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05 おっ勃て! ボッキッキー!

 ワシはホテルの自室にこもると、着衣を脱いで生まれたままの姿になる。姿見にあられもない大魔法使いの姿が映る。


「う、美しい…」


 たっぷりと肉の乗った太鼓腹、俗に言うワガママボディ。


「んふぅ…」


 灰褐色の森林に埋もれるピンク色のビーチク。ワシはその周辺の茂みを指で弄びつつ、左右に腹を揺らしてポージングする。


 その曲線美は完璧で、測ったことこそないがフェボナッチ比率的にも恐らくはパーペキと言っても過言ではない、世の女性がむしゃぶりつきたくなる、抱いてフカフカの熊サン系なわけじゃ。


「……さて、始めるか」


 そして目を閉じて精神統一する。


 思い出すのはひとつ。


 あの道具屋の娘の泣き顔!!


「クルッ! きた、きたぞ!」


 下腹部に疼きがくる! 沸騰する直前のヤカンのようなパゥワーじゃ!


 しかし──


「た、勃たぬ! 我勃ちぬ!! あと少しじゃというのに! クソ! ならこれでどうだ! 【おっ勃て! ボッキッキー!!】」


 チンポロリ〜ン♬


 ワシは使える限りの強化補助魔法を自分にかける!


 筋力が増し、血流が上がり、素早さが高まり、便通がよくなり、イボ痔・キレ痔が寛解し、健康寿命が300歳まで延びたが、それでもワシの“息子”はなんの反応も見せない!


「なぜじゃー!? クソが! ワシのムスコひとつ勃たせられんで、なーぁーにーが大魔法使いじゃぁーーい(号泣)!!」


 ワシは泣いた。


「ワシのムスコが復活する魔法はないんかーい!」


「ありまっせ♡」


 扉の隙間から、ターバン野郎がニョキッと頭だけ出す。


「テメェ! ボンオドリッ!!」


「ウヒヒ! ヘンドラゴンはん♡」


「このクソオヤヂが! この前の薬効果なかったぞ!!」


 この前、絶対に勃つってコイツから買ったヤヴァイアグラという薬に騙されたんじゃ!


「今回は間違いありまへんのやで♡ ヤヴァイアグラMark IIは効き目抜群でっせ!」


 ボンオドリはニタニタ笑って、怪しげな茶色い小瓶を取り出す。


「……いくらじゃ?」


「毎度! ワテとヘンドラゴンはんの仲ですさかい、勉強させてもらいま!」


「いいから! そんな心にもないこと言わんでいいからいくらじゃ!?」


「壱万ウェン♡」


「チッ! 3本よこせ!」


「毎度♡」


 ワシはサイドテーブルのガマ口から万札をグワシィと取り出すと、ボンオドリは唾液を撒き散らしながらそれを受け取る。


「ハイッー!!」


 ワシは瓶を放ると、手刀で3本の瓶の蓋を吹っ飛ばした。強化魔法のおかげでこんなことお茶の子さいさいじゃ!


 そしてワシは3本とも口に含み、一気に呷る(※)!!


 ※…大変危険な行為です。用法用量を守りましょう。大魔法使いは特別な訓練を受けています。


「ングビングビッ!!」


 うーん! 不味い! もう1本! と、言いたいところじゃが、血流が増し、身体がマグマの様に熱い!!


「こ、これは効果があった…」


 ワシは腹の肉を分けて股間を見やる。しかし、谷間の深い茂みから一向に出てくる気配がぬぁい!


「な、なぜじゃぁ!? 反抗期か! 遅めの反抗期なのかぁ!? ムスコよぉ!!」


 ワシは泣いた。


「ッテェメェ!! ボンオドリィィッ!!!」


 ッ! あの野郎! 金だけ持って逃げやがったな!! 逃げ足だけは速い野郎だ!!


「あのボンレスハムのように太く逞しく、腹に打ち付けんばかりの勢いは何処(いずこ)へ逝ったんじゃーい!」


 ワシは泣いた。


 泣いて、床を殴った。床にボコンと大穴があきおって、下でセクロスしてたカップルが驚いて見上げてきおった。


「なぁに見とんじゃぁ! 拝観料とんぞ!! こちとら心底絶望してるってのに、悦びを! そんな気持ちいいことしくさりおって! 惨めなワシを笑っておるのかぁ!! 【ファイアーバレーボール】!!」


 ワシはオープンスパイクで下の階に炎の魔球を叩き込む! 


 爆発して下階が丸ごと吹き飛んだ!


 ざまぁみさらせ!!


「ワシは! ワシはムスコを取り戻す!! そのために大魔王を倒すんじゃーー!!」


 ワシは覚悟を新たにする!


 そう! 大魔王なら、もしかしたらこの大魔法使いすら知らぬ“ED治療法”を持ってるかも知れんがゆえに!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] この世の汚物を煮詰めて凝縮したような小説……
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