きらびやかな世界
美羽は会計を済ませるとラウンジを後にした。
ロビーを見渡し先ほどの青年の姿を探す。
「いたわ!!」
青年はロビーの扉から外へ出ていく。美羽も後を追うようにしてホテルの外に出る。既に薄暗いだ。
青年は繁華街を歩いていく。
「あの!!すみません!!」
美羽は青年に向かって大声で叫ぶが距離があって聞こえていない。美羽は青年を見失わないように人混をかき分けていく。
「ちょっと!!」
青年は路上裏を曲がる。美羽も路上裏に入るが青年は洋風の白い屋根の建物の前で立ち止まっている。長い髪を隠すように帽子を被り中へと入っていく。
美羽も入って行くが中は薄暗く長い廊下に入っていく。
「いらっしゃいませ」
長い廊下の向こう黒い服の男性が出迎えてくれる。男性に連れられて扉を潜るとそこはバルコニー型のラウンジだった。手摺りから下を見るとタキシードの紳士が淑女と組んで踊っている。天井にはシャンデリアが吊るされオーケストラの生演奏が聞こえる。
(きっとルチアの舞踏会もこんな風に華やかなのかしら?)
美羽がバルコニーの手摺りからダンスを眺めていた時
「きゃっ」
1人の紳士が美羽にぶつかる。美羽はよろけそうになるが
「大丈夫か?」
別の紳士に支えられる。
美羽が顔をあげるとそこには帝国ホテルで見かけた青年がいた。
「ありがとうございます。」
美羽は頬を染めながら青年を真っ直ぐ見つめる。
「一緒に来て。」
青年は美羽の手を引いて階段を降りる。
「僕に合わせて」
広間に着くと美羽を抱き寄せる。ステップを踏みながら先ほど美羽にぶつかった紳士に近づいていく。
紳士は別の女性と話してるようだ。青年は音楽が終わるまで同じ紳士を踊りながら追っていく。
紳士が広間から去った後青年もありがとうと言って紳士と踊っていた女性の元へ行こうとする。
「あの!!」
美羽は青年の腕を掴む。
「私、聖ルチア女学院の5年生の鈴山美羽と言います。年度末に舞踏会が行われるのですが一緒に出てもらえませんか?」
「生憎だが僕は女学院の生徒ではない、」
他を当たってくれと断ろうとするが
「慶子お姉様から聞きました。ルチアの専科生さんで」
青年は突然美羽の唇に自分の唇を重ねる。
周囲の踊り手達が一気に2人に視線を送る。
「鈴山さん、鈴山さん。」
翌日、女学院の放課後。ぼうっと自分の席に美羽にれいかが声をかけてくる。
「どうなさったの?今日の貴女少し変ですわ。先生に当てられても答えないし移動教室は間違えるし。」
美羽はずっと昨日の事を考えていた。帝国ホテルのラウンジで見かけた青年が女でルチアの専科生、ダンスを一曲踊ってもらい唇を奪われた。一日でいろんな事がありすぎた。
「ところで妹は見つかりましたの?」
「れいかさん、その事だけれども」
美羽は昨日のことをれいかに話そうとした。
「ご覧になって!!」
窓の外を見ていた級友が声をあげている。
「何ですの?大きなお声等あげて。」
れいかが美羽を連れて窓の前へ向かう。校門にはリムジンが1台止まっていた。




