城 5
離れ離れになっていたヤンとは城で再会した。ヤンはかなりの特殊業務についていて、「この人でなければ支障が出る」というタイプの人間だった。必要最低限のことしか会話をしないことが強いられている中、ヤンと立ち話をすることもリスクだった。だが、ヤンはそのリスクを意に介さないように相変わらずおしゃべりなままだった。ヤンの仕事部屋であるコンピュータールームに部品を届けたとき、ヤンはその訳を教えてくれた。
「俺、『死の矢』のシステム管理をしてるんだよ。要するにドローンでターゲッティングする仕組みなんだが、違反行動をするとそれが累積していき自動的に放たれる。違反行動はあちこちの監視カメラでチェックされているんだよ。まあチェックされてることはもうみんな知っているから、最近はほとんど放たれていないんだが。で、監視カメラの位置も把握しているし、あと、実はこのシステムは個人にプロテクトをかけることができる隠しコマンドがあって、何人かにかけてるんだ」
驚くべき話だった。ヤンの業務がそんなものだったとは。
「お前と俺とラオ爺と、あと当然彼女にもかけてある」
僕は不意打ちを食らったように動揺した。ヤンは続けた。
「あの頃が懐かしいな。お前と俺と彼女と」
そう言うヤンに目で訴える。その話はしてくれるなと。ぼくの気持ちが手に取るようにわかるのだろう、ヤンはそれ以上は何も言わず、その代わり二人とも黙ったまま、あの頃を思い出していた。