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異様な成長速度

ギルドカードを使って城壁内に入ったヒナタ。とあることを思い出して立ち止まる。

 (そう言えば、城壁内のギルドってどこにあるの?)

 (あー、えーと、確かねー、うーんと、こっちだ。)

 そうすると怪しそうだという目でキューネを見つめるヒナタ。

 (ちょっと情報端末で調べてみるわ……あ、本当、あっちね。)

 (言った通りでしょ?もうちょっと僕を信じてよ。)

 (キューネは戦闘以外になると急にポンコツになるからね、念の為よ。)

 (ヒナタは戦闘外でもポンコツだけど……なんてねぇ、てっいて!もう、ヒナタ本当に周りから変な目でみられてるよ。)

 (あんたのせいでしょうが……)

 周りの目のお陰で弱い拳骨で済んだことにキューネは感謝をすべきである。ギルドの目の前についたヒナタ。

 (これね?城壁外のギルドより若干大きいかしら?)

 (あれは緊急用の簡易ギルドだろうからね。)

 (じゃあ、早速中に入ってみるわよ。)

 そうして2人はギルドの中に入る。またもや好奇の目で周りを見渡すと思われたヒナタだが、一度似たような光景を見た経験があるせいか想像以上に落ち着いているようだ。

 (えーと、今日は確かミナトが出勤してるわよね?)

 (そうだね、えーと、あ、あそこにいるよヒナタ)

 キューネの指の指す方向を見るとその先にはミナトがいる。そしてミナトもこちらを発見し目が合う。すると受付から出てきてこちらに向かってくる。

「よう。依頼を無事終えたそうだな。」

「え?なんで勝手に依頼のことを知ってるのよ。気持ち悪っ。」

「何が気持ち悪っだ。俺はお前の担当だからな。それくらいは把握してるさ。魔石の買取か?」

「そうよ。」

「それじゃあ、いつもの場所に移動するか。」

「いつもってまだ2回目でしょ。」

「俺にとってはいつもの場所なんだよ。」

 そう言っていつもの個室に移動して椅子に座るミナト。それを見たヒナタも椅子に座り込む。一応の仕切りが敷かれており、外から中の様子は見づらくなっているようだ。無論、無理やり覗き込むことは可能かもしれないがギルド内でそんなバカなことをしでかすような奴はいない。

「そんじゃあ依頼の定価で魔石を買い取ってやるから魔石を渡してくれ。」

「ふん。今回は驚いちゃうわよ。」

 そう言って魔石袋を渡すヒナタ。そしてその重量からちょっと袋の高度を下げた後自身の元へ魔石を持ち運ぶミナト。

「おー、確かにこりゃ豊作だな。」

 そうして魔石袋から魔石をトレイに移す。そしてその際に特段輝いている魔石を発見したミナト。

「お前これ……もしかして……」

「凄いでしょ?ウェアウルフの変異体よ。倒すのに苦労したんだからね。高値で買い取りなさいよ?」

「ウェアウルフの……変異体……?お前そんな大人数でパーティ組んだのか?どうしてその魔石をお前が持ってるんだよ。」

「パーティは組んでないわよ?即席の2人で倒したの。凄いでしょ?あーでも6個の普通の魔石以外は2人で倒したのものだから別勘定して頂戴。」

「ちょっと待て、ウェアウルフの変異体?それをお前ともう1人で?お前レベル8とかだったよな?流石に無理があるだろ。魔法を使うにしても限度ってんもんがあるだろう。」

「そう言われても、倒せたものは倒せたんだから仕方ないでしょ。まあ超強くて死にかけたのは確かだけど。別にいいじゃない。早く勘定してよ。私もう疲れてクタクタだから早く宿を取って寝たいの。」

 黙り込むミナト。推奨レベル50をレベル8ともう1人で倒す?意味が分からない。実際にあの時のヒナタのレベルは13だったがそれを知ったところで焼石に水が過ぎる。そしてミナトは一つのことを思いつく。

「ちょっと待ってろ。」

 そう言って半個室の空間から出ていくミナト。

 (どうしたのかしら?)

 (さあ?ちょっと高級な魔石にびっくりしてるんじゃないの?)

 (そういう感じではなかった気がするけれど。)

 シーカーをある程度知っているものであればミナトの動揺も納得であろう。レベルとは絶対的な基準であり、ヒナタの話が本当であるとするのならばあまりにもバランスブレイカーが過ぎる。これではギルドに登録されている推奨レベルの意味が無くなるのだ。確かにスキルでレベルの差を覆すことが可能だがそれでも限度がある。推奨レベル50をレベル1桁が倒すなど絶対にあってはならないのだ。しかし、ヒナタも聞いた相手が悪い。バランスブレイカーの張本人に理由を聞いていてはまともな理由など返ってくるわけもないに決まっている。しかし、キューネしか頼りどころが無いヒナタは結局答えが出ずじまいだ。そうして少しの間待っていた所、ミナトが初回の際に持ってきた測定器をまたもや持ってくる。

「あんたそんなどでかいのよくここまで運んで来たわね。」

「そんなわけがないだろう。2つ用意されてんだよ。職場に測定器はギルド職員には必須なんだ。これくらい当然だ。」

「それで、またこれでステータスを測れっていうの?」

「ああ、一応ギルド職員としてシーカーのレベルは常に把握しておく必要があるからな。レベル上がったんだろ?一応取っておこうと思ってな。」

「ああそういうこと?まあいいけど。」

 そう言って測定器に手を乗せるヒナタ。

 (ステータスオープン)

 【レベル】  26


 【スキル】 【夢】


 【魔法】

 ヒナタのステータスが写し出される。ヒナタは車の中で一度見ていたため驚きはない。しかし、ミナトは違った。

「お前これ……悪いこととかしてないよな?」

 はあ?というような表情を浮かべてヒナタは言う。

「そんな事するわけないでしょ。身の丈に合わないことをしてもしょうがないわよ。正当にやって正当に経験値を稼いだの。言ったでしょ?変異体を倒したって。これくらいは当然よ。」

 黙り込むミナト。ミナトは完全に混乱状態だ。意味の分からないことを言い出すヒナタにとりあえず真偽を確かめようとレベルを確かめようとしたが、またさらに意味の分からない数字が出てきて戸惑うしかない。

「ちょっと待て、まあとりあえず変異体を倒した。そこまではとりあえず分かった。一旦な。」

 そう一旦だ。まずこの時点で意味が分からない。そこを了承する時点で100歩を譲っているに等しい。

「だからそう言ってるでしょ。それでなんなのよ。」

「変異体を倒したとしてだぞ?どうしてこんなにレベルが上がるんだよ?一日でレベルが18上がりましただって?どこにそんな化け物がいるんだよ?」

「ここにいるじゃない。」

 (ここにもいます。)

 そう渋い声で言って右手を上げるキューネ。

 (黙ってなさい。ぶるわよ)

「あのなあ、レベルってのはそう易々上がるもんじゃねえんだよ。変異体を倒したって言ってもお前はサブ的な感じで手助けしただけだろ?なんでこんなレベルになるんだよ。」

「だから私の魔法で倒したのよ。だから主火力は私よ。そもそも、そのもう1人も盾使いでまともな火力が出るタイプじゃないの。経験値を私が多くもらえても不思議はないじゃない?」

 もう全く理解できない。10000歩譲っても無理だ。ミナトの脳内はとてつもない論理破綻したパズルを繋げようとフルスロットルで動いているが、どうやら一向に繋がりそうにない。

「仮にだぞ?10万歩譲ってだぞ?お前が主火力で倒したとしよう。だとしてもだ、ステータスはそういうスキルとかの能力込みで経験値を計算する。つまりだ、超強力なスキルとかで敵を倒したとしてもだぞ?そこまで急にレベルが上がることは無いんだよ。上がったとしても2、3が限界。それを18レベルだ?有り得ねえよ。聞いたこともない。多分お前が初だろうよ。一日でレベル1桁からレベル20に行った奴なんて。」

 ヒナタの常識がだんだんと覆されていく。そう、ヒナタのレベルアップの速度は常識的に考えてあまりにも早過ぎる。普通、レベルというのは毎日頑張って2、3日で1つ上がるかどうかだ。確かに、超絶とんでもない博打を踏めば、一日にいくつかレベルが上がることもあるかもしれない。ただしそんな奴はすぐ死ぬだけだ。そういった常識をミナトに言い聞かされていくうちに、ヒナタは徐々に、ちょっと凄いことをしでかしたのかもと、自身への評価を少し上げる。正確に言えばキューネの力だが、キューネはヒナタのものなので、それはもうヒナタにとってヒナタの力なのだ。

「まあ、私が超優秀だからなせる技ね。凄いでしょ?」

「凄いとかいう次元をとおり越して意味不明だぞ。」

「まあいいじゃない?実際にこうして貰えてる訳だし?風邪と病気以外貰えるものは貰っといた方が良いって、おばあちゃんも言ってたわ。」

「そういう問題じゃねえんだよ……。」

「とりあえずいくらになりそうなのよ?」

「あー、そっちの件もあったな。とりあえずこの魔石以外は全部依頼通り300ヴァルだ。こいつはちょっと待ってろ。今から俺が調べてやる。」

そうして情報端末を取り出すミナト。ヒナタは少し暇ができキューネと話し始める。

 (そんなに私のレベルアップの速度って異常かしら?)

 (うん。やばい。見たことない。)

 (何よ、その言い草。あんた一応まだ生後1日でしょ?)

 (一応ダンジョンのシステムの中に結構の時間いたからね、色々知識は入ってくるんだよ。)

 (それで具体的に何がどうヤバいのよ?)

 (ミナトの言うとおり、スキルとかで倒した敵は基本的に経験値は結構減衰される。だから基本的にそんなに一気にレベルが上がることは無いんだよ。)

 (強い敵を倒せば上がるじゃない?簡単な話よ。)

 (普通はそんな敵倒せないんだよ。というより、それくらい自分にとって強い敵を倒さないと本来経験値はそんなに手に入らない。)

 (そう言われても、具体的な基準がないと分からないわよ。)

 (普通の基準なら、死にかけて勝てる相手に勝ってようやくレベルNの経験値0の人がレベルN +1の経験値0になるくらいだよ。)

 (Nとか使わないで。私その文字大嫌い。)

 (まっさらのレベル10の人がレベル11に一回の戦闘で上がろうとしたら命懸けの戦いをしないとそんな経験値手に入らないってこと。)

 (え、でも私オークの肉切ってただけでレベルが4つも上がったじゃない。第一初日だってレベル1からレベル8よ?その理論ならとんだ化け物野郎じゃない。)

 (だからミナトがそう言ってたでしょ。僕も昨日からずっとヤバいとは思ってたからね。)

 更なる深掘りを始めようとした所、ミナトからお呼びがかかる。

「よし、見つけた。5万ヴァルで売れるってよ?」

「え?5万ヴァル?本当に?」

「ああ、5万で取引にありつけた。すげえだろ?」

「やるじゃない。」

「だろ?」

 相場がいまいち分からないヒナタだが、とりあえず大きなお金に喜びの表情を見せる。ミナトは自身の依頼仲介の腕を褒められたと思って得意になる。

「そんじゃあ今日の他のとも合算して……61800ヴァルだな。そのうち1800はお前1人の分だ。」

「ありがと……あ、あと通信端末ってここで買えるのかしら?」

「ああ、買えるぞ?」

「いくら?」

「1万5000ヴァルだ。」

「じゃあその分引いといて、流石に相手に報酬を全部よこせなんて言われないと思うし。」

「分かった。じゃあ46800ヴァルと通信端末だな。ちょっと待ってろ。」

 (今日は宿の天井のシミを数えて寝ることは無さそうね。)

 (昨日の宿にシミなんてあったけ?)

 (あったわよ。キューネは本当に頓珍漢ね。)

 (でも武器代もあるからある程度は残しておいた方がいいよ?それに一応3万ヴァルはカールのだからヒナタに残るのは16800ヴァルだね。)

 (あの剣まだ使えるわよ?)

 (あんな安物いつ壊れるか分からないからすぐに買い替えた方がいい。1万弱くらいのを買いたいから、宿とご飯代は9000ヴァル以内に抑えておきたいね。)

 (えぇ……じゃあもう昨日と同じ宿でいいわ。ここから探すのもめんどくさいし、早くベッドインしてゆったりした時を過ごしたい。)

「待たせたな。ほら金と通信端末。」

「ん。ありがと。」

 そう言って通信端末をポケットに、お金を袋に入れて帰路に立つヒナタ。

「次はこんな危なっかしい事するんじゃねえぞ。」

「分かってるわよ。それじゃあね。」

「ああ、それじゃあな。」

 そうしてギルドを出て昨日の宿に戻ってきたヒナタとキューネであった。

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