表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/27

第一章 貴族転生 - 007

 ◇◇◇◇◇ 主人公 Side ◇◇◇◇◇




 俺が求める武器は入手した。


 費用となるアイテムは、すでに発注している。


 母の名を勝手に使って、文章での発注だ。


 それなりの金額になったのだが、財産の管理などろくにやってないので、まぁばれることはないだろう。


 静寂の腕輪と緑枝のアミュレット。


 足音を消す効果と、持久力を急速に回復する効果がある。


 それに、月束の杖。


 秘匿効果の魔力増幅を持った魔法の杖だ。


 すでに、魔術見えざる姿はマスターしている。


 魔導書を見て理解するのはそれほど難しくなく、理解してから実際に発動するのはもっと簡単だった。


 見えざる姿を月束の杖を使って発動すれば、一時間は姿を消すことができる。


 今の俺なら、三回は発動できるので、合計三時間は活動できる。


 さすがに忌区全てを見て回ることは不可能だが、いくつか目ぼしはつけている。


 十分とは言えなくとも、ほぼほぼ見て回れる時間だろう。


 場所が場所だけに戦闘は避けられないだろうが、数回ならなんとかなるだろう。


 これで忌区探索の準備は整った。


 あとは忌区にフリーダがいることを祈るしかない。


 正直、現状で教区を探索するとなったら、ほとんど詰んでいるようなものだ。


 難易度が高すぎる。


「よし」


 俺は両手で自分の頬を叩き、気合を入れる。


 今はまだ夜中だ。屋敷の中は静まり返っている。


 兵の一部は夜勤についているはずだが、場所は把握している。


 抜け出すのに問題はない。


 夜明けまで若干時間があるが、それまでには目的地についていたい。


 三歳児の足では、走った所で知れているので、余裕を持って行動しているが急いだ方がいいことには変わりない。


 屋敷を抜け出した俺は、貴族区を抜けて平民区へと向かう。


 小さな家や商店、長屋形式の住居が雑多に立ち並んでいる区画で、非常に複雑に道が伸びている。


 ほとんど迷路みたいではあるが、俺は良く知っているので、迷うようなことはない。


 途中、何度か人を見かけたが、見つからないようにやりすごす。


 そうしてたどり着いたのは、井戸の前。


 中へは鶴瓶ではなく、梯子が伸びている。


 ここが、忌区への入口だ。


 隠されているというほどではないが、初見ではまず見つけられないだろう。


 俺は迷わず下に降りていく。


 三歳児にはちと辛いが、忌区での探索に比べたらたいしたことはない。


 下に付いた俺はすぐに、月束の杖を左手に持ち、見えざる姿を発動する。


 静寂の腕輪はすでに装着している。


 これで、音を消し、姿を消した。


 治癒の剣を右手で抜くと準備完了である。


 階段から続く通路を抜けて、地下の大通りに向かう。


 途中、モンスター化した大ネズミ共を始末しながら慎重に進む。


 地下の大通りの天井付近にある出入口にたどり着いた。


 そこから下を覗き込むと、呪詛に塗れた咒鬼(じゅき)共が通りのあちこちに立っている。


 手には歪な大剣か大斧を持っていた。


 全部で六体。うち四体は定位置に立ったまま動かない。


 後の二体はゆっくりと徘徊している。


 気を付けなければいけないのは、徘徊している二体。


 距離があれば気づかれないが、近くによるとすぐさま敵対してくる。


 姿が見えなくても、気配で察知するようだ。


 俺はタイミングを見計らって下に降りると、咒鬼に見つからないように移動する。


 こいつらは、新しい武器を試すのに丁度いい練習相手になるのだが、今はスルーする。


 少しでも体力と魔力を温存しておきたい。


 咒鬼を避けて、地下大通りから別の通路へと入りこむ。


 通路とは名ばかりで、空洞内に細い板が渡されているだけの代物だ。


 簡単に足を踏み外しそうである。もちろん、そうなれば落下死は免れない。


 その通路上を、ガーゴイルが塞いでいる。


 俺は気づかれないように近づくと、背後から致命を入れる。


 一発で倒すことができた。


 さすが、最大の致命ダメージを与えることのできる治癒の剣である。


 そこから治癒の剣でなんなくガーゴイルを始末しながら、細い通路を下へと降りて空洞内の底へとたどり着く。


 ここからは、さらに注意が必要だ。


 空洞の下には水路が広がっている。


 この水路には、強力なモンスターが生息しているのだ。


 ガルネーレンというモンスター。


 正直、戦いたくない。三歳児だからというだけではない。


 たとえ、成人していたとしても同じだ。


 こいつらは、ひたすら強いだけで、倒したところでなんにも旨味がない。


 ただひたすら、厄介なだけの敵であった。


 そんなガルネーレンが、水路からいきなり出現する。


 まるで地雷だ。


 とか考えていたら、いきなりガルネーレンが出現した。


 見た目は巨大なザリガニだ。


 さいわいなことに、俺には気が付いていない。


 もし、みつかりヘイトを受けたら、戦うしかなくなる。


 巨大なハサミから、強力な高水圧攻撃を放ってくる。


 鋼の鎧を貫く水鉄砲だ。今の俺が受けたらひとたまりもない。


 戦うなら近接戦闘を強いられることになる。


 どう考えても、あまり楽しい状況にはならない。


 俺は、気づかれないように、正面から歩いてくるガルネーレンの脇をすり抜ける。


 ほっとする間もなく、新たなガルネーレンが出現する。


 さすがに舌打ちしたくなった。


 どちらか片方に気づかれたら、自動的にもう一匹ともエンカウントすることになる。


 ガルネーレン二匹同時に相手するなど、自殺行為だ。


 ぶっちゃけ、一般レベルの騎士を複数相手にするほうが遥かに楽である。


 幸いなことと言っていいのかはさておき。いくら忌区とはいっても、こいつらほど厄介な相手はいない。


 なんとかやり過ごせば、後は楽になる。


 なのに、そいつは、俺が向かおうとしていた通路の入口を塞いで動かなくなった。


 最悪だ、このままここにいたら、じきに見えざる姿の魔法が消失する。


 その瞬間、ガルネーレンのヘイトを受けて強制戦闘になる。


 しかたない、ここは覚悟を決めることにする。


 気づかれる前に戦技をぶち込み、その後は、もう一匹のガルネーレンが気づくより先に倒しきるのだ。


 俺は、すぐに行動を開始する。


 幸いなことに、もう一匹は俺がやって来た方に向けて移動していった。


 じきに引き返してくるが、しばらく時間があるだろう。


 やるとしたなら、今この瞬間しかない。


 俺は一気に近づくと、弱点である腹部に戦技崩突を差し込む。


 こちらを認識していなかったガルネーレンに、通常より大きなダメージが入る。


 当然だが、これでガルネーレンと敵対した。


 すぐに攻撃がくる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ