01-1
「久々だね、ここに来るの。」
「ああ、出ていって数年は経つからな。」
7階建てのアパートを前に、2人の青年が歩を進めていく。
「それにしても急だったな。おっさんが死ぬの。」
「縁起でもないこと言わないでよ。まだ死んだかどうかなんて分からないじゃん。」
「でも、『これ』が届いたってことは、もうそういうことだろ?」
片方の青年が手にしていたのは、くたびれた茶封筒。
「いつものことじゃないか。封筒が届いて、『記石』を回収して、持ち帰る。」
「それはそうなんだけど、なんていうかな…。そう、情緒がない!」
「なんだよそれ、任務に情緒もクソもあるか。」
「本当に兄さんは口が悪いな―。」
ていうかそれ使い方あってんのか?などと軽口を叩きながら、エレベーターの前にたどり着く。
管理人の注意書きがびっしりと貼られた壁を見ると、やれやれここは相変わらずだなと、セオはどこか呆れたような顔をするのであった。
二人がここの6階に住む住人…いや死んでいるだろうから「元」住人か…である「飯凪慎一郎」に拾われたのは十年前。本人曰く、海辺に打ち捨てられていたらしい赤子たちを、どういう訳か拾い、育てたらしい。その赤子にはそれぞれ、「セオ」と「ルカ」と名付けた。
拾った赤子たちはあっという間に成長し、およそ5年ほどで、人間で言う15歳辺りにまで育った。
普通の人間にしては明らかにおかしい成育スピードだが、慎一郎は特に何も思わなかったらしい。
「君たちは、そういう生き物なんだろうね。」
と、慎一郎がポツリとつぶやいたことを、セオは何となく覚えている。
だが、さすがに引き取った子供が数年足らずでそこまで大きくなっていることを大家に訝しまれ、誤魔化すのにも限界が来ていた頃、彼らの元に一通の茶封筒が届く。中には紙が一枚。
「『記石』回収の任。努々お忘れなきよう。」
何の話だか双子にはさっぱりわからなかったが、慎一郎は何を悟ったのか、すぐに荷物をまとめて海に行くよう双子を促した。海に答えがあるはずだ、とだけ言い残して。
結果、今こうして、セオとルカは『記石』を回収する任務を全うしている。
エレベーターで6階まで上がり、「605号室」と書かれた部屋の前で足を止める。
あれ以来使っていなかった鍵を取り出す。
「……」
「どうしたの?入らないの兄さん??」
「いや、別に何も。」
そう言って、セオは鍵を差し込んで回し、扉を開いた。
久々の我が家だ。いや、もはや我が家と呼んでいいのかも、セオにはよく分からなかったのだが。
はじめまして、お疲れ様です。柏田です。
拙い出来ですしほぼ見切り発車ですが、とりあえず書ききってみます。
よろしくお願いします。
次回へ続く。
※追記3/20
一部修正しております。




