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第一章 貴族転生 - 019

 道中は世間話をしながら、二度ほどモンスターとエンカウントして目的地付近までたどり着いた。


 その時、なんだかんだ言っても戦わせて貰えたので助かった。


「いますね……」


 荷台から降りながら俺が話しかける。


 河から少し離れたところに止めたのだが、川沿いには死に生きる者達が徘徊しているのが見えた。


 武器を手にしている手合いは見当たらない。獣人もいないようだ。


 一体の強さはそれほどでもなさそうだが、数が多く舐めてはかからない方がいいだろう。


「そうだね。でも、まずは……」


 ルーカスの言葉に俺は頷く。


「そうですね。まずは猟醜の騎士を見つけないと」


 死に生きる者と接敵した状態で、猟醜の騎士に乱入されるという形になるのと最悪だ。


 俺が死に生きる者達に囲まれていたら、猟醜の騎士に対応できなくなる可能性がある。


 それだけは避けたい。


 流れとしては、まず猟醜の騎士を見つける。


 パーティメンバーに死に生きる者への対応をまかせながら、猟醜の騎士の近くまで連れて行ってもらい、一対一で接敵する。


 この流れが最良だ。


「どうせ、河のどこかにいる。見つからないように移動すれば会えるよ」


 レーナの判断に全員が頷いた。


 ということで、さっそく身を屈めながら全員で移動を開始する。


 移動を初めてから、さほど経たずに目標を見つけた。


 だが、中々想定通りとはいかないようで。


「おいおい、なんだよありゃ」


 イーダが驚いた声を上げる。


 そのとき、


「ギャウー!!」


 雄たけびが上がった。


 体高は15メートルほど。腕に飛行用の被膜がついている。


 正面にいる半融の馬に跨る猟醜の騎士が小さく見える。猟醜の騎士も三メートルはあるのにだ。


 飛竜がどこかから紛れ込んで来てしまったらしい。


「少し、様子を見ようか」


 リーダであるルーカスが判断を下す。


 もちろん俺も含めて全員が頷いた。


 飛竜が炎を吐くが、猟醜の騎士はすぐに走り出し交わす。


 炎のブレスが切れたところで、猟醜の騎士はなんなく懐に入り込み、腐敗の剣で後ろ足を数回切る。


 飛竜もすぐに反応しする。尾で薙ぎ払うが、その時猟醜の騎士は間合いの外にいる。


 それを見て、すぐに飛竜が炎のブレスを吐くが、交わされてしまう。


 ブレスが切れると、猟醜の騎士は懐に飛び込み、腐敗の剣で反対側の足を数回切り刻む。


 今度は噛みつきで猟醜の騎士に仕掛けるが、これも交わされた。


 すぐに飛竜はブレス攻撃に移ろうとするが、ここで異変が現れる。


 口から出たのは炎ではなく、赤黒くなった血液。


 腐敗効果が乗ったのだ。腐敗の剣によるものだ。


 おそらくもう飛竜は助からない。


 だが猟醜の騎士は手を緩めない。


 その隙を見逃すことなく、半融の馬を全速力で駆けさせる。


 全体重をかけて飛竜の首に腐敗の剣を突き立て、それをさらにねじ込んで首の肉を半分ほど抉り取る。


 その大きく空いた傷に向かって、上段から腐敗の剣を振り下ろし、残る半分になった首の肉を叩き切った。


 飛竜の首が落ち、完全に勝負がついた。


 ……いや、勝負になっていたかすら怪しい戦いだった。


 ただまぁ、野良の飛竜ならあんなものだろう。古龍相手なら勝敗はおそらく逆になっていたはずだ。


「おいおい、マジかよ」


 あのイーダが引いている。


「あんなのと、本当にたたかうの?」


 心配そうにレーナが聞いてくる。


「ええ、問題はありません。それに今の戦いで、猟醜の騎士の周りから死に生きる者がいなくなりました。今がチャンスです」


 俺は打刀に聖脂を塗りながら答える。聖属性のダメージは、猟醜の騎士にも通る。


 一方、俺が指摘した通り。


 今の戦いに巻き込まれた死に生きる者達が一層されて、猟醜の騎士の周囲から姿が消えていた。


「わかった。俺たちが距離を置いて、死に生きる者達の介入を阻止する。猟醜の騎士は頼む」


 すぐにルーカスが判断を下した。


 さすが一流のハンターパーティのリーダーである。


「いきます」


 俺はそれだけを言い残すと走り出す。


 時間を掛ければそれだけ不利になる。


 河川敷を掛け下り、相対距離が十五メートル程になったとき猟醜の騎士が反応する。


 俺が全速で距離を詰めると、あっちも俺に向かってきた。


 分かりやすく、俺にヘイトが向いている。

 これで、戦闘に入った。


 間合いに入るのと同時に、猟醜の騎士が腐敗の剣を振るってくる。


 馬上なので、微妙に間合いが狭い。


 俺は打刀を抜くと半融の馬の前足を切り払いながら交わした。


 俺のすぐ横をすり抜けながら、猟醜の騎士が背後を取ろうとする。


 打刀を鞘に戻して、体を落とし柄に手を掛ける。


 背後から迫る猟醜の騎士との間合いを計る。


 間合いに入った瞬間、体を反転させながら腐敗の剣の軌道からすり抜ける。


 同時に、打刀の間合いに入った。踏み込むと同時。鞘走る打刀。縦の斬撃。一瞬の居合。


 半融の馬の胴体を切り裂く。


 ヒンという馬の泣き声。


 猟醜の騎士は構わず腐敗の剣を真っすぐに突き出す。


 ここが、居合という戦技の特徴だ。


 即座に交わす。


 戦技特有の硬直が存在しない。


 あらゆる状況に対応することが可能となる所以であった。


 突き出された剣に合わせるように、もう一度居合縦切り。


 腐敗の剣をすり抜けるように放たれた居合を、猟醜の騎士は交わすことができない。


 大きく踏み込んだ上での一撃。


 それは、直接猟醜の騎士を捉える。


 確実に切り裂いたが、致命傷には程遠い。


 止まらずに跳ねると同時に、右から切り下す。


 その攻撃が入ったところで、猟醜の騎士は無理やり俺の横を通り過ぎる。


 もう一度、横なぎを入れたが、さすがにこれは浅かった。


 あまりダメージは入っていない。


 猟醜の騎士が一旦離れて行く。


 ここから仕切り直しだ。


 俺は猟醜の騎士に対して、戦技夢影の月光を使っていない。


 使うつもりもなかった。


 夢影の月光は居合の上位互換であるが、居合自体が強力な戦技だ、これで勝てないようではデミゴッドの相手は到底できない。


 距離を取った猟醜の騎士が、助走に移った。全速力で突っ込んでくるつもりだ。


 ある程度ダメージを与えたので、攻撃パターンが変化した。


 さて、何を仕掛けてくるつもりか。


 俺は打刀を鞘に戻し、回避、戦技、パリィのどれでも対応できるようにする。


 全速力で突入してくる猟醜の騎士。間合いに入るより早く、半融の馬上から跳ねた。


 頭上から落ちてくる猟醜の騎士と、そのまま真っすぐ来る半融の馬。


 二方面からの同時攻撃。


 ただわずかに半融の馬の方が早い。


 ギリギリまで待ち、サイドステップを使って右に交わす。


 そこにタイミングを合わせて猟醜の騎士が落ちてくる。


 俺は止まらず前方にローリングしていた。


 すぐに後ろに向き直り立ち上がる。


 猟醜の騎士と半融の馬は、少し行ったところでそれぞれ反転して仕掛けてくる。


 今度は猟醜の騎士の方が早い。わずかな差だが、反転する速度が異なっているためだ。


 猟醜の騎士は体当たりするように走りながら、腐敗の剣を横なぎに振るう。


 その刃を潜り抜けるように下に交わし、正面よりわずかに左から突入してきた半融の馬をサイドステップで左に交わす。


 俺の右にすり抜けようとする半融の馬の脇腹に、打刀を差し込み全身で固定する。


 すると半融の馬自身の持つ運動エネルギーによって、馬体が切り裂かれた。


 瞬時に傷は回復して元に戻るが、ダメージは確実に入った。


 どれほどダメージを入れても、動きは鈍ることはないから、一見攻撃することが無意味に見えるがそんなことはない。


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