雨がふるたびに暖かくなる
思い出というか呟きです。
春雷というのだろうか。
朝、珍しく雷が鳴り雨が勢いよく振りだすのが窓から見えた。
ああ、この天気に仕事に行くのかと思った私の耳にふっと父の声がした。
『雨がふるたびに暖かくなるんだよ』
だいぶ昔にいなくなった父が言った言葉だ。
あまり口数は多くはなかったが優しい人だと言われた父だった。よく人を見ていてここぞと言う時に励ましたりアドバイスをくれたり。シャイで押し付けがましくなく、こそっと一言話してにこにこしている。そんな人だった。
病弱だったので自分に伸ばす手に限界があることはよく知っていて。それでも自分も苦しい時があったから、周りに悲しんでいたり苦しむ人がいると見ていられなかったのかなと今になって思う。
では行くか、と外へ踏み出すと目に入るのは一面の雪景色とみぞれ。
お父様。雪が降っても暖かくなるのですか!
するとまた声が聞こえる。
『フレー、フレー、のどあめ
頑張れ、頑張れ、のどあめ』
ピリピリしていて近寄りがたかったという若い時の父を、遅くなってから生まれた私は知らない。ただ、あまりできのよくない子どもを見ていられなくてたまに様子を見に来ているんじゃないかと思う時もある。
では頑張って行ってきます。
今はお彼岸。寂しがりやでもあった父に会いにお墓参りに行こう。
拙い文を最後までお読み頂きありがとうございます。