新しいお姉様
聖ルチア女学院の前に止まったリムジンの中から出てきたのはグレイのスーツに黒い帽子を被った青年だ。青年は校舎へと向かって歩いてく。
「どなたかしら?あの方」
「どなたかのお兄様?」
「素敵な方ね。もしかしたら婚約者かもしれませんわ。」
下校する女学生達は突然やってきた青年の正体に想像を巡らせる。
「美羽ちゃん」
青年が声をかけたのは下駄箱から出てきた美羽だ。
「ごきげんよう。」
「懐かしいな。その挨拶。車を待たせてある。行こう。」
青年が美羽の手を掴む。
「美羽さん、そちらはどなた?」
一緒にいたれいかが尋ねる。
「お姉様よ。」
美羽は青年と共に去っていくがれいかは訳が分からず1人立ち尽くしている。
「お姉様」
妹の撫子が声をかけたのにも気付かず。
リムジンに乗り込むと青年は帽子を取る。
「松原さん、いらっしゃるなら事前におっしゃって下さい。」
青年の正体は松原有希、聖ルチア女学院専科の2年生だ。
「松原さんじゃなくて有希お姉様だろ?」
「はい、有希お姉様。」
昨日ダンスホールにて一曲終わると美羽は3月に行われる舞踏会に一緒に出てほしいとお願いした。しかし
「あの?」
女学校名と慶子の名前を出すと突然唇を奪われた。
「何ですの?」
「まあ人前で」
踊っていた紳士淑女達は一気に美羽達に視線を送る。
「君、空いてる個室あるかい?」
ボーイに案内されたのは2階にある一室だ。ソファと机が置いてある小さな部屋だ。
ボーイが外に出ると青年は鍵をかけ帽子を外す。
「君は慶子の事知ってるのか?」
「はい、2年生の時私のお姉様でした。」
美羽は慶子から聞いた話をする。舞踏会のダンスの相手に青年を勧められた事、青年は女性でルチアの専科生である事。
「あの、私と一緒に舞踏会に出て頂けないでしょうか?」
美羽は立ち上がり頭を下げる。
「いいよ。」
青年はあっさりと答える。
「本当ですか?!」
美羽が顔を上げる。
「急にダンスに誘い出して驚かせたお詫びもあるし。だけど」
青年は美羽に顔を近づける。
「僕が君のパートナーになるって事は僕が君のお姉様になるって事だよな?」
「はい、」
「君は慶子とどんな事した?姉妹になるための儀式は」
上級生と下級生がエスになるにはお姉様が妹に贈り物をしなければならない。美羽は慶子からお揃いのリボンをもらった。慶子と同じ白いリボンだった。
「贈り物か、明日買いに行くとしよう。僕の名前は松原有希。宜しくね。」
有希は美羽に手を差し出す。
「宜しくお願いします。松原さん」
美羽は有希の手を握る。
「松原さんじゃなくてお姉様だろ」
「さあ、着いたよ。」
馬車は百貨店の前で停まった。
「お姉様、昨日のダンスホールには行かないのですか?」
「行っただろ?エスになるための贈り物を買いに行くって」
馬車の扉が開かれると有希が先に降りる。
「さあ、お手を。僕の可愛い妹。」
美羽は有希の手を取り馬車を降りる。




