城 1
数えきれないほどの争いと大災厄を繰り返し、この星の可住面積は僅かなものとなり、科学技術も土木技術も多くが失われ、人類は細々と生存を続けているという状態だった。そのため、セントラル連合の船団が彼方からやって来て彼らの支配下にはいるようにと勧告してきたときにはこの星の中枢に抵抗するような力はまるでなく、ただ無条件にセントラル連合の管理下の辺境惑星の一つなる道を選ぶしかなかった。
この星に入ったセントラル連合の調査団が下した結論は、ここから奪うべきものも滅ぼすべきものも何もなく倫理的にはむしろ保護すべき星という判断だった。この惑星の住人が飢えることがないよう、生態にあわせた栄養剤が配合され、それから定期的に必要物資とともにセントラル連合から輸送されてくるようになった。セントラル連合の辺境総督はこの小さな星にまるで興味を示さず、統治はこの星の者に任されていた。セントラル連合の支配下に入ったことで変わったことといえば、定期的な栄養カプセルや資材の配給があることで労働しなくても生存可能になったことくらい。あとはたいした変化もなく、そこから平穏な日々が長く続いた。
なぜか状況が変わり始めたのはぼくやヤンが十代に差し掛かった頃だ。ぼくたちにも親や大人たちの不安げな会話や言葉が耳に入るようになっていた。辺境総督の代理としてこの星を統治していた長官が次々と公布する方針はいつの間にか過激なものとなっていき、反発の声が強まっていた。いずれ大きな騒乱が起きそうな気配が漂っていた。反長官派、クーデターなどという言葉をぼくは幾度も漏れ聞いた。