合い言葉きめとこ。
「生まれ変わった時のために合い言葉を決めとこうや」
「合い言葉?」
「そや。俺らが結婚して子供産まれて歳とって死んだとするやろ?ずっと一緒におりたいけど、どうしたって離れなならん時が来るわな」
「うん」
「でも俺らは必ずまた逢うよ。俺らは来世もそん次もずうっと一緒やねん。そやさかい、今のうちに次逢うたときの合い言葉決めとこうや」
「いいけど簡単なのにしてね」
「そやね」
「久しぶり、は?」
「そんなんでええの?」
「初対面の人に久しぶりなんて言われたらそれだけでこの人危ない人なんだなってわかるでしょ?」
「危ない人て」
「だって生まれ変わるってことは、もう私達この姿じゃないってことじゃないの?」
「そうなるわな」
「ひょっとしたら人間ですらないかも」
「嫌それはないやろ」
「わかんないよ。ワンちゃんかも」
「そんなんいやや」
「まぁ私も嫌。貴方がその姿じゃないなんて耐えられない」
「なんなん俺の顔が好きなん?」
「顔込みで好きなんだよ。つまり貴方の全てが好きってこと」
「俺もやで」
「久しぶりやねぇの方がいいかも」
「なんで?」
「私の周りで関西弁男子貴方しかいないから」
「そやね。じゃあ俺が久しぶりやねぇ言うたら何て返してくれるん?」
「それはこれからおいおい決めていきましょう」
「えー。今決めようや」
「まだ時間いくらでもあるでしょう」
「そやけど」
「取り敢えず今日は帰りましょう」
「えー。もっと一緒におりたいー」
「明日も会えるから」
「明日の朝学校来るまで会えへんやん。寝とる時間以外ずっと会いたいよ。夢の中でも会いたい。今晩出てきてぇなぁ」
「無茶言わないで」
彼は不満顔。
私は来世で久しぶりやねぇと目を細める彼に人違いですと言って背を向け走り出す自分を想像する。
きっと彼は追いかけてくるだろう。
そうしたら私振り返って笑うの。
「同じお墓入るん楽しみやわー。まぁ俺としては墓よりも同じ骨壷入りたいけど」
「その話もおいおい」
「そやねー。これから時間なんぼでもあるもんなぁ。もうずっと一緒やで。離れたらあかんよ」
「うん」
本当におかしな人。
ついさっき告白してくれて付き合うことになって、私達まだ手すら繋いでいないのに。




