまた依頼の話だ。」
ミナトから依頼の話だと告げられて、明らかにテンションが下がるヒナタ。どうやらミナトから依頼について確認が来る時は、あまり良い依頼の時ではないらしいと学習したらしい。
「また新しい依頼を取ってきたの? そう何度もポンポン新しい依頼を受けられると困るのだけど。」
「まぁお前がそう言う気持ちも分かる。だが、今回だけはどうしても受けておきたい依頼を見つけてな。上手くいけばこれで都市へのご機嫌取りは終わって、自由に動けるようになるかもしれないぞ? それこそダンジョンを含めてな。」
「え、本当に?」
声の調子を上げるヒナタ。どうやら都市のご機嫌取りにはもうすっかり飽き飽きしていたらしい。
「あぁ、本当だよ。」
「ちなみにそれってどういう依頼?」
すると思い出したかのように言うミナト。
「あー……これはちなみに極秘依頼だ。その当日まではな。だから依頼についてちょっとでも聞いたのなら、半強制的にお前が依頼を受けることになる。それでも構わんか?」
「都市にワンワンする生活が終わるなら大概の依頼は受けてやるわよ。それで、どんな依頼よ?」
一つ咳払いをして話を続けるミナト。
「ゴホン。お前、今日ちょうど都市オルカに行っただろ?」
「ええ、行ったわね。」
「都市オルカでは『第一次フロンティア開発計画』ってのが進んでてな。まぁ簡単に言えば人口増加と食糧不足から城壁をもう一個追加しようって話だ。んで、その際にギャングが邪魔になってくるってこと。壁を建てたとしてもあいつらがそのまま内地に居座り続けたら、治安が悪くて誰も住もうとは思わないだろう?」
身に覚えがありすぎる単語に顔を顰めるヒナタ。
「そうね。すごく分かるわよ。」
「だから、都市の勧告にすぐ従わなかったギャング達を取り締まる必要があるってわけ。」
「それが私達ってこと?」
「まぁ簡単に言えばそういうことだ。そんでもって、お前がもしもギャングの取り締まりで活躍してくれたら、都市もお前をギャング達の仲間だとは思わなくなる。だから都市の心象稼ぎもこの依頼を無事遂行したら終えられる。」
ミナトの説明を聞いて感心した様子のヒナタ。
「なるほどね。よくそんな依頼見つけてきたわね。やるじゃない。」
笑って返答するミナト。
「だろ? 優秀なギルド職員に感謝するんだな。」
「はいはい。分かってるわよ。ありがと。」
「また今日のうちに詳しい依頼内容については送るから確認しといてくれ。」
「了解よ。それじゃあね。」
「ああ、またな。」
そうして通話を切るヒナタ。
「ようやく都市の心象稼ぎもこれで終わりみたいね。」
「これでダンジョンに行けるようになる。良かったねヒナタ。」
「本当ね。優秀なギルド職員に感謝しておきましょう。」
そうしてギャング制圧依頼を受諾したヒナタであった。29
変異体のオーガと戦い、剣と魔道具を再度失ったため、またもやフリッジマーケットの扉を開けるヒナタ。すると、カルラはいつもと変わらないお辞儀を見せてヒナタを出迎える。
「フリッジマーケットへようこそ。今日は何のご用事でしょうか。」
キューネは眼福だという表情でカルラの胸を見つめている。もはや隠そうとする気配すらない。そんなキューネを放っておいて、ヒナタは今日の用事を告げる。
「武器と魔道具を新調しに来たわ。予算は300万ヴァルよ。何かお勧めしてくれる?」
「さ、左様でございますか。少々お待ちください。」
(どういう予算の増え方よ……しかもこの腕の怪我、大丈夫かしら?)
なんて心の中で思うカルラであるが、金の卵であるヒナタには笑顔を向けたままだ。予算300万ヴァルに丁度いい武器と魔道具のセットをひたすら脳内検索してヒナタを案内する。
「こちらの剣などはいかがでしょう? この剣はミツバ商会の一品で、特に武器の耐久力に力を入れております。切れ味はこの価格帯の別の剣と比べ少々劣りますが、持ちの良さから一部のシーカーから大変な人気を得ております。」
いつも武器を壊して帰ってくる目の前の少女にとって、武器の耐久力が高いという情報は聞き逃せないに違いないと確信したカルラ。そしてどうやらその勘は当たったようだ。ヒナタは非常に興味深そうな顔でその剣を見つめている。
「へぇ……長持ちするの。それは良いわね。私、大体すぐに剣を壊しちゃうか、買い換えちゃうから、長持ちすることが少ないのよね。値段も50万ヴァルか、手頃ね。一個買おうかしら。」
50万ヴァルを手頃だと言うヒナタ。高価な武器に囲まれて少し金銭感覚がおかしくなってしまったようだ。高々と掲げられた1億ヴァルの剣などを見ると、どうしても50万ヴァルを手頃に感じてしまう。そんなカルラの商品戦略は上手くいったらしい。
「お買い上げいただきありがとうございます。魔道具はいかがしましょう?」
「それも全部失くしちゃったから買い換えたいわ。できたら前のより高性能なのを。種類は一緒で。」
「左様でございますか。それでしたら、腕輪は100万ヴァル、魔法瓶は50万ヴァルのものがございます。共に値段が張る分、性能は以前のものより遥かに高くなっております。いかがしましょう?」
「そうねぇ……じゃあ腕輪一つと魔法瓶三つを頂戴。今日はそんなところでいいわ。丁度予算だし。」
「かしこまりました。合計300万ヴァルとなります。」
「はい。」
そうして現金とギルドカードをカルラに渡すヒナタ。カルラはそれぞれの商品を商品棚から取り出して机に置く。
「あんがとね。」
「ご利用ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。」
そう言って深々お辞儀をする。キューネは生まれてきたことに感謝しながら、その黄金の光景を眺めるのであった。
フリッジマーケットでの300万ヴァルの買い物を済ませたヒナタ。宿に帰ってベッドでゴロゴロしているようだ。情報端末を眺めながらキューネと話す。
「そういえば結局ポーションは使わずじまいね。あれ賞味期限とかないの?」
「ポーションにそんなものないよ。よっぽどの期間放置してない限りは大丈夫。」
「ふーん。なら良いけど。」
そんなたわいのない会話をしていると、またもやミナトから情報端末に電話がかかってきたようだ。情報端末がプルル、と音を鳴らしながら揺れている。立ち上がったヒナタは情報端末を手に取り、耳元まで運んで応答する。
「何の用よ。」
「悪いがまた依頼の話だ。」
ミナトから依頼の話だと告げられて、明らかにテンションが下がるヒナタ。どうやらミナトから依頼について確認が来る時は、あまり良い依頼の時ではないらしいと学習したらしい。
「また新しい依頼を取ってきたの? そう何度もポンポン新しい依頼を受けられると困るのだけど。」
「まぁお前がそう言う気持ちも分かる。だが、今回だけはどうしても受けておきたい依頼を見つけてな。上手くいけばこれで都市へのご機嫌取りは終わって、自由に動けるようになるかもしれないぞ? それこそダンジョンを含めてな。」
「え、本当に?」
声の調子を上げるヒナタ。どうやら都市のご機嫌取りにはもうすっかり飽き飽きしていたらしい。
「あぁ、本当だよ。」
「ちなみにそれってどういう依頼?」
すると思い出したかのように言うミナト。
「あー……これはちなみに極秘依頼だ。その当日まではな。だから依頼についてちょっとでも聞いたのなら、半強制的にお前が依頼を受けることになる。それでも構わんか?」
「都市にワンワンする生活が終わるなら大概の依頼は受けてやるわよ。それで、どんな依頼よ?」
一つ咳払いをして話を続けるミナト。
「ゴホン。お前、今日ちょうど都市オルカに行っただろ?」
「ええ、行ったわね。」
「都市オルカでは『第一次フロンティア開発計画』ってのが進んでてな。まぁ簡単に言えば人口増加と食糧不足から城壁をもう一個追加しようって話だ。んで、その際にギャングが邪魔になってくるってこと。壁を建てたとしてもあいつらがそのまま内地に居座り続けたら、治安が悪くて誰も住もうとは思わないだろう?」
身に覚えがありすぎる単語に顔を顰めるヒナタ。
「そうね。すごく分かるわよ。」
「だから、都市の勧告にすぐ従わなかったギャング達を取り締まる必要があるってわけ。」
「それが私達ってこと?」
「まぁ簡単に言えばそういうことだ。そんでもって、お前がもしもギャングの取り締まりで活躍してくれたら、都市もお前をギャング達の仲間だとは思わなくなる。だから都市の心象稼ぎもこの依頼を無事遂行したら終えられる。」
ミナトの説明を聞いて感心した様子のヒナタ。
「なるほどね。よくそんな依頼見つけてきたわね。やるじゃない。」
笑って返答するミナト。
「だろ? 優秀なギルド職員に感謝するんだな。」
「はいはい。分かってるわよ。ありがと。」
「また今日のうちに詳しい依頼内容については送るから確認しといてくれ。」
「了解よ。それじゃあね。」
「ああ、またな。」
そうして通話を切るヒナタ。
「ようやく都市の心象稼ぎもこれで終わりみたいね。」
「これでダンジョンに行けるようになる。良かったねヒナタ。」
「本当ね。優秀なギルド職員に感謝しておきましょう。」
そうしてギャング制圧依頼を受諾したヒナタであった。




