鉄格子の向こうの街
「ああ、まったく、外に出たいな」
その刑務所で一番古い牢屋に閉じ込められているその囚人はいつものように鉄格子から外を眺めてそう呟いた。鉄格子からは森と、その奥にいつ見てもネオンが輝く街並みが覗いている。
あそこに行けばどんな楽しいことがあるのだろう。賭け事ができるだろう。酒も、女も。薄ら暗いところにいけば麻薬だってあるかもしれない。
もう二度とここから出られないということが裁判で確定しているが、いや、だからこそ伸ばせば手が届きそうなその景色に囚人は毎日羨望の視線を送っていた。
そんなある日のことだった。突如として刑務所一帯を大きな地震が襲ってきた。
しばらくしてから揺れも収まり、頭を守り地面に伏せていた囚人が顔を上げると、なんと壁が崩れている。
しめた! 囚人は看守が様子を見に来る前に大急ぎで崩れた壁から外へと這い出した。
そして、大急ぎで森の奥、いつも見ているネオンの輝く街へと走っていった。
それからしばらくの時間が経ち、看守が見回りに来ると囚人は牢屋の中でぼんやりとした様子で座っていた。
壁が壊れているのを確認した看守は囚人に対して意地悪く問いかける。
「おや、外には出なかったのか? 街にお出かけしてもよかったんだぞ」
「絵の中の街に行けるなら俺も行きたかったよ」