03 畜生な仲間たち
「だからよ、俺は思うんだぜ!」
「さいでっかー♪」
「ちゃんと真面目に聞いて下さい!」
「おう! 聞いてるぜ!」
ピエルロが怒るが、ふたりが聞いていないのは明らかだ。
「だからよ、マカロニグラタンはグラタンマカロニでもいいと思うわけだぜ!」
「さいでっかー♪」
説明するのもダルいが、コイツらも一応は仲間だ。
グラタンだか、マカロニだかの頭の悪い話を繰り返してるのマッチョなソフトモヒカンは、戦士ビビルゲリン・ゲリリーじゃ。
戦士の癖に上半裸なのは、いくら教えても着かたを覚えられないからだ。
仲間になった時こそ30代ってこともあり、頼りがいのある兄貴分になるかと思われたが、なにせ賢さが5しかない脳筋馬鹿じゃ。
見た目通りパワーだけはあるんで、戦闘じゃ役立つんじゃねぇかと思うかも知れんが、頭が悪すぎてこっちの指示を理解できず、仲間を攻撃する使い物にならん粗大ゴミだ。
「でも、ビビルゲリンはん。ワテはマカロニよりカニがギョーサン入ってた方がスキでっせ♡」
「お、お前は天才か!」
「それほどでもないでっせ♡」
この胡散臭いターバンの腹の出たオヤヂは、商人ボンオドリ・マツリダオー。
ニコニコ愛想のいい風体をして、ジョブの性質からパーティの金を管理しているが、その中からごっそり抜き取って、自分の懐に入れているのをワシだけは知っとる。
その正体といえば、カス詐欺師じゃ。それに戦闘じゃまるでクソの役にも立たない。
ま、商品の調達については天才的じゃから、ワシとしては重宝しとる。不逞を見逃しておるのもワシ自身の懐はまったく傷まないからじゃ。
そもそも金を抜き取られてもまったく気付かない馬鹿勇者が一番悪いしの。
「聞いて下さい!」
スジャータとセレイナがコソコソと「今日こそはハッキリ言って、勇者様」とか言うている。
いいなー。ワシも乳と乳の間に挟まれたい。
「聞いてるぜ! ピエルロ、お前もカニグラタンだろ? カニグラタンひとーつ!」
「違います! 今後の旅の方針です!」
「旅の方針でっか! 旅費はますます増加傾向にありますさかい、金策と節制の両輪で進める必要がありますおま!」
「いや、お金の話も大事ですが…。あれ? この前、渡した30万は…」
「…あー、あれ。アレやコレやソレに使ってもうえりまへんのやで♡」
「え? まだ2日も経って…」
「必要経費でおま!!」
「いや、必要経費って…内訳は…」
「領収書でおま!!」
明らかに偽造された領収書を出すボンオドリ。内訳に『移動代』、『通行料』、『サービス料』とか意味不明な羅列が並ぶ。
それに『交際費』ってなんだよ。これ、お前がキャバクラに行った代金じゃねぇか。
よくこんなん証拠として出す気になるわい。
「で、でも!」
「勇者!!」
ドン! と、ビビルゲリンが机を殴る。カニグラタンが一瞬だけ宙に浮いた。
「俺たちは勇者御一行様。正義の使者だ。金のために戦ってるんじゃねぇ!」
と、戦ってないヤツが申しております。
「そ、それはそうですが…」
「なら、小さなことでグダグダ言うんじゃねぇ! 勇者なら堂々としてろ!!」
「……」
馬鹿勇者は黙りこくり、スジャータとセレイナがため息をつく。
そうじゃ。こんなゴミカスなんてさっさとパーティから追い出せばいいのに、この馬鹿勇者はお人好し過ぎてそれができない困ったちゃんなんじゃ。
「あ、あのさ。僕、あんまし言いたくはないんだけど…」
「ええ、私も言わせて下さい」
我慢の限界に達したのか、スジャータとセレイナが手を上げる。
「悪いが、女は黙ってくれないか」
いきなりのビビルゲリンの女性蔑視発言に、スジャータはムッとして、セレイナは涙目になる。
「そうなのねー。リーダーの勇者はんの話を遮るのはよろしくありませんおま」
ニヤニヤ笑っているボンオドリの目は笑っていない。
「俺たちは勇者の言うことしか聞かねぇ!」
「そうでおま!」
そう。この二人組は、勇者の話は適当に誤魔化して流し、女たちが出てきたこういう事を言って有耶無耶にしてしまうゴミカスなのだ。
さて、そろそろワシの出番かのぅ。
「……待ちなされ。御二人」
「ジイサン…」「ヘンドラゴンはん…」
ゴミカスが神妙な顔でワシを見る。
「勇者殿の話。ちゃんと聞こうではないか」
ワシがそう言うと、馬鹿勇者は「ヘンドラゴン様!」と目を輝かせ、美女2人は尊敬の眼差しを向けてくる。
う、うひー! たまらーん! たまらなくキモチイイー!
そう! このパーティのお荷物なゴミカスを追い出さんのは、こうやってワシの株を持ち上げてくれるからなのじゃー!
「ま、ジイサンがそう言うなら仕方ねぇな」
「そうでおま」
「あ、ありがとうございます! へンドラゴン様!」
たかだか勇者の話を聞けって言っただけなのにw
コイツらは揃いも揃って馬鹿ばっかりじゃーw