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第一章 貴族転生 - 011

 ◆◆◆◆◆ 主人公 Side 十歳 ◆◆◆◆◆


 最近俺は、公認で外出できるようになっていた。


 これまでも、抜け出していて、何度も繰り返しているうち、なし崩し的に公認となった。


 俺は治癒の短剣だけでなく、ロングソードも装備できるようになった。


 王都近隣にある咒鵠の礎はすべて解放してある。


 モンスター狩りを繰り返して、ステータスはそれなりに上がっていた。


 そのため、いわゆるザコ狩りではもう、ステータスは上がりづらくなっている。


 それに、ここから先は、デミゴッド戦を視野に入れておく必要がある。


 ステータスに頼った戦いは自滅への道なので、戦技や魔法と祈祷といったものも必要となる。


 そろそろ、忌区の最奥にいるデミゴッドの討伐も想定しなくてはならない。


 デミゴッドの中でも、そこそこの戦闘力を持っている。


 血炎を伴った戦いは攻撃力に優れ、出血を強いる権能はそれ以上にやっかいだ。


 それでも、とある事情により、他のデミゴッドに影響を与える可能性が最も少ない相手である。


 早期に戦うべきデミゴッドとして考えると、最有力候補の一柱である。


 とは言っても、今すぐにというようなことではない。今挑んでも勝てる可能性は少ない。


 それに、他にやりたいこともある。


 俺が今向かっているのは、ハンターギルド。


 王都の商業区にあるモンスター駆除の専門組織である。


 ハンターギルドには様々な人種が集まっていて、素材やドロップアイテムを扱っている。


 すでに幾つか製法書を入手しており、俺が必要な素材も増えている。


 自分で集めるより、格段に効率がいい。


 エンデ・クリーク後には無くなっている組織なのだが、あるうちはせいぜい活用させてもらうことにする。


 商業区の端に位置するハンターギルドの建物は、商業区の中でも一番大きな建物だ。


 遠くからでも良く見える。


 ハンター達が出入りするのは王都の外壁側にあり、俺が向かっているのはその反対側の出入口だ。


 俺もモンスター狩りはしているので、ハンターとしての役割はしているのだが、十歳での登録は出来ない。


 登録できたとしても、ハンターになるつもりはない。


 俺が集めた素材は全て俺自身で使うつもりだ。


 素材の多さは手札の多さに直結する。


 あらゆる局面に対応するためには、いかに幅広い手札を揃えるのかが鍵となる。


 というわけで、俺はハンターギルドに用があるのだが、ハンターに用はなかった。


 なのに、俺の前にハンター達がいる。


 正面にいるのは、嫌になるくらいのイケメンで、笑うと白い歯が煌めく。


 大剣を背負っている。


 その後ろには三人の女性ハンター。性別だけを見ればハーレムパーティと言えるかも知れない。


 ただまぁ、実体はそれに程遠いが。


 一人は左手に緑青の大楯と二メートル以上もある斧槍ゴーレムのハルバードを右手に持ち全身鎧を纏った大女。


 一人は全身ローブを身に纏い不気味な白面を顔に付け、歪な棘が持ち手の上に伸びている断罪の杖を持った女。


 一人は骨と皮ばかりの、ほとんど骸骨のように見える青白い顔をした女。祈祷服を着て虫の羽の刻印がされた爬式の聖印を首から下げているため、祈祷師だと分かる。


 いずれもひどく特徴がありすぎる女たちで、イケメンハンターのことをちっとも羨ましいとは思えない。


「やぁ、奇遇だね。そろそろ、僕のパーティに入る気になったかい?」


 イケメンハンターが唐突に話しかけてきた。


「ルーカス、相変わらず唐突ですね。謹んでお断りします」


 俺はきっぱりと言った。


「子供が遠慮なんてするもんじゃないよ? こう見えてもうちらは強いんだ。あんたがどんなに強かろうが、一人じゃ必ず限界がくる。年長者のおせっかいくらいに思って受けてくれよ」


 ルーカスの横に立っていた、全身鎧の大女が言ってくる。


「イーダさん、僕にも事情というものがありますからね。すみませんが、誰かに頼るわけにはいかないんですよ」


 殊勝にしながらも、俺はなんの感情もなく断る。


 覚悟なんて生まれた時から……いや、『あれ』に殺されたときから決めている。


「で、要件はそれだけですか? それじゃ、行きますね」


 俺はこれ以上絡まれるまえに動き出そうとするのだが。


「いやー、実は少し手伝って欲しくてね。まぁパーティに入ってもらうのは次の機会にしてもらうとして、少し話を聞いてもらえないかい?」


 どうやらやっかいごとらしい。


 まぁどうでもいいが、彼らが持ち込んだのならただ事ではないだろう。


 放置しておくという選択肢はないな。


 やっかいごとというものは、放置すると大抵大きく育って帰ってくるものだ。


 小さいうちに叩き潰すに限る。


「わかりました、ではハンターギルドのラウンジでどうです?」


 俺はゆっくりと話せそうな場所を提示する。


「オーケー。それじゃ、僕らが食事をおごるよ。昼食、まだなのだろう?」


 ルーカスのパーティと一緒にハンターギルド内にあるラウンジへと移動する。


 ラウンジ内の空いているテーブルに全員がつくとルーカスが話しかけてくる。


「最近噂になってるようだが、リーセブル河の洞窟で死に生きる者が大量発生するようになった。そこを調査する依頼を受けたんだが、猟醜の騎士がどこかから流れ着いてきてな。すでに複数のパーティが全滅している。数で攻めてたら、猟醜の騎士に全滅させられる。かといって、少数では死に生きる者を突破できない。だから、猟醜の騎士が現れた場合、パ-ティ全員で時間を稼ぎながら、その間に死に生きる者を突破すして逃げ帰る。とまあ、そんな計画を立てたわけだが……」


 自分の立てた計画を言いかけたルーカスは、最後の方で言いよどむ。


 ルーカス達は知らないが、俺は知っている。


 猟醜の騎士を倒した後に残される、腐敗の剣に記されたテキストに記されている。


『原初の神が神聖を否定したとき、属する神は零落したのだ。全てを呪い穿つ存在へと。その手する得物は、忌避された民の手による腐敗の剣が唯一残されていた』


 そのほとんどは、デミゴッド達によって討伐されたが、生き延びた存在もいた。


 そのうちの一体が猟醜の騎士である。


 つまり、猟醜の騎士とはかつて神であった存在だ。


 パーティで数を頼りに攻めたところで勝てないのは当然である。


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