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しんぶんしぶ  作者: 図吊凪
第三章
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16/41

第1話①:一刻者

 ザッ、ザッ、ザッ。隆々とした地面を、四人を乗せているとは思えない軽やかさで進んでいく。飛び跳ね、四つ足の足跡をつけることに躊躇せず進むタプに、紛れもなく、進め、と言ったのは自分達だった。

 そうだけど、実感が湧かない。実際に進む意思を持っているのは他の三人で、睡方はまだ事実を受け入れられなかったからだ。このまま自分はどうなってしまうのだろうかという思春期特有の悩みを、異形になってまで頭に浮かべることになるなんて思ってもいなかった。

 常に先導をし、前を向く九華。そのレンズで冷静に、先を見る想汰。他人を励まし続け、いついかなる時でも止まることをしない由依。そう感じた時、彼女達に挟まれる自分は、今まで何が出来たのだろうと回顧して。

「見えてきた……社だ」

 想汰が写真を片手に呟くのと同時に、自分の視界にもそれが映ってくる。他の建物と同じように白化している凹凸のある壁。

「あいつの言ってた通り。私の家だ」

 タプが速度を上げる。その建物の近くで止まって、四人は降りると、それを見上げる。それは神聖な建物 ────というよりも、どこにでもあるような普通の一軒家だった。彼女の言葉も、あの物知りの言葉も信憑性が増して。

 四人はその建物のドアに近づく。瞬間、後ろで電撃のような音がして振り返る。タプだけが透明なバリアに引っかかっていて、そこを通れなくなっていた。何度も試してみたが、どうやら神分に選ばれた自分達しか立ち入ることが出来ない仕組みになっているようだった。それを儀式らしい、と一蹴するのは簡単だったがバリアを隔てて向かい合う由依とタプを見ると、そんなことは口に出せなかった。

「タプちゃん待っててね! ウチらすぐ戻ってくるから!」

「タプ、タプ……」

 タプの頭をひと撫でしてから由依がこちらを向くと、四人が揃って社の扉の前に立つ。ドアノブを握る九華の腕はどことなく震えており、深呼吸を先ほどから繰り返している。

「よし……いくわよ……」

 思わず生唾を飲み、他の二人も頷く。勢いに任せるように、というか勢いに任せないと開けられないといった感じで、彼女は全身で押してその扉を開ける。その時に社の中から漏れ出てきた空気を浴びながら足を進めると、異世界の謎の建物に潜入するというよりも、人の家にお邪魔するというような、どちらかというと現実世界に傾いた感覚を不思議と感じられた。

 その瞬間、睡方は旅の途中に出会った、少し変わったスフィンクスに言われた言葉を不意に思い出し────。



 ツカイが空に消える。わざとらしいような静寂がのしかかり、しばらく足が動かなかった。無力感とこれからの不安という二足の靴は極めて重く、自分達を立ち止まらせるには十分すぎた。

 睡方は、いつも積極的に先導してくれる九華が先ほどから沈黙を貫いているのを見て、何だかやり切れないというか、心内が少しむず痒くなってくるのを覚えた。助けを求めるように想汰と由依の方へ視線を移すと、彼らは意外にも暖かくその視線を返してくれた。現実世界に帰れるのはこの中で三人で、一人は神様にならなければいけない。そんな残酷な現実は、二人にでも平等にのしかかっているはずなのに。

「……とりあえず、ツカイの言っていた『シ』とやらに僕達も会ってみよう。そこで話をした方が案外事は早く進むかもしれない」

「そ、そだね! 絶対ここで止まってるより良いと思う! タプちゃん! 乗せてくれる?」

「タプ!」

 由依の腕から飛び出し、地面に着地すると、タプは胴体を後方に伸ばす。二人がその上にまたがって睡方も流れで乗る中、九華だけはその場で立ち尽くしているままだった。前に乗っている想汰が振り返る。

「おい、乗らないのか?」

「……信じない」

「え?」

 そう言って近づいてくる彼女。これまでと違って鬼気迫る芯のある声で。

「私……信じない……! あいつのこと。絶対あるはず、四人で現実世界に帰れる方法……! 私が、見つける!」

 怒りをぶつけるように、彼女は勢いよく最後尾に座った。その姿を見て、想汰は小さく笑い、由依も微笑する。腕を組んでいつものように不機嫌そうに悪態をつく九華の姿に、睡方も彼女の顔をじっと見つめてどこか安堵の表情を浮かべる。

「何見てんのよあんた。きもいんだけど」

「はぁ!? なんだよせっかく人が心配してやってるっていうのに……」

「声でっか……。もういい、早く想汰出発させて」

「了解だ。それじゃあタプ、このまま直進方面で発進だ」

「タプ!」

 走り始めの加速の影響で、体が後ろに引っ張られる。九華が睡方の体を掴んできて支えにしたせいで自分も落ちそうになり、連鎖的に由依の体を掴む羽目になって、初めて彼女に反射的に手を叩かれた。幸先の悪いスタートで、心底うんざりだった。

 数分も経たないうちに、ツカイの宣言通り看板が見えてきた。地面に刺さる木製の看板には黒いマジックで文字が書いてあるようで。タプは想汰の指示でブレーキを行い、足を擦りながら看板前で寸前の停止を見せる。そこに書いてあったのは。

『あなたのお悩みナンでも受け付けます!!! トモダチが出来ない……、コイビトが出来ない……タノシイことが一切無い……そんな些細なご相談でも一に大丈夫、二に大丈夫、三に大丈夫!!! アナタは自由に飛んでいく鳥のよう! 動けない私の年の功!!! 二千年生きっぱなしの物知りスフィンクスへぜひご相談を!!! ←ココを曲がって左に約数分ぐらい』

「二千年生きっぱなしの物知りスフィンクス……? なんか、すごそう」

「文字からうるさいわね。こんなやつが本当に私達の欲しい情報を知ってるのかしら……」

「意外とそういう人だから……かもしれない。タプ! 左に曲がって進んでくれ」

「ウチ……このセンス嫌いじゃない……」

「タプタプ!」


「で、僕の元に来たってわけ?」

 四人と一匹がその聳え立つ巨像の前で横に並ぶ。荒っぽい凹凸のある地面と違い、細かな表面のザラついた模様が、どこかの職人に研磨されたような人工物らしさを醸し出させる。

 見て呉れは図鑑や教科書などで誰もが見たことのある、いわゆるあのイメージ通りのスフィンクス。なんなら地面につけた足から頭までの大きさは、自分達の身長の約二十倍もあり、実際現実世界に存在した本物のサイズ感に匹敵するようだった。

「……そうよ、あのツカイってやつがあんたなら知ってるって」

「そっかー、なるほどね。まああの人面倒くさがり屋だし。なんてたって、世界の誕生から終わりまでこれまで何回も見てきて、ずっと天界の神様の与太話に付き合わされてたらしいんだよ。そりゃあ、あんな性格になっちゃうよなぁ。あ、立ちっぱなしにさせてごめんね! ほらそこに座って座って! 出せるお茶なんか一滴も無いけど。あ、これは皮肉じゃないよ?」

「は、はぁ……」

 現実世界でメディア上で見たスフィンクスは能面のような表情で、まるで主人を待つ猫のようにお利口にじっとしていたはずだった。

 だが目の前の『シ』は、そんな通説お構いなしといった感じで話す度に複雑に手を動かしたり、表情もコロコロと変えたりする。目、鼻、口が立派に描写されているからかその感情の起伏も分かりやすく、元人間として羨ましくなるほどだ。

 現実世界では神聖なものとして扱われていた者とは思えない、営業マンのような動く手の動きに促され、四人は座り、その真似をするように一匹も座った。

 睡方は余りにも滑らかな顔の表面を手で触った後、座る三人の顔を覗き込み、自分達が異形だということを改めて認識した。タプがちょこちょこと動き出し、結局由依の腕の中に入る。もう彼女も無意識に撫でるようになっていた。

「あー、自己紹介がまだだったね。失礼失礼」

 淡白な声、男性的にしては少し高めの。シがその地面につけている両手を動かす度に、ちょっとした鳴動と砂塵が巻き起こされる。自分の大きさを把握していないのか、その塵が座っている睡方達の元に飛んできて粉っぽい。目を細めた笑顔を見せるようにして。

「僕の名前は、えーっとね……。ミカミ・ヴァルフォード・アマギ・カナ・シュリ・ジェンソン・サヨ・エリアス・オルタナ・ジン・マーティン・リュカ・セリス・アキト・クレア・アストレア・ユキシロ・レーヴェ・シズク・エリオット・ナナセ・ランベルク・リンネ・アルマ・レン・マークレイ、」

「……もういいわよ」

 九華が制止してもまだ言い続けている。石化した五本の指を何度も折ったり広げたりしながら、もう一方の手を頭に乗せるようにして視線は空を向いたまま。

「ハスミ・アレント・クロエ・フィオナ・イチカ・ハンス・タイガ・エシュリオン・マホロバ・クロイツ・シノノメ・レーヴァテイン・ハルナ・フレイザー・ワタル・オルフェウス・ユグドラシル・レンジ・セリーヌ・リョウ、」

「だからもう良いって!」

「えっと……ステラート・ハルト……リリス……。で……次が……、レ、レで始まるやつ……」

「自分でも忘れてるじゃない!」

「うるさいなぁー! お願いだから言い切らせてくれ! 言い切らないとだめなんだ! そうだ思い出した! レオン! レオンで……」

 九華は唸り声を上げながら、眉を顰めて頭を掻く。対照的に睡方は地面に手をつき、足を伸ばしてあくびをする。同様にリラックスした状態で、想汰は言われた名前を一つ一つ地面に書き、由依はタプと戯れあっており。

「それから、シホ・カスティール・レヴァンティス・アーケイン・サクラ・リュミナス・ジラルデ・ワカミヤ・ノルディア・リコ……、ダグラス・カミシロ・キラ・ノア・ゴア、ミナ・ライナ・ジーン・フォルテ、フェルド・ラジーナ・ヴァレンティーナ! ここが気持ち良いんだよな」

「知らないわよ!」

「で、カグラ・ネイト・カオル・チサ・ブロッサム・ユメ・ヴォルフ・マユズミ・アークフェルド・エナ・ルーク・サク・ユウマ・チトセ……で終わり! それが名前! よっしゃ! 言い切れた! やったー!」

「……やったー! じゃないわよ! 何なのよこの時間……!」

「ちょっと待ってくれ。ツカイはあなたのことを『シ』って呼んでいた。なのに、なんでそんな、えっとミカミ・ヴァルフォード・アマギ・カナ・シュリ・ジェンソン……」

 想汰が地面に書いた文字を指で追い出して、九華が思わず彼の頭を勢いよく叩く。シは喜んで上げていた両手を下ろし、片手で自分の顔を指す。

「あー……あの人は硬い人だからさ。その名前はカミとしての名前だろ? なんかそれ、仰々しくて嫌いなんだよね。というわけで、みんなもこれからは僕のこと気軽にチトセって呼んでくれ」

「最初からそう言いなさいよ……。じゃあチトセ、早速聞くわ。この世界にある『社』って何なの?」

「オーケイ。だがこれは簡単な質問だ。君達、現実世界で神社には行ったことがあるだろ?」

 タプ以外が相槌を打つ。

「そう。まあ知っていると思うが神社というのは、神様を祀る場所だ。それを言い換えるとするなら、神様のお家と言って差し支えないだろう。つまり、これから君達が行くのは自身のお家だ。後ろの君達の出身地を模した建物群に家が無かったのは、それだけが独立してこの世界の四方に点在しているからなんだよ」

 睡方は、思わず口を開けて大きく頷く。ツカイとの散歩を思い出してみると、話を聞くのに集中していてほとんど周りを見てはいなかったが、通学路を歩いているのに、やけに自分の家は目に入ってこないなと感じていた気がする。勝手に自分の頭の中で擦り合わせて益々合点がいく。

「そして、その社の中には君達の現世の記憶が溜め込まれている石像のようなものがある。それを触ることによって流れる記憶を君達が協力し合って、その紙に書き留めていくんだ。つまり、それが現世の記憶を封印する『儀式』となる」

「よく分かった。だが、肝心の社はどこにある? 四方に散らばっていると言うが、流石に僕らも時間が無制限なわけじゃない」

 チトセは指を鳴らして、想汰を指す。

「その通りだ! 積極的な発言ありがとう! そうだ。だから、まあ百聞は一見にしかずということで……」

 そしてそのまま、両手を水を掬うような形で差し出す。

「少しばかり、君の能力を貸してくれ。ほら、その『眼』の能力を」

「『眼』? これのことか?」

 腰のスイッチを押すと、彼の顔の中心がもはや当たり前のように飛び出る。同時に頭の上にもシャッターボタンの突起が生まれ、レンズのようになったその顔を見た途端、チトセは嬉しそうに拍手している。

「うおー! それだよそれ! 話には聞いていたけど、実際見るとテンション上がるな〜。オーケイ、じゃあその先端部分だけをちぎってこっちに寄越してくれ」

「いや……やだよ。痛いし」

「想汰。大義のための犠牲となって」

 結局、三人がかりで綱引きをするようにして、無理やりレンズ部分を引き剥がした。この感覚は未だ慣れないようで、彼は顔を押さえて座り込んでいる。それを動けないチトセの元へ近づいて、言われるがまま大きな手の上に置く。上に置いた途端おもちゃを貰った子供のように、それを上に投げてはキャッチしてを自分の手で繰り返しながら。

「よし。今からこれを真上にぶん投げる。最高到達点に行ったら合図するから、その瞬間に君はその頭のシャッターを押してくれ」

「……分かった」

「それじゃあ……行くぞ!」

 手が半分地面に埋め込むほど振りかぶって、投げる。その瞬間、反動で周囲に風圧が伝わってきて、地表にいる四人と一匹は体に思いっきり風を受けた。威力相応に、想汰の一部は風を切るような音をさせながら一瞬で垂直に舞い上がり、もう見えなくなった。チトセは顔を上に向けている。時々、首が辛い……というぼやくような余裕があるほどの時間が経ち、投げてから数分が経った頃。

「今!」

 突然言われて、少し遅れて彼は頭のボタンを押す。投げたレンズが帰ってくる前に、おでこが開いて一枚の写真が垂れ下がるように出てきた。見てみると、それは宙に浮かんだレンズから撮られた、言うなればこの世界を空から見た航空写真が写っていた。

 先程ツカイと一緒に歩いていた建物群は写真の真ん中より少し左下側にずれたところにあり、そこまで離れた記憶はないため、恐らく自分達の現在地もそこであると言える。

 そして、その自分達の現在の周囲を囲むように規則的に設置された四つの建物。それらは綺麗に正方形の頂点を埋めるように点在しており、建物があるだけで珍しいこの無の世界にとって明らかに異質な存在だった。

「チトセ、この四つがそれか?」

 写真を見せると、彼は目を細めるようにして必死に確認しようとする。首を前にして確認しようとしたのが運の尽きか、上空から落ちてくる精一杯の重力が注がれたレンズが頭に直撃し、そのまま鈍い音と共に酷く凝って造形された顔が、レンズと一緒に構えていたチトセの両手へと落ちた。

「うわぁぁああ! 頭が落ちた!」

「あーごめんごめん、これはいつものこと。それと、そう! そこで合ってる。だから君達が次に向かいたいのは恐らくそこになるんじゃないかな」

 落ちた頭を巨大な手で何の気なしに顔に付け戻すと、二回ほど首を捻ってそれを馴染ませる。九華はもうずっとチトセに会ってから、ずっとため息を吐きっぱなしだった。彼はレンズを掲げ、もう一方の手でそれを指す。片手で人差し指を一本立てると快活に喋り出し。

「とにかく伝えたいのは、君達の能力はこういう風に大きく役立つということだ。『眼』、『耳』、『頭』、『心』。本来、神分に選ばれた一人に授けられる能力を君達はそれぞれ四分割して持っているのさ。それゆえ、本来一つのはずの社も対応するように四つに分かれた、というわけ」

「なるほどね……。でも、ちょっと待って。『眼』と『耳』は今まで散々使ってきたから分かるけど、『頭』と『心』って何なのよ」

「というか、俺らにも能力ってあったんだな……」

「あれ? まだ気づいていなかったのか! まあその四つの能力はいずれもこの後儀式で使うことになるから、時間の問題だと思うけどね」

 腕を組みながら、睡方のことをじっと見る。

「な、なんだよ」

「まあ、どうせ私が『頭』ね」

「……? え、なんでだよ」

「渓翠。お前、馬鹿にされてるぞ」

「はぁ!?」

 まっすぐと前を見つめる想汰の一言で、耳元で声を荒げてくる睡方をいなす。九華は口を真一文字にしたまま、視線はチトセの方を見ている。

「あんたのおかげでやらなきゃいけないことはなんとなく分かったわ。そろそろここで止まって話を聞いているのも退屈だし、本当にあんたの言っていることを確かめに行く必要もあるわね」

「……それは、進むということかな」

「もちろんよ。タプ! みんな! 出発するわよ」

「あ、ちょ、ちょっと待って。みんな、こっち向いて!」

 高らかに響かせた彼女の声を、無理やり遮るようにしてチトセが片手を大きく上げる。言われた通りに彼の方を四人と一匹が向くと、自分達に向けて彼は先ほど投げ飛ばした想汰の一部である、レンズをこちらに向けてきて。

「はい、チーズ!」

 チトセの突然の合図に由依だけが即座にポーズを取り、困惑した空気がその場に漂う。思わず抱かれているタプも語尾が上がるような疑問系の鳴き声を上げる。片目を瞑ってレンズを覗き込む彼が、押して、押して、と囁き声で想汰に訴えかけると、その間を縫って由依が腕で押し込んで自分達が画角に移りやすいように中心にまとめていた。

 肩を落とした想汰が流れに身を任せて、頭に手をかけると、カシャッという軽いシャッター音が響いた。おでこから垂れ下がったのは、チトセが持っているレンズの視点で撮られた四人と一匹の集合写真。チトセはそれを見たそうに指を動かしていたので、掲げてみると、それはそれは大きな拍手をしながら憎たらしい笑顔を見せた。

「めちゃくちゃいいじゃないか! やっぱり何かを形に残すってのはいいもんだね〜。あ、これ返すね」

 下投げでレンズが手から離れ、そのまま足元の地面に刺さった。それを引き抜き、少し塵を払いながら想汰の顔に戻す。ちぎる時と比べて、戻す時はあまりにもあっさりだった。

「なんだって、急に写真なのよ。これも何かの役に立つの?」

「いや? ぜ〜んぜん」

「はぁ……。さっさと行きましょ」

「ただ、」

「え?」

「撮るなら、今のうちかなって思ったんだ。だって……」

 チトセは、ほんの少し言い淀んで。

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