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グリモワール 02ー07

 中庭は、爆笑と歓声にのみこまれている。ダンジョン・エクスプローラーやダンジョン・ガイドは、FASTを嫌っていた。自由に生きようとする彼らを、何かと管理しようとする存在だからかもしれない。たんに、権威を傘にきる態度が好まれないだけとも思える。

 いずれにせよ、彼らにとってFASTの傲慢なおんなが酒まみれになるのはいい出し物だったらしい。歓声と野次が、中庭で渦を巻く。

 アグネスは、蒼褪めた顔でトキオを睨むと無言のまま立ち去ってゆく。トキオは、優雅に礼をした。

 隻眼の老人は、うんざりしたようにため息をついた。


「こんなくだらないことをさせるために、あなたに浸透勁を教えたのではございません」


 トキオは、驚いた顔になる。


「え、ただのパーティジョークだよ」


 老人は、やれやれと首をふる。


「本土であれば、ラーゲリ送りものです」


 トキオは、呆れ声をだす。


「ラーゲリって。再教育センタだろ。でも、ここは本土じゃない。死者の王、ネクロマンサー・ベリアル王の統べる島だ」


 老人は不機嫌な目つきで、トキオの屈託のない顔を見ている。トキオはさらに何か言おうとして口を開きかけ、閉じた。目が宙をみつめ、なにかに集中するような表情となる。

 ヒースは、トキオが耳につけているピアスをみた。それは、青い光を点滅させている。骨伝導イヤホンに、何かを受診したらしい。

そして、喉元につけたチョーカを操作し骨伝導マイクのスイッチをいれた。

 小声で何かを、会話する。その会話は、すぐに終わった。トキオは、眉間に皺をよせ深くため息をつく。


「やっかいごとか?」


 ヒースのかけた声に、少し口元を笑みの形に歪めトキオはこたえる。


「どうやら、グリモワールが盗まれたようだ。災害級の魔神が、召喚される可能性がある」


 ヒースは、肩をすくめた。


「警察からの、依頼ということかな」


 トキオは、頷く。


「ああ、黒天狐への依頼だよ」


 トキオは、隻眼の老人に目をむけた。


「アカワ、後をたのむ。うまく、やっといてくれ」


 アカワは、無言で礼をする。トキオは元の笑顔に戻ると、賓客たちに軽く礼をしながらバルコニーから室内へとむかう。ヒースはそのあとに、続いた。


「友よ、君もきてくれるか?」

「ガイドは引退した身だから、あまり期待はしてくれるなよ」


 トキオは、くすりと笑う。


「なに、昔のように戦いの楽しみをわかち合うだけだよ」


ヒースは、苦笑を返した。


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