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13 ダーク労働

「やあッ!」


 ピエルロが剣を振るってゴブリソを斬り頃す。


 ヘッポコな腰の入ってない剣撃でも、ゴブリソぐらいならわけない。


「セイッ!」


 スジャータが蹴りでゴブリソを蹴り頃す。浮きだつ尻の割れ目がセクシーじゃ。


「いま回復します! 【ヒーリング】!」


 セレイナが魔法を使って2人を癒す。両手を開くポージングで乳が揺れてエロッティじゃ。



「ふー、眼福、眼福♡」


 ワシは双眼鏡を片手に、馬車の隙間から覗き見る。


「バトルはええのぅ。激しく動き回るし、ダメージを受ければ服も破けるしのぅ」


 マンガやアニメと違って、局部だけ不自然に隠れることもない。ポロリンチョありが現実(リアリティ)ってやつじゃ。


 ワシが馬車組キボンヌなのは、もっとも良いポジションで観察できるからに他ならない。


 まあ、不満があるとすれば…


「壱万ウェン♡ 壱万ウェン♡」


 ずっと金勘定しているボンオドリ。


「…俺はできる。俺はできる。俺はできる」


 なぜかトランプでタワーを作っているビビルゲリン。


 この害虫2匹のせいで、馬車の漢臭さが増し増しで、不快指数が180%って部分じゃな。


「さて、バカ勇者たちがクソ無駄なレベルアッポー(巻き舌)している間に、ワシらはワシらのやるべきことをやるとするかのぅ」


 ワシがバカどもを見やると、察したバカどもはニヤリと笑う。


「【デリバリーヘルス】!!」


 ワシがたかだかと瞬間移動魔法を唱えると、ソープ嬢の泡立てたピンク色のソープみてぇなのがワシらを包み込んで消えた。




◯◎◯




 目的地。ツギーの町の次、ツギギーの町にへとワシらは到着する。


 馬車の旅だと10日はかかる道のりじゃが、大魔法使いの魔法ならこうやって一瞬で来れる。


 それならなぜ馬鹿勇者どもを連れて来ねぇのかと言うと…まあ、それは見とればわかる。


「勇者ピエルロ・ガバチョス御一行様だぞ!!」


 ビビルゲリンのヤツが、拡声器もなしに、町の隅々にまで届くデッケー声で叫ぶ。


 町の連中はキョトンとしている。


「おい。勇者様御一行と言うとろうが」


 手近にいた男にワシは声を掛ける。


「は、はい。勇者様…ですか」


 チッ。これだから田舎もんは察しが悪くて嫌になるわい。


「さっさとこの町の責任者呼んでこい! 町に火をつけんぞ!!!」


「ヒィッ!! は、はい!!」


 ワシが威嚇すると、男は慌てて町長らしきデッケー屋敷の方に走って行った。


 数分後、血相を変えた様子でハゲ散らかした貧相な小太りのオヤジが走って来た。


「こ、これはこれは。勇者様…。私が町長のヘモジです」


「お前の名など、どーでもいいわい」


 特に男の名前は覚える価値がない。ワシの脳のリソースは、主に女の子のスリーサイズを覚えるためだけに使いたい。


「とにかく! ワシらはこの世界の平和のために命がけで戦っておる。それは理解しておるな?」


「そ、それはもう…。大魔王ネギトロドン配下の魔物どもには、亀甲縛りされてるかの如く苦しめられておりますがゆえに…」


 そうか。このオヤジの首筋の痕はそういうことか。


「そうだろう。これから勇者が来るが、ワシらはその先発隊として参ったわけじゃ」


「な、なるほど…」


「そして勇者が来たからには、このツギギーの町のすべての問題が解決したと言っても過言ではぬぁい!!」


 ワシがそう言うと、オヤジを筆頭に名も知らぬモブどもが歓喜の声を上げる。


「はいはい。お喜びのところでおますが、やはり貰えるモンは貰おうとかないとあきまへんでおまw」


 手揉みをしつつ、ボンオドリが前に進み出る。


「貰えるもの⋯?」


 オヤジがキョトンとするのに、ボンオドリは二カッと黄ばんだ歯を見せて笑うと指で丸を作る。


「にこにこ現金払いでっせ!!」


「か、金を…払え…と?」


「そうじゃ。村人ひとりあたり2ヶ月に1度3,900円を徴収する」


「2ヶ月に…1度?」


「6ヶ月払いや12月前払いもある。少しだけ割引になる。良心的じゃろ」


 そう。ここで有り金を全部毟り取ると意味がない。「払いたくはないけど、払えなくもない。支払い抵抗するにしても微妙な金額」ってのがミソじゃ。


「い、いったいなんの金で…?」


受身料(じゅしんりょう)じゃ。貴様らの安全を保障するためのな」


「ええー!?」


「なに? テメェら安全をタダで買えると思ってんのか!? 水と安全がタダの時代はとっくの昔に終わってんだよ!」


 ビビルゲリンが、オヤジの胸ぐらを掴んで揺さぶる。強面にビビったのか、それとも仄かに漂う異臭に気づいたのか、オヤジの顔は引きつっておる。


「…そうじゃ。貴様らNPCの村人は皆そうじゃ。勇者が来たら助けもらえる。それも無料でしてもらうのが当たり前。なにかやってやっても、その返礼には“つまらん情報”ってのが相場じゃ。“お使いイベント”など今時代に流行らん。先立つものはなにか…それは」


「金なのね!!」


 ワシのセリフをボンオドリが横取りする。


「…そういうわけじゃ。さあ、わかったらこの契約書にひとりずつサインしろ。これは国家が認めておる公益公共事業じゃ。国民の安全を守るのに必要な受身料は、税金を払うのも同じ、国民の義務と言っても過言ではない」


 オヤジに紙の束とサインペンを渡す。オヤジは震える手でサインした。


「ちなみに勇者には内緒じゃ。これは“裏方”の仕事。勇者に話した時点で…」


「時点で…」


「貴様は爆タヒする」


「は!? 爆タヒ!?」


 そういう魔法が込められた契約書じゃ。


「さあ! さっさと貴様らも書け! 書かないと正義の名の元に、ワシ自らが爆タヒさせてやんぞ!!」


 ワシは村人全員に優しくそう呼び掛けたのじゃった。


 はー、まったくダーク労働もつらいわーい♡

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