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もはや都市伝説と化した最恐探索者、超有名アイドル配信者を救ってバズり散らかしてしまう  作者: コータ


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スプラッター全開

 蹂躙という言葉ですら生やさしいと思えるほど、幽奈の配信画面は悍ましい瞬間で溢れている。


 彼女が跳躍した時、魔物が勝手に倒れていく。彼女がチェーンソーですれ違う度に、体が真っ二つにされる。


 視聴者達は、ほんの数秒でブラッドスパイダー達がバラバラになる光景に絶句するしかなかった。


 しかし、悲鳴や悶絶といった反応を示さない蜘蛛が相手の時は、まだ良かったのかもしれない。


 続いて登場したグールやオーク、殺人鷹といった魔物達が現れ、彼女に向かっていく。


「ギイヤアアアアアア!」


 しかし、相手にもなっていない。ダンジョン内に魔物たちの絶叫が響き渡り、のたうち回りながら絶命していった。


 本来、魔物が人間に恐怖を与えるものだし、残酷さをともなう行為に走るのも魔物である。


 しかし、幽奈はあまりにも無自覚に、淡々と向かってくる魔物を切りまくった。その光景はまさにホラー。


 時おりカメラに血のシャワーが振りかけられる。規制の緩いダンジョン配信でなければ、とっくに停止させられている映像の数々。


 視聴者達もまた、もはや絶叫するしかなかった。


:ぎぃやああああああ!

:せんちゃん、怖すぎるーーー!

:どっちが魔物なのか分からん

:これだけ物理的なら悪霊じゃないね

:一秒に一匹以上惨殺してる

:こわいこわいこわいこわいこわい

:超サイコパス探索者爆誕

:魔物に同情したの初めてかも

:強すぎるにも程があるだろ

:キラキラしてるなーチェーンソー(遠い目)

:マッハのこの動き、俺じゃなくても見逃しちゃうね

:もう無理

:こんな細身の体のどこに、こんなパワーやスピードがあるわけ?

:ひえええええええええ

:漏らしちゃったよう

:息一つ乱れてないのがまたこわい

:本当に人間かよ

:ああああ

:悪霊疑惑がある人だけど、そもそも人間だったとしてもヤバすぎるって

:せんちゃん、もう許して

:怖い

:もう画面見れない

:ひいいいいいい

:ガチで漏らしたよぉおお!


 周囲が静かになり、幽奈はチェーンソーに魔力を注ぐのをやめた。そしてピンク色の袋の中にしまうと、またスタスタと歩き出す。


 この時、開けたフロア一面に魔物の死体が転がっていた。その数はゆうに百を超えており、後からやってきた探索者はこの光景に震え上がるに違いなかった。


「あ、すみません。ずっと放置しちゃって。この辺りも敵もいないし、石も花も見つからないので、もう少し降りたら今日は帰ろうと思います」


 カタカタカタ、という撮影機材の奇妙な足音が静寂の中に響く。少女は元の姿になって画面に語りかけた。


 汚れたカメラを、綺麗に掃除シートで拭き取っていたが、ふと目を見開いて固まってしまう。


「……嘘……なに……これ」


 絶句した幽奈の瞳には、同接数二百五十万という数字が映っていた。


 先ほど確認した時よりも、遥かに自分を見ている人が増えている事実に、驚きを超えて恐怖すら覚えている。


「あ、あああ! こ、怖い。同接多すぎて怖い」


:いやいや、怖いのはこっちだから

:草

:w w w

:これ、もしかして同接三百万いっちゃう?

:せんちゃんのほうが怖いんですが

:庶民の反応w

:そりゃそうだよね

:あたしも怖い

:せんちゃん観てちびってる

:怖がる方向が違う気がするんだけどw

:草すぎ

:可愛い!

:きっとそのうち慣れるよ

:がんばれー! ここまできたら伝説を作ってくれ

:応援してます

:怖かったぁあああ、今は普通だけど

:まさかこんなに強いなんてビックリ

:バズりに恐怖するって新鮮

:マジおもろい

:さっきの光景が目に焼きついて、まだ心臓ドキドキしてます

:大丈夫! 今のところ大成功!


 視聴者達は先ほどの恐怖映像を忘れ、幽奈の反応を面白がっている。


 その姿を、シャムはコンビニのイートインで軽食をしながら見守っていた。


シャムちゃん:幽奈ちゃん大丈夫! 今の感じでやれば配信はバッチリだよ。ってか、ヤバくなったらすぐ戻ってね

:うん。ありがとう


 ベテラン探索者達とダンジョンに潜りまくっていた少女は、幽奈の強さを確信していた。いや、もう認める以外に選択肢などない。


 彼女はそこら辺のベテランと称される探索者など、相手にならない強者だ。


 シャムは彼女に恐怖を覚えるとともに、その実力の程をもっと知りたいという猛烈な好奇心に駆られていた。


「なんで隣来んの? 空いてんのにさ」

「えー、いいじゃん! 隣に座っても」


 その様子を同様に見つめている希空は、イートインスペースの隣に座ってきたシャムを、じろりと睨みつけた。


「ねえ希空ちゃん、どうしていつもソロで探索してるの」

「教えない」

「ええー、なんで? 教えてよー」


 あれから気まずい状態が続き、希空はひとまずコンビニ向かい、いろいろと迷ったがシャムもそれに続くことにした。


 お互いの噂はよく耳にしている。無意識のうちに二人の間にはライバル心が芽生え、出会ったことでさらに熱を帯び始めていることに、まだ気づく者はいなかった。


 幽奈はしばらくフロア内をうろうろと彷徨っていたが、石は見当たらなかった。


 殺人鷹のクチバシやブラッドスパイダーの体毛といった、価値のある物をいくつか袋に入れると、また一つ下の階層へと降りていく。


 ここで、視聴者達は一つ疑問が生じた。ウサギのキーホルダーがついた袋は、画面で見るとそこまで大きくはない。どうしてこうも色々と品物を入れることができるのだろうか、と。


 しかし、その疑問を問いかけるより先に、驚きの事態が現れた。


 幽奈が降り立った先には、赤と黄色のマダラ模様の世界が広がっていた。それはまた一つ、彼女が異なる層へと辿り着いたことを意味している。


 国内では史上初となる、ソロ探索で深層に踏み入れた瞬間だった。

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