美羽の変身
「こっちがいいかな?いや、こっちかな?」
百貨店内のブティック。有希は美羽に次から次へとドレスを当てていく。ピンク色でリボンがついてる可愛らしいものや紺色のマーメイド型の大人っぽいものまで。
「あの、今日はダンスホールに行くのではないのですか?」
美羽が有希に尋ねる。
「言っただろう?エスの証に贈り物をするって。」
「贈り物と言っても慶子お姉様から頂いたのはリボンでドレスや羽織物とか高価な物ではありません。」
「美羽ちゃん、これは僕の好意だ。君が気にする事ではないよ。それに舞踏会にはドレスが必要だろ?それとも袴のまま踊るのかい?」
美羽は昨日の有希とのダンスを思い出す。有希に着いていくのが精一杯でステップを踏む度草履がカランコロンと音を立て袴の裾を踏みつけた。
「これなんかいいんじゃないか?」
次に渡してきたのは赤いオフショルダーに膝丈の赤いフリルのドレスと白いファーだ。美羽は姿見の前でドレスを自分に当てる。
「このドレス?!」
美羽の中に衝撃が走った。
「あの、このドレス試着してもいいですか?」
「気に入ったのかい?勿論だよ、店員さん。」
有希は近くにいた袴の女性店員に声をかける。美羽は彼女に試着室へと案内してもらう。
カーテンを締め袴を脱ぐと赤いドレスを着てその上に白いファーを羽織る。
「何かが足りないわ。」
「美羽ちゃん」
外から有希が自分を呼ぶ。
「お姉様。」
カーテンを開ける美羽。外には有希が待っていた。
「素敵だね、似合ってるよ。」
美羽は鏡の中の自分を見る。先ほどまでの袴姿とは打って変わりまるで別人が目の前にいるようだ。
「ありがとうございます。あの、これに合うアクセサリーと靴も見たいのですが。」
店員は赤い靴とパールのネックレスを持って来てくれた。ドレスとファーは有希に買ってもらったがネックレスと靴は自分で買った。
「美羽ちゃん、よほど気に入ったんだね。そのドレス。」
買い物が終わると2人は百貨店内にある喫茶店に入る。
「はい、ショーウィンドウで見た時に一目で気に入ってしまって。」
有希と百貨店に入って行く時にふと入り口にあるショーウィンドウの方を見た。赤いドレスが飾られていたのだ。足元には赤い靴も一緒に。
「あの、」
美羽が口を開く。
「お姉様はなぜ男装してるのですか?」
美羽は思っていた事を有希に聞いてみた。有希は長身で男装も少女歌劇の男役顔負けだ。しかしルチアの舞踏会はドレスで参加するのだ。
「そうだな、」
有希が口を開いた時
「ちょっと待って。」
喫茶店に1人の男が入店してきた。




