02-2
こういうアクシデントもつき物さ。
2階建てのアパートの階段を上り、目的の部屋にたどり着く。
「201号室」と書かれたドアノブにセオが触れると、カチャッと音がして扉が開いた。これも彼等の能力の一つだ。普段はこのようにして対象の家に侵入…否、お邪魔している。慎一郎の記石回収の際は、家の鍵を持参していたため使わなかった。セオ的には出来ればあまり使いたくない。
「便利な能力いっぱいで助かるー!」
と、ルカが相も変わらず能天気なことを言うと、セオは訝し気な目をしながらルカを見つめ、
「…頼むから悪用とかするなよマジで…」
と心労の籠った声で呟く。
「えーさすがにそんなことしないよー!?僕ってば信用なさすぎじゃない?」
靴を脱ぎながらルカはぶすっとした顔で答える。
「逆に信用あると思ってんのか?この間も『あのセキュリティールームってやつ、中はどんな風になってんのかな!?コンピューターがいっぱいなのかな!?!?楽しそう!!ちょっと覗いてくる!』とか言って全く関係ない部屋の鍵開けしようとしてただろうが」
「だって気になったんだもん!」
「もんじゃねえ!関係ないことに能力を使うなっていつも言ってんだろ!?ただでさえいい気はしないってのに」
「兄さんは細かいこと気にしすぎなんだよ!せっかく持ってるものはたくさん試してみたいじゃん!」
「お前が気にしなさすぎなの!!」
ぎゃあぎゃあ言い合いながら、部屋の中に入る。綺麗に畳まれた布団の上に、目的の物は鎮座していた。記石である。対象物を前に二人は言い合いを止め、それへ関心を移す。
「今回は…なんか変な色だね?」
記石を見つめながら、ルカは不思議そうな顔をする。
記石は残していった者によって、色や形が異なる。今回の記石は、茶色と白の縞模様をしていた。
「本当だな…普段は一色のことが多いんだが」
「あとはグラデーションになってるやつとかだよね、いったいどんな記録が収められてるんだろ…?」
ルカが興味津々といった表情で見つめていると、セオが布団の前に座り、記石に手をかざす。
「まあ、どの道確かめれば分かることだ、お前はいつも通り辺りを見張って――」
「…あの、どちら様でしょうか?」
聞き覚えのない声に、二人は一斉に玄関の方を振り向く。
開け放たれた玄関には、パンツスーツに身を包み、黒髪を後ろで一つ結びにした女性が、訝しげな顔をして立っていた。
「(一体誰なんだろう、もしかしてあの子の知り合い?でも、こんな子たちの話聞いたこともないし…)」
女性は疑いの目で、目の前の青年たちを見つめる。
年は15,6くらいだろうか。黒い学生服に似た服に黒い外套、黒い帽子と、まるで昔の学生のような服装をしている。全体的に真っ黒な分とても目立つ。
「あの…?」
と、女性が言葉を続けようとすると、布団の傍に座っていた青年が立ち上がり、帽子を脱ぎ頭を下げる。ふわっとした黒髪が揺れる。
「驚かせてしまい申し訳ありません。僕たちは、とある任務でこちらにお邪魔させていただいている者です。用が終わりましたら、すぐに退散いたしますので」
「いや、あのそういうことじゃなくて…ていうか、任務…?貴方たちは、彼女の知り合いなんですか?」
女性が訳が分からないと言った顔で青年を見つめていると、もう一人の青年が人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてくる。
「まあとりあえず中入りなよ!そこにいたんじゃゆっくりできないでしょ?」
「え、でも…」
「…疑わしいのはもっともです。しかし、こちらも仕事をこなさなければ、ここの住人であった方も、安らかに眠ることが出来ないと思うのです、どうか」
先ほどの帽子を脱いだ青年が、諭すように話しかけてくる。明らかに普通ではない、何か不思議な雰囲気を纏う彼等。
はっと何かしら思い至ったことがあったらしく、女性はわなわなと震え出す。
室内に緊張が走る。
「もしかして…」
「…」
「もしかして貴方たち…陰陽師ってやつですか!?」
「「…は?」」
いきなり興奮し始めた女性に、青年たちは呆気にとられる。
そんなことを気にも留めず、女性は早口でまくし立てる。
「陰陽師の方ですよね!?こう…ぐああああみたいな力を使って、あの子の憂いを晴らしてくれるんですよね!?そうですよね!?あ、じゃあまだ成仏出来てないってこと?この辺に揺蕩ってるってこと!?それはまずいですよね!!だからここへやってきたと!!」
「「…」」
青年たちは戸惑いの目で互いを見つめると、こくりとうなづき、
「ええそうです、僕たち陰陽師です。ここの大家の方から相談を受け、今から除霊をするところでした」
「困りごとがあれば何でも解決!陰陽師安倍ブラザーズをよろしくね!」
と高らかに言い放った。
「うわあ!やっぱりそうだ!小さいころよく夏の特番とかで見てたやつ!本物に会うの初めて!!あ、握手とか、いやでもあれか、『氣』とかが外に漏れちゃうか!?私一緒の空間いても大丈夫なんですか!?」
「え、ええ…どうぞお入りください。その方がここの住人の方の魂も落ち着くかと…」
「わ、わかりました!では、失礼します!」
まるで面接かのようながっちりとした様子で、女性は家の中に足を踏み入れた。
…どこか緊張した面持ちで部屋に入ってくる女性を尻目に、ぼそぼそと言い合いを始める丸い背中が二つ。
「…安倍ブラザーズってなんだよ、ダサすぎるだろ名前」
「だって陰陽師と言えば安倍じゃん、それに最初に『陰陽師です、キリッ』ってやり始めたの兄さんじゃん」
「話合わせた方が都合がいいだろだって!…それにしても面倒な事になったな…さっさと終わらせて帰りたいのに…」
どうやら一筋縄ではいかなさそうな雰囲気に、後に増えるであろう仕事に、セオは一人、頭を抱えるのであった。
お疲れ様です。柏田です。
彼等が持つ能力は色々あるので、少しずつでも登場させていければなと。
それにしても便利ですよね、この能力。セオは良心が働くらしくあんまり使いたくないっぽいですが、私なら色んな現場の裏側見れるかも!やっほい!とか思っちゃいそうです(危ない)。さすがに知らない人の家入ろうとかは思わないですが、秘密の部屋とかあったらうっかり開けちゃうかも、好奇心に負けて。
他の方々の小説も読ませていただく機会が増え、日々勉強させてもらってます。とっても楽しい。
今後ともよろしくお願いいたします。
良ければ評価や感想、ブクマしていただけると家中転がりまわって喜びます、マジで。
いつもありがとうございます!それでは。
次回へ続く。




