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01-3

土に還るも海に還るも人次第ってね。


大家と別れた後、セオとルカは再び家へと足を踏み入れた。

やはり多少の埃っぽさは感じたものの、大きな変化はないように思えた。

1DKの家は、最初こそ双子が小さいうちは良かったものの、男三人で住むにはだんだんと手狭になっていき、奥の私室に川の字でぎゅうぎゅうに眠っていた日々を思い出す。


手前のキッチンがある部屋とはドアで区切られており、ここに置かれたテーブルで三人揃って食事を取っていた。

「…おっさんが何度このキッチンで手を血に染めていたことか…。」

「ね、おっさんの包丁捌き、子供だった僕らからしてもヤバかったもんね…。」

慎一郎の不器用さを思い出しながら、二人は遠い目をする。結局セオやルカが具材を切り、慎一郎には混ぜたり焼いたりといった比較的簡単な工程を任せるようになった。

三人で作って、三人で食べる。それが彼らの日常だった。


「っと、そんなことを話しに来たわけじゃない。ルカ、『記石』は?」

「奥の部屋のテーブルにあったよ!」

ほら!とルカが指さした先、冬はこたつとして使っていたテーブルの上に、確かにそれはあった。

手にのるほどのサイズをした、海のような澄んだ青い色の石――『記石(きせき)』である。



人はよく、『死んで土に還る』という。

土に還り、大地の糧となり、新しい生命を育んでいく。それが自然の摂理であると。

しかし、そもそも地上にいる生物の始まりを辿っていくと、それは海になる。

生き物は海より生まれ出でたもの。

であるならば、海に還る者がいることも何ら不思議ではないのだ。


世の中には知られていないだけで、海に還っていく者たちがいる。

そんな彼らのことを『カイキシャ』と呼ぶが、『記石』とは、そのカイキシャたちが残していくもののことを言う。例外なく皆が置いていく、記憶の残滓のカタマリ。


「さっさと回収して戻ろう」

セオはそう言うと、記石の置いてある机に移動する。

「えーもう少し思い出話しようよー」

「そんな暇ねーだろ、ただでさえ人手不足ってんで、上にせっつかれてんのに」

「それはそうだけどさー」

ルカはちぇーと言わんばかりの表情で兄に続く。

「ま、僕ら回収装置は、そうポンポン生まれるもんでもないからねー。なんだっけ、『母なる海が生み出した…』」

「『我ら、母なる海が生み出し者。海へ還る者たちを助け、救うべし』だろ。いい加減覚えろよ」

「だって難しい言葉で全然分かんないんだもん。海が僕らを生んだっていうのは分かるけど」

「俺たちは記石を回収するために海から生み出された命で、言われたとおりに石を見つけて持って帰ってこいってこった。」

「なんだかなー未だに分かんないことだらけでやんなっちゃう。僕らが人間じゃないってことはまあ理解できるよ?でもさー」

「くっちゃべってないでとっとと終わらせるぞ」

そう言うと、セオは石の前で手をかざす。

「はいはーい。終わるまで待ってるねー」

「待ってるねーじゃなくていい加減お前も出来るようになれ…まったく」

くつろぎはじめたセオを横目にため息をつき、再び石に向き直る。

目を閉じ、息を整える。


「『カイキする者、その記録を以て汝の心を示せ』」

文言に応えるように、石が光り出す。光はそのまま大きくなり、柔らかくセオを包み込んでいく。

「(…慎一郎、アンタは何を思っていたんだ。)」

その答えが石に残されていることを祈りながら、セオは光に溶けていった。


お疲れ様です。柏田です。

ようやっと記石について書くことが出来ました。

セオたちが海に行き、どのようにして己が役目を知ることになったのかはまたいずれ。そんなにおっきな何かがあったわけではないです、ええ本当に。


そういえばセオとルカの容姿について全く触れてなかったことに今更気づきました。描写を上手いこと入れるって難しい…。次回辺りに出てくるかも。多分、恐らく。

次回は慎一郎について。彼の断片を追って見えてくるものはなんなんでしょうか。

次回へ続く。

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